
雨の中、プレーオフ4オールでツアー2勝目を飾った安田祐香(撮影/大澤進二)
優勝を決めたバンカーからのスーパーショット

プレーオフで2度、水たまりができたフェアウェイバンカーからグリーンを攻めた安田(撮影/大澤進二)
スーパーショットが通算2勝目を引き寄せた。
プレーオフは中村が1ホール目で脱落し、河本との一騎打ちとなった。その4ホール目。両者ティーショットを左バンカーに打ち込み、先に打った河本はグリーン奥のバンカーの真横へ。その様子を見てから安田はゆっくりとバンカー内に入った。
ライは最悪に近かった。ピンまでは残り174ヤード。激しい雨で砂の上に水が浮いている状態でボールはわずかに砂に沈んでいたが、表情ひとつ変えずいつものテンポで5番ユーティリティを振り抜いた。ボールは降りしきる雨を切り裂いてピン方向へ飛び、左奥2メートルを捕らえた。
河本がボギーとした後、安田はこのバーディパットこそわずかに右にそれたが、短いウィニングパットをしっかりと沈めた。ボールを拾うと右手でキャップのつばをつまみ、硬かった表情にようやくほっこりとした笑みが浮かんだ。
「集中して耐えるゴルフができた」(安田)

安田、河本結、中村心、3人のプレーオフ。最後は河本との死闘を制した安田(撮影/大澤進二)
優勝インタビューでは短い言葉に喜びを込めた。
「4ホールを戦いましたが、すごく寒い中で苦しい状況でした。勝ててよかったです。自信を持って最終日に臨めたことと、少し強くなれた1勝かなと思います」
今週は第1ラウンドがサスペンデッドになったが、2日がかりで7アンダー65でまとめて単独首位に立った。第2ラウンドは1アンダー71で回り、この日の最終日は首位の入谷響に1打差でスタート。7番までずっとパーで耐えながら8番で3メートルを決めてバーディ先行。13番は5メートルを沈めた。9番は3メートル、10番は5メートルのパーパットを決め、16番パー3は第1打が木に当たってバンカーに落ちたが、ピンまで21ヤードのバンカーショットを1メートルに寄せてパーセーブ。18番は2メートルの微妙な距離のパーパットをしっかりと沈めてプレーオフ進出を決めた。
「最終組だったので、優勝者がこの組から出るかなというピリピリした感じもあった。その中ですごく集中できたし耐えるゴルフができた。プレーオフの前に18番が一番緊張しましたが、それをしっかり決めていけたことが、すごく自信になりました。(プレーオフ4ホール目のバンカーからの2打目は)1回バンカーから打っていますし、1回目は右にいったのでリベンジの気持ちで打ちました。いい結果でよかったです」

練習日にも大西翔太コーチからアドバイスを受ける安田
優勝スピーチでは勝因のひとつに初優勝のときよりも強気で臨めたことを挙げた。初優勝も今回も前日に青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務めるプロコーチの大西翔太氏に力をもらった。
「電話させていただいてすごく元気をもらった。自分自身、今週ティーショットが納得いかなかったが、いい位置にいるからこそ自分のゴルフを貫き通すというアドバイスをもらったことで平常心でいられました」
開幕5戦目で今季初優勝を果たした。今週は雨の中の戦いとなったが、初優勝した昨年9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンも激しい雨が降り、大会日程が短縮された中での勝利だった。
初優勝は雨、2勝目も雨、雨は好き?

ミヤギテレビ杯も雨の中ツアー初優勝を飾った安田(撮影/岡沢裕行)
「雨は好きではないですが、どちらかというと好きかもしれません。天気がいいときに比べるとスコアは伸びない。自分が我慢強いゴルフをしてチャンスをつかんでいこうというゴルフをして、ミヤギテレビのときもそうだったけど、今回も集中できたのがよかったと思います」
アマチュア時代は第1回オーガスタナショナル女子アマ3位など2000年度生まれのプラチナ世代では中心選手だった。プロ転向後は現在米ツアーを主戦場にする同学年の古江彩佳や吉田優利に追い越された感があったが、今シーズン浅い時期の幸先いい優勝で巻き返しへの弾みをつけたい。
「今年前半戦の優勝という目標は達成しましたが、まだまだ伸びしろはあると思うし、しっかりと調整して初めての(年間)複数回優勝を目指したい。メジャーには挑戦したいけど、まずは日本ツアーを盛り上げていけるように頑張りたいです」
ちょっぴり長かった雌伏の時期を超えて「プラチナエース」が大空に羽ばたこうとしている。