ジュニアゴルフの競技人口は減少の傾向にあり、中高ゴルフ連盟の加盟校も増えていない。とはいえ、ジュニアゴルファーのレベルは驚異的と言っていいほど上がっている。そんなジュニアゴルファーの進学事情やゴルフ部の実態を埼玉栄ゴルフ部名誉監督、橋本賢一氏に聞いた。

中学は公立、高校はゴルフ部のある学校へ進むのが現在の主流

1970年代の終わりにゴルフ部創部ラッシュが起こった。日本のゴルフ人気を牽引してきた青木功、尾崎将司、中嶋常幸に次ぐ世代として、倉本昌弘、湯原信光、羽川豊の「三羽ガラス」が出現し、「学士プロ」が話題になった頃だ。高校にゴルフ部ができたからジュニアゴルファーが増えたのか、それともジュニアゴルファーが増えたからゴルフ部創部のラッシュが起こったのか。その因果関係は定かではないが、「三羽ガラス」の出現と同時期にジュニアゴルファーが急増したことは間違いない。

関東にいたっては、日本ジュニアにつながる関東ジュニア予選に1000人を超えるジュニアゴルファーが参加。そのジュニアの多くが高校ゴルフ部に籍を置いていた。しかし、黎明期に全国制覇をしたPL学園、水城高校は現在廃部となっており、伊澤利光、丸山茂樹を輩出した日体荏原高校(現・日体大荏原)も一時廃部となった。その要因のひとつが橋本氏のいう「顧問のなり手がいなかったこと」があげられる。

現在のジュニアゴルファーの動向をみると、中学は公立に通い、高校はゴルフ部のある私立に進むのが主流となっている。「中学の部」の組み合わせ表で私立中学が目立っていた時代もあったが、現在は少数派で圧倒的に公立中学が多くなっている。

「私立中学には受験があります。小学生でゴルフをやっていたとしても、中学に推薦入学の制度はありません。その点、高校は中学時代にゴルフで優秀な成績をおさめていれば、極端に学業が悪くなければ推薦で入学できることがあります」(橋本)

中学で実績を残し、高校はゴルフ推薦で入学する。このような流れは高校野球でも聞いたことがある。甲子園の常連校にもなると、一般受験で入学した生徒は野球部に入部すらできないという。中学野球で実績を残しスカウトされるか、もしくはセレクションを受けて合格した生徒が入部を認められ、かつてあった「高校に入学したら野球部に入って甲子園を目指す」といった純朴なストーリーは、強豪校ではもはや存在しない。ゴルフはそこまで厳しくなっていないが、似たようなものがある。

「埼玉栄は中高一貫なので中学受験に合格してゴルフ部に入部する生徒がいます。優秀な成績を引っ提げた高校入学組と争ったときに実力差はあります。しかし、中高の5年弱の努力によって差が埋まり、団体戦のレギュラーになった生徒もいます。埼玉栄は中学組と高校組が良い具合に融合されています」

橋本氏が代表を務めるケニーゴルフアカデミーからも埼玉栄高校ゴルフ部に進むジュニアゴルファーがいるという。そう聞くと、ゴルフ部の入部のための外部育成機関のようにも見えてくる。野球の場合、「あそこのクラブチームは、どこどこ高校の野球部に太いパイプがある」、「今年は何人入った」という話を聞く。それと同じように、高校ゴルフ部に太いパイプを持つジュニアアカデミーが今後、増えるのかもしれない。

「周囲の強豪校ではスカウティングによって、有力な選手を招き入れて戦力強化をしていたところもありました。しかし、私がゴルフ部の顧問になったばかりの頃は、スカウティングのノウハウがなかったので、ゴルフ部に入りたいという子は全員入れていました。きついことに耐え抜ける粘り強さを持った子を見極めるために、入部後から2週間毎日トレーニングをさせていました。50人ほどいたのが終わる頃には20人になっていましたね」

画像: 就任当時は「スカウティングせずに入部したメンバーでチームを創り上げた」という橋本氏

就任当時は「スカウティングせずに入部したメンバーでチームを創り上げた」という橋本氏

毎年8月に開催される「緑の甲子園」。埼玉栄ゴルフ部は、この大会で実績を残し、優勝したことで全国からたくさんの入部希望者が殺到するようになった。

「私が生徒募集の責任者になったことがありました。埼玉栄でゴルフをやりたいという子は、ゴルフの実力に関係なく入部させていました。男女合わせて80名を超えていたでしょう。大勢の部員が入部していたこともあり、学校から有力選手に対して奨学生(学費控除)として入学させていいと言われたことがありました。全国大会でベスト4以上の子にはそういう条件付きで入学させていました」

他校よりも強いチームを創り上げるために有力選手のスカウティングやセレクションを行う。強豪校ではそれが全国各地で行われているのが現状だ。

「有望な選手をいろんな学校で取り合っているのが現状です。関東エリアで言えば、埼玉栄、作新学院、佐野日大、開志学園、目黒日大、日体荏原、拓大紅陵、千葉黎明、明秀日立、ルネサンス、日本ウェルネスが精力的に動いています。昔は九州や関西、東北地方、北海道から入部してきた時代もありましたが、今ではもう来なくなりましたね。それぞれの地方に強豪校が設立され、勧誘に力を入れてきて、その地方に収まるようになっています」(橋本)

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