
解説/松尾好員さん
往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
2021年にテーラーメイドから発売された300MINIドライバー。発売当初はさほど注目を浴びる存在ではなかったが、徐々に雑誌メディアや口コミで人気が広まり、今や各メーカーがこぞってミニドライバーをリリースするほどになった。460㏄が全盛の時代になぜ300㏄ほどのミニドライバーの人気が高まったのか。クラブデザイナーの松尾氏に話を聞いた。
「まずはプロのリクエストが発端だと思います。男子ツアーでは300ヤードが当たり前になってきましたが、コースレイアウトは広くなっているわけではなく、むしろ戦略性が高まっています。ドッグレッグはもちろんのこと、300ヤード付近にバンカーを配置したりと、むしろ飛ばすことでマネジメントがしにくくなる場合が多い。そこで、大型ヘッドのドライバーよりも飛距離を抑えて、的確に狙った場所へボールを運べるクラブが欲しくなったのだと思います」

EYLTE MINIドライバーは340ccのサイズ。ミニドライバーのなかでは大きいほうだが、それでも460ccのELYTE MAX FASTと比べるとその違いは明らかだ
[ミニドライバーの特徴]
◦ヘッド体積が小さい
◦クラブの長さが短い
◦ヘッドの重心深度が浅い
また松尾氏は、フェアウェイウッドとの違いも語ってくれた。
「飛距離を抑える、ということであればフェアウェイウッドでいいじゃないか、と思う人もいるでしょう。けれど、ミニドライバーはあくまでドライバーとして作られている点がポイントになります。
フェアウェイウッドは地面から打つことを想定しているため、設計するうえで制約が結構あるんです。なので、重心位置もある程度決まってしまいます。けれど、ミニドライバーはティーショットが