自分に合った「重心特性」と「ロフト」選びが肝心!

写真はイメージです
打ち出し角&スピン量を“理想”に近づける
ドライバーをもっと飛ばすには、どういうクラブを選べばいいのか? クラブデザイナーの松尾好員氏は【飛びの3要素】に絡めてこう述べる。
「飛距離を出すにはまず、ボール初速を速くする必要があります。ですが、フェースの中央付近の反発性能に関しては、ルール規制もあり、多くはモデルチェンジをしてもそれほど変わっていません。だからこそ、ヘッドスピードに応じた理想の弾道データ(打ち出し角、スピン量)に結び付くドライバーを選ぶことが大事。それには、ヘッドの重心特性やロフトが肝になります」
そこで、今回はドライバーの重心特性やリアルロフトをフィーチャーしよう。
“飛びの3要素”と“ヘッドデータ”は切っても切れない関係
ボール初速
初速が上がるほど飛距離につながる
初速と飛びは比例していて、初速が速いほど飛距離が伸びる。初速÷HSがミート率で、その数値が高いほど初速効率が高いことになる。
注目ヘッドデータ①/ロフト角(リアルロフト角)
ロフト=打ち出しが低いほど、球が前に飛び出すぶん初速が上がる
注目ヘッドデータ②/ヘッド重量
ヘッドが重いほど衝突エネルギーが大きくなり、初速が出やすい
打ち出し角
大きすぎない、小さすぎない。適正打ち出し角が大事
打ち出しが高すぎるとパワーが上に逃げてしまい、低すぎるとキャリー不足になる。HSに応じた適正な打ち出し角を目指したい。
注目ヘッドデータ①/重心深度
重心が深いほどインパクトロフトが寝やすく、打ち出しが高まる
注目ヘッドデータ②/ロフト角(リアルロフト角)
ロフトが大きければ打ち出しが高くなり、小さければ低くなる
スピン量
飛ぶのは少なめ。多めは弾道が安定しやすい
低スピンのほうが、打球が強くて飛ぶ可能性はあるが、少なすぎるとドロップに。スピン量がある程度多いと、球が浮きやすく弾道が安定する。
注目ヘッドデータ①/低重心率
低重心なほどSSより上のエリアが広くて、スピン量を抑えやすい
注目ヘッドデータ②/ロフト角(リアルロフト角)
ロフトが大きいほどスピンが入り、小さいほどスピンが抑えられる
月刊GDが調べた、ヘッドスピード別・飛ばせる理想の弾道データ!
ヘッドスピードによって、効率よく飛ばせる打ち出し角とスピン量の数値は違う。基本的には、ヘッドスピードが遅いほど最適な打ち出し角とスピン量は大きい数値になり、逆に速いほど小さい数値になる。「ただしツアープロになると、もう少しスピンを入れてインテンショナルに球を曲げたいと考える人もいます」(松尾氏)
ヘッドスピード | 打ち出し角 | スピン量 |
---|---|---|
40m/s | 13~15度 | 2600~2800rpm |
45m/s | 12~14度 | 2400~2600rpm |
50m/s | 11~13度 | 2200~2400rpm |
松尾好員氏が断言!
芯を外しても、初速が落ちにくくなっている
「前作に比べて“まずまずイイ反発エリア”を広くするのが、近年の開発傾向の一つ。例えて言うと、以前なら芯から5ミリ外れたら初速が落ちていたのが、最近では7ミリ外れても初速が落ちにくい、という意味です」(松尾好員)
「重心深度」と「低重心率」は“飛び様”に大きく影響する!
※ヘッドデータはジャイロスポーツ調べ
深重心で高打ち出し低重心で低スピン
外ブラ3メーカーのスタンダードモデルについて重心の変遷を振り返ると、テーラーメイドは低重心、キャロウェイは標準の高さ、ピンは高重心という傾向があった。しかし、ピンの新作「G440 MAX」は、テーラーメイドの「Qi35」と同様に、深重心でありながら重心を下げてきた。
「重心の深さを維持したまま低重心率を下げるのは、メーカーの設計努力と言って差し支えありません。本来は、重心が深くなるとスイートスポット(フェース面上の芯・SS)は高くなりやすいからです。重心が深いと“インパクトアッパー”になりやすく、打ち出し角が上がるもの。また、低重心率を下げるとスピンが減りやすい。いわゆる“高打ち出し&低スピン”の弾道に近づけて飛ばすための工夫でしょう。低重心率を上げたり下げたりするのは、ツアープロの意見などによるものもありますね」(松尾氏)
ちなみに、「重心深度の平均値も年ごとに変化しています」と松尾さん。一例を挙げてもらうと「近年は深重心化の傾向があります。例えば『グローレ F2』(16年発売)の重心深度は38.7ミリで、当時の基準では“深い”でしたが、今では“やや浅い”と表現できます」
テーラーメイドの変遷

2019年『M5』
重心距離/42.3ミリ(長い)
重心深度/37.3ミリ(標準)
SS高さ/34.3ミリ(やや低い)
低重心率/62.9%(標準)
ヘッド左右MOI/4387g・cm2(標準)
ネック軸回りMOI/7492g・cm2(大きい)

