初日に渋野の18ホールについて回ったが、体調不良もあり“本来のゴルフ”ではなかった。個人的に渋野のプレーを生で見るのは本当に久しぶり(2019年、渋野担当として多くの試合を生で見ていた)のため、どうしてももう一度見ておきたい。そんな思いが通じたのか、幸い(?)渋野は裏街道のトップスタート。18ホールをついて見ても優勝争いもチェックできる。というわけで今週2回目、「渋野日向子の18ホールについてみた」。

「途中からなかなかリズムが合わず」という渋野
「いいバーディからスタートしたんですけど……」と本人が話すように、いきなりバーディで昨日の勢いが感じられるスタートだった。11番と12番もしっかりグリーンに乗せたが、バーディ外しのパー。時折、パッティングのストロークを確認する素振りを見せていたところを見ると、ラインは読めているけど、もうひとつ打ちきれない。そんな感じだった。
13番、相変わらず好調なドライバーショットはフェアウェイをしっかりとらえる。コース内を歩くとわかるのだが、このコース、フェアウェイにあるからやさしい2打目が打てるというわけではなく、フェアウェイも結構アンジュレーションがあり、傾斜に止まることもしばしば。13番の2打目の渋野はまさにそんな感じ。構えから見るとちょっとつま先下がりで、難しそうなライ。グリーンをとらえることができなかったが、約1.5メートルのパーパットを決めてナイスパー。14番も2打目でバンカーに入れてしまうが、そこから約4メートルのパーパットを決めて凌いでいった。本人の言葉。
「途中からなかなかリズムが合わず、パッティングまでリズムが合わなくなってきた感覚があった」(渋野)
11番と12番はストレスのないパーに対し、13番と14番は若干緊張感のあった中でのパー。どっちに転ぶかわからない状況のなか迎えた15番ホール。ここは距離が短くいわゆる「バーディを取りたい」ホールのひとつだ。ここで流れをいいほうに変えてほしいと思いながらティーショットを見る。ナイスショットでフェアウェイ(というかグリーン手前)にしっかり運ぶ。2打目は残り50ヤードくらいだったか。グリーン奥、段の上に切られたピンに対し、渋野の打球はキャリーがあと2ヤード足りずに戻ってしまった。長いバーディパットはあまり合っていない様子で2メートルくらい残ってしまい、ここでも緊張感のあるパットを強いられてしまった。今度は入らなかった。本日初めてのボギー。
16番のパー3はアイアンで打ったが、右にミス。今日は“右の日”だなという感じを見ている側はちょっと感じた。本人も納得がいっていない様子だったし、苛立っているようにも感じた。それは「この試合に入る前にショットのいい感覚、つかんだような感覚があったんですけど、それがまったく合っていなくて……どうしてかなぁという思いがあった。ラウンド中になかなか修正できなかった」(渋野)から。それでも、アプローチを寄せてパーを拾ったが、17番でボギー、前半をこの日イーブンで終えた。
好調だったはずのドライバーでミスが出始めた
折り返しの1番と2番もドライバーはいいのだが、アイアンがしっくりこない。グリーンをとらえきれずなんとかパーを拾う状況が続いた。だが、4番でボギーとすると、今まで好調だったドライバーショットがブレ始めた。
「今日はアイアンが右のミスが多かったので、ドライバーだけは右に飛ばさないよう、しっかり振ろうと思ったら左のミスが多くなってしまった」(渋野)

Honda LPGA THAILANDの2日目までは好調だったドライバー。悔いのないように最終日に挑んでほしい
6番。その左のミスでバンカーにつかまってしまう。そこから2打目をなんとかグリーンに乗せたが長いバーディパットが残った。
「パッティングが打ち切れなかったですね。ラインはしっかり読めているような感じではあったんですけど、打てなかった。自分の問題なので、そこは練習でどうにかなります」と話す通り、打ち切れず微妙な距離のパーパットを外しボギーとしてしまった。
7番のパー5は3打目のアプローチで寄せ切れずバーティを奪えなかった。グリーン手前からのアプローチだったのだが、ピンは奥、手前にマウンドがありそこに当てて転がして寄せるか、上げて止めるか、どっちにしても難しい状況だった。
「傾斜に当ててピンから5.6ヤードくらいのところに着弾させて、コロコロ寄っていくイメージだったんですけど、上手くいかなかったです。もちろん、上げるという選択肢もありましたが、この判断をしたことに後悔はしていません」(渋野)
取りたいパー5で取れず、終わってみれば2オーバー、バーディはスタートホールのひとつだけというラウンドになった。試合後「今日すごく伸ばしたかったんですけど、伸ばせなくて悔しいです。明日、悔いの残らないように、パー5でしっかりバーディを取れるように頑張りたいです」と話した渋野。
彼女の話を聞いていると、今大会はちょっと自分に期待していた部分もあるのかなと思った。「練習でつかんだ」と話したこともそうだし、今年はクラブとボールを一新し、飛距離も出ている。今日の「悔しい」という言葉からもそんな雰囲気が伝わってきた。そんな中タイに乗り込んできたが、体調不良に見舞われてしまった。影響がないはずはないのだが、決して本人は体調を言い訳にはしない。気合いが入った心とは裏腹に体は思うように動かず、本人が一番もどかしいはずだ。
だからこそ最終日、本人の言葉を借りるなら「悔いのない」1日にしてほしい。2019年のあのフィーバーの時、渋野担当だった者として願っている。
撮影/姉崎正