
左から11年全米オープン、12年全米プロ、14年全英オープンを制したマキロイ。キャリアグランドスラムに王手をかけてから、すでに10年以上の月日が流れた(PHOTO / Tadashi Anezaki)
思い起こせば、まだ有望な若者のひとりだったマキロイが初めてメジャータイトルに手をかけたのが2011年のマスターズ。最終日を2位に4打差の首位で迎えたが、バック9で大崩れして優勝を逃した。その年に全米オープン、12年に全米プロ、そして14年に全英オープンを制してキャリアグランドスラムに王手をかけたとはいえ、11年マスターズで目前で優勝を手放した記憶はマキロイを苦しめ続けた。
15年からは毎年のようにグランドスラムを期待されながらも、あと一歩届かなかった。年齢を重ねていき、技術やメンタルは成熟期に入っているが、肉体的な衰えは避けられない。毎年、「これが最後のチャンスになるかもしれない」、「もうマキロイはマスターズを勝てないのではないか」。そんなネガティブな言葉もささやかれはじめていた。
迎えた今年のマスターズ初日。14番終了時点で4アンダーとスコアを伸ばしていくが、15番と17番でダボ。貯金を使い果たしてしまう。「今年もまた……」そんな雰囲気も漂ったが、2日目の後半に爆発力を見せて、一気に優勝争いに加わってきた。

マキロイが向かう先々で大声援が巻き起こる。みんな彼のキャリアグランドスラム達成にきたいしているのだ(PHOTO / Yoshihiro Iwamoto)
そして3日目。1番で幸先よくバーディを奪うと、続く2番パー5で2打目をグリーン奥のラフにこぼすが、そこからチップインイーグルを奪ってみせる。完全に勢いに乗ったかに見えたが、8番と10番をボギーで「またなのか……」と思わせるも、15番でこの日2つ目のイーグルを奪い、その懸念を払拭。最後まで攻めのゴルフを貫いた。14年前のリベンジへ。マキロイが2位に2打差のトップで最終日に挑む。
追うのは24年全米オープン覇者のブライソン・デシャンボー
追ってくるのは昨年の全米オープンで優勝を争ったブライソン・デシャンボー。
3日目の16番パー3、1打目をピン右横1メートル弱に寄せと、グリーンへ向かう途中、パトロンの歓声に応えて帽子をとり、そのまま帽子を振り上げるジェスチャーを見せてパトロンを沸かせる。その後、バーディパットを沈めると今度は両手を振り上げて、パトロンに「もっと盛り上がれ」と言わんばかりにアピール。この男、相当気合が入っている。

18番でバーディを決めて2桁10アンダーまでスコアを伸ばすと、パトロンに向かってガッツポーズ。パトロンの声援を自分の力に変えるのも、デシャンボーの戦略か(PHOTO / Yoshihiro Iwamoto)
残すところはあと18ホールのみ。最終日は、今大会でもっとも大きな歓声を受けてきた2人が最終組で激突する。優勝への緊張は多少あるだろうが、百戦錬磨の二人なら関係ない。3日目のプレーを現場で見ていてひしひしと感じたこと、それはこの二人、最終日も攻めのゴルフを辞めないだろうということだ。