2021年『SIM2』
重心距離/41.1ミリ(長い)
重心深度/36.9ミリ(標準)
SS高さ/33.5ミリ(やや低い)
低重心率/61.6%(やや低重心)
ヘッド左右MOI/4691g・cm2(標準)
ネック軸回りMOI/7510g・cm2(やや大きい)

2022年『ステルス』
重心距離/44.0ミリ(非常に長い)
重心深度/42.0ミリ(非常に深い)
SS高さ/35.2ミリ(標準)
低重心率/62.4%(標準)
ヘッド左右MOI/4847g・cm2(やや大きい)
ネック軸回りMOI/8178g・cm2(非常に大きい)

2024年『Qi10』
重心距離/41.1ミリ(長い)
重心深度/42.3ミリ(非常に深い)
SS高さ/34.4ミリ(やや低い)
低重心率/62.5%(標準)
ヘッド左右MOI/5242g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/8333g・cm2(非常に大きい)
2025年『Qi35』
重心距離/42.4ミリ(非常に長い)
重心深度/42.6ミリ(非常に深い)
SS高さ/33.6ミリ(やや低い)
低重心率/61.2%(やや低重心)
ヘッド左右MOI/5355g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/8719g・cm2(非常に大きい)
『Qi35』は“深&低重心”で高く強く飛ばす
従来モデルから、スイートスポットが低めで低重心の傾向に。新作は重心がかなり深いのに低重心で、高打ち出し&低スピンの弾道を追求した。
キャロウェイの変遷

2020年『MAVRIK』
重心距離/41.1ミリ(長い)
重心深度/35.6ミリ(浅い)
SS高さ/35.9ミリ(標準)
低重心率/63.1%(標準)
ヘッド左右MOI/4477g・cm2(やや大きい)
ネック軸回りMOI/7358g・cm2(やや大きい)

2021年『EPIC SPEED』
重心距離/40.5ミリ(長い)
重心深度/35.0ミリ(浅い)
SS高さ/35.5ミリ(標準)
低重心率/63.2%(標準)
ヘッド左右MOI/4522g・cm2(標準)
ネック軸回りMOI/7089g・cm2(標準)

2022年『ROGUE ST MAX』
重心距離/42.0ミリ(長い)
重心深度/41.8ミリ(やや深い)
SS高さ/35.0ミリ(標準)
低重心率/63.2%(標準)
ヘッド左右MOI/5360g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/8498g・cm2(非常に大きい)

2024年『PARADYM AiSMOKE MAX』
重心距離/41.3ミリ(長い)
重心深度/42.0ミリ(非常に深い)
SS高さ/35.0ミリ(標準)
低重心率/62.1%(標準)
ヘッド左右MOI/5181g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/8226g・cm2(非常に大きい)
2025年『ELYTE』
重心距離/41.9ミリ(長い)
重心深度/41.2ミリ(深い)
SS高さ/34.5ミリ(標準)
低重心率/63.1%(標準)
ヘッド左右MOI/5216g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/8177g・cm2(非常に大きい)
『ELYTE』は重心を深くしつつ重心の高さは標準
数代にわたりSS高さや低重心率を標準値でキープしているのは、メーカーのこだわりか。新作は重心が深くて左右MOIが大きい。
ピンの変遷

2017年『G400』
重心距離/45.5ミリ(非常に長い)
重心深度/45.4ミリ(非常に深い)
SS高さ/37.5ミリ(高い)
低重心率/67.6%(高重心)
ヘッド左右MOI/5210g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/9184g・cm2(非常に大きい)

2019年『G410 PLUS』
重心距離/45.2ミリ(非常に長い)
重心深度/45.4ミリ(非常に深い)
SS高さ/38.6ミリ(高い)
低重心率/70.7%(高重心)
ヘッド左右MOI/5416g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/9264g・cm2(非常に大きい)

2020年『G425 MAX』
重心距離/45.0ミリ(非常に長い)
重心深度/49.2ミリ(非常に深い)
SS高さ/37.3ミリ(高い)
低重心率/67.8%(高重心)
ヘッド左右MOI/5775g・cm2(非常に大きい)
ネック軸回りMOI/10280g・cm2(非常に大きい)

2022年『G430 MAX』
重心距離/45.7ミリ(非常に長い)
重心深度/46.5ミリ(非常に深い)
SS高さ/37.5ミリ(高い)
低重心率/69.8%(高重心)
ヘッド左右MOI/5487g・cm2(大きい)
ネック軸回りMOI/9706g・cm2(非常に大きい)
2025年『G440 MAX』
重心距離/44.0ミリ(非常に長い)
重心深度/48.0ミリ(非常に深い)
SS高さ/33.1ミリ(低い)
低重心率/62.9%(標準)
ヘッド左右MOI/5534g・cm2(非常に大きい)
ネック軸回りMOI/10022g・cm2(非常に大きい)
“ピンがブレた?”ってこのことだった
高重心でスイートスポット(SS)が高いという流れを覆した新作『G440 MAX』。重心がかなり深いが、SSが低くて低重心率が標準で、従来よりスピンを抑えて飛ばせる。
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