▶王道①「陳清波流のコッキングの意義とは?」を読む
▶王道②「陳清波流のドローとフェードの定義でもっとも大事なこととは?」を読む

ながいのぶひろ・1969年生まれ、埼玉県出身。日本大学ゴルフ部を卒業後アメリカ修学して最新のスウィング理論を学び、帰国後、ティーチングを広める。2006年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。「90歳を過ぎてもボールを打つときは目の色が変わる。とても真面目で誰にでも優しい素晴らしいプロでした」
【王道③】ロフトのローテーション
最後に、陳清波の代名詞「ダウンブロー」について。
「フェースローテーションという言葉がありますが、この正体はロフトのローテーションだと理解してほしいんです。ここにダウンブローの真実はあります」
ロフト35度の7Iで考えてみよう。
「ダウンスウィングでフェースを開いてロフト45度くらいで入れてきたものを、インパクトでは閉じてロフト35度くらいでスクエアに当てる。これが正しい動きです。ロフトが減る方向に動くことでエネルギー効率がいいインパクトになります。ポジティブなインパクトと言い換えてもいい。いわゆる“つかまえる”動きです。例えばフェースがかぶって入ってきて、インパクト後に25度になるようなロフトの使い方になると球を押せないからエネルギー効率は悪いんです」
ロフトがポジティブに動くとエッヂが地面に当たるので、“憧れの”ターフが取れるという。

フェースが左に回転すると、ロフトが立ってエッヂが地面に当たる。これが、芝を削る動きになる。「陳さんは『私がダウンブローを流行らせたから、ゴルフ場の方に芝が傷んでしょうがないと言われた』と笑っていました」
「エッヂがかみそりのように芝をそいでいく。フェースが開く方向にローテーションするとエッヂが浮くでしょう。すると当たりが薄くなるしターフも取れません」
階段を1段下りるイメージでロフトが立つといいと永井。
「ダウンでレベルに入ってきて、ボールに対して階段を1つ降りる感じ。これを習得するドリルが、陳さんが大好きだった低いティーアップで低いボールを打つもの。ヘッドがティーに当たった後、少し潜る感じで打ちます。スティープにヘッドを入れるのではなく、レベル感のある中でシャフト軸周りを使って、ボールをフェースに乗せていく感じです」
このドリル、陳が若い女子プロにやらせてみたら、ほとんどできなかったという。
「最初はだるま落としみたいになるんです。でも、コンパクトなスウィングで練習すれば大丈夫。バンカーにも応用できます。僕のバンカーレッスンは陳さん型で、砂を左に飛ばす練習をします。ヘッドを動かしてボールをつかまえる動きです」
これらのロフトのローテーションがスクエアグリップに帰結するという。
「スクエアグリップなら、ロフトを開いてスクエアに閉じるときの前腕の返しがしやすい。一番強く叩けて再現性が高いんです。松山英樹選手も同様です」
何より陳清波というプロは、選手として一流だっただけでなく、指導者としても一流だった。
「プロとして、アマチュアに対するプライドとホスピタリティをお持ちでした。陳さんが日本のゴルフ界に残してくれた『技術の王道』を、僕らも引き継がないといけないと思っています」
陳さん流ダウンブローの王道
「ロフトが減る方向に動く。これが正解です」
地面を掘ったり斜めに滑ってヘッドを入れるのはNG。「陳さんは『ボールに当たった時は開いていて、ブチュッと当たって球が離れるときにスクエアになる』という言い方をしています」

ダウンブローの真実

斜めにヘッドを入れるのは×
スクエアグリップの真実「前腕を返しやすいんです」
「陳さんは、ほぼウィークグリップですが、このグリップなら、ロフトを開いてスクエアに閉じる時の前腕の返しがしやすいし、それ以上ヘッドが左を向かないから左に引っかけないんです」

陳さんのスクエアグリップ
ティーアップして低い球を打つ
ティーアップし、PWを使い低い球で50Yくらいを打つ。
「コッキングで肩口くらいまで上げ、クオータショットで低い球を打つ。レベルで入れながらフェースの回転でボールを包み込む感じで。ティーは叩かないようにしたい」

フェースの回転でボールを包み込む
バンカーショットの技術に王道が出る
バンカーにも応用できる。
「フェースを開いて切る打ち方ではなく、開いて起こす打ち方。距離のある40~50Yを9Iや8Iで打つときにも使えます」

バンカーにも応用できる
▶王道②「陳清波流のドローとフェードの定義でもっとも大事なこととは?」を読む
THANKS/新富ゴルフプラザ
PHOTO/Tsukasa Kobayashi、小誌写真部
※週刊ゴルフダイジェスト4月29日号「陳清波の教えに学ぶ技術の王道より一部抜粋」