▶「TEAM BEYONDの取り組みの柱について(前編)」を読む
東京都のパラスポーツ推進を紹介する最終回です。都では、企業とパラスポーツ競技団体との「マッチング」活動も行っています。
「これまで年に1度、公益社団法人東京都障害者スポーツ協会が主催する対面での交流会を行っていますが、それに加えて通年で企業と競技団体がオンライン上で交流できるような場を作ろうということで、ただ今、交流サイトの準備を進めている最中です」(東京都職員の安雙里美さん)

「TEAM BEYOND」のキャップをかぶる安雙さん。4月に部署は異動しましたが想いはつながっています。画像をクリックすると東京都のパラスポーツ応援プロジェクト「TEAMBEYOND」のホームページに移動しますwww.para-sports.tokyo
競技団体、企業、それぞれが交流サイトに登録をし、相手に期待することや提供できるアセット等を書き込みます。そうしてオンライン上でマッチングする場を作るのです。たとえば、ボランティアを募集する競技団体に、社員をボランティアとして派遣できる企業を繋ぐ仕組み。近年流行の「マッチングアプリ」と同じ感覚だと言います。
「最初はなかなか広がらないかもしれないので、コーディネーターが書き込まれている内容を見て、競技団体と企業それぞれにお声がけできたらなと考えています。『TEAM BEYOND』のメンバー企業は現在1400社までに増えていますが、毎年実施しているアンケートで一番多いのは『何をしていいかわからない』。競技団体からは『人手が足りずパラスポーツの活動に十分手が回らない』というご意見をいただきます。こういった課題を、コーディネーター側で具体的に整理しながら、交流サイトで両者をお繋ぎする手助けができるのではないかと考えています」
今年の11月には、聴覚に障害がある方の国際大会「デフリンピック」が東京で開催されます。
「かなり競技の種類が多く、オリエンテーリングなど普段目にする機会が少ない競技もあるんです。ゴルフも競技としてあり、若洲ゴルフリンクスで開催する予定です。デフリンピックに興味を持っていただいている企業さんも非常に多い。最近は、自動文字起こしの技術が広まってきて、聴覚に障害がある方がスムーズに活躍できる職場も増えていますし、聴覚障害のアスリートを採用する企業さんも多いんです」

昨年11月行われた「企業×障害者スポーツ競技団体等の交流会」の様子。日本障害者ゴルフ協会も参加した。今年も秋以降に開催される予定
さて、東京都のパラスポーツ課には現在40人弱の職員がいますが、他の地方自治体にはなかなかここまで大きな組織はないとのこと。スポーツ部署の一部や、福祉系の部署にあることも多いそうです。自治体間の「つながり」は今のところは薄く、これからの課題となるでしょう。
「昨年、初めて静岡県を訪問して意見交換をしました。静岡県は『ふじのくにパラスポーツ推進コンソーシアム』という大きな組織を立ち上げられています。今は情報交換程度ですが、今後、協力して何かを行うような動きが活発化していけばいいと思っています。東京都のなかでは、各区市町村でパラスポーツ関連の取り組みをするときに補助を出したり、年に2回程度、意見交換会を設けてお話を聞いたりしています。また、パラスポーツ体験を区市町村が主催するイベントやお祭りと連携して行うこともあります。パラスポーツは、パラリンピックだけではなく、障害がある方もない方も皆、楽しめるスポーツという位置づけで私たちはとらえ、今後も活動をしていきたいと思っています」

障害者ゴルフの大会にも挑戦し続けるパラアスリートの皆さん。「いつも参考になる話を聞かせてもらいます。スポンサーの獲得はゴルファーの課題。よい出会いがあることを期待します」(吉田隼人)
「TEAM BEYOND」は、アスリートだけでなく、スポーツをする人、観る人、支える人、さらには、企業・団体など、あらゆるジャンルを超えて、メンバーが集まり、一つのチームとなって活動を展開していくもの。あらゆる壁を“こえて”こそ、よりよい社会は生まれていく。そんな想いが、少しずつ浸透していくことを願ってやみません。
PHOTO/Yasuo Masuda