風も穏やかで気温も20度と半袖のギャラリーも多く見られ沖縄らしい天候で最終日はスタートしました。10代で初優勝を目指し3日間首位を譲らなかった菅楓華がボギーとし、1打差の2位タイでスタートした岩井千怜がバーディを奪い、1番から順位が逆転。6番で菅選手がバーディを奪ってスコアを戻す頃には先を行く申ジエ、木村彩子、桑木志帆選手もスコアを伸ばし、5人が並ぶ混戦模様に突入します。

ツアー8勝目を開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」で飾った岩井千怜
後半に入ると10番で岩井千怜、11番で菅楓華がバーディと二人が抜け出しますが、12番、14番で着実にバーディを奪う千怜選手がリードをじわじわと広げます。16番201Yのパー3ではあわやホールインワンになるかというスーパーショットで9アンダーまでスコアを伸ばし勝負を決めると、最終18番ホールも花道からのアプローチをしっかりと寄せてバーディ。2位に4打差をつけトータル10アンダーで連覇を飾りました。
これまで岩井姉妹を多く取材していますが、バーディ数であったり、ノーボギーであったり、その日のラウンドの数字的な部分を囲み取材で振り返って改めて気づくことが多いです。風が強く肌寒かった2日目に4バーディノーボギーでプレーした後の囲み取材でもノーボギーのプレーについて聞かれて、そこで初めて気づくほど目の前のプレーに集中していたことが感じられます。

後半に5バーディを奪い後続を引き離し強さを見せつけたプレーになった
グリーンの硬さが増し、ピン位置が難しかった3日目を70(2アンダー)で終えた後では「伸ばせそうで伸ばせない、もどかしいようなセッティングになっていて、すごくやりがいがありました」と、悪天候や難しいセッティングほど「やりがい」を感じられるということで、ミスしても集中力を切らさずスコアメークできる秘訣なのでしょう。
いつもは「普通に。力を入れずに。いつもと変わらずに行こう」というマインドを、最終日は変えたのか? と優勝会見で聞くと、「今日は上りのラインに残せるように考えてスタートしました」との答え。硬く速いコーライグリーンの攻略法を念頭に入れながら攻めるゴルフで7バーディ1ボギーと強さを見せました。
初タッグを組んだキャディのマークさんとは、11番パー5で2打目を3Wで打つかアイアン型の5番UTで打つか迷い、5番UTを選んだことを悔いるような相談をすると「Stay Calm! Stay Calm!」(落ち着いて)となだめられ、「過去を考えず、先のことも考えず、今にフォーカスしよう」と諭され集中力を切らさずにプレーできたとキャディのアドバイスに助けられたと話しました。優勝争いの中で、はやる気持ちを落ち着かせることの大切さを改めて学んだツアー8勝目の優勝となりました。
「ここがゴールじゃない」
勝利を重ねても前に進むメンタリティをどう身に付けたのかを聞くと、「誰にも習ったことはなく自分で考えてきた」といい、
「ここがゴールじゃないといつも思っていて、優勝してもここで留まらないぞという思いでそういう気持ちになるので。きっとたぶんもっと上に行きたいなという気持ちがあるからだともいます」
そのゴールとは?と聞くと「私も考えたことあるのですが、ゴールってないな、と思っていて。どれだけ自分が優勝しても大きな偉業を成し遂げても、きっと自分の心はゴールではないなと思うはずです」

上りのラインを残すマネジメントで7バーディ1ボギーの66で2位に4打差をつけ圧勝した
そして不動裕理選手の持つ生涯獲得賞金額を今大会で更新した申ジエ選手とのプレーについて聞くと、「今日は英語で話しかけてくれて、私も英語で返して、応援してくれてるんだなと感じがしたので、すごくやさしいなという思いと、その思いを背負ってこれからも頑張っていきたいな、という思いが沸きました」。
そう答えた千怜選手の目は、次戦は2週後の「Vポイント×SMBCレディス」、そして今季から参戦する米ツアーでのリランキングで生き残ること、シード権確保や初優勝へと向いています。に出場する着実にトッププレーヤーのへ道を歩む岩井千怜選手の旅は続きます。
写真/岡沢裕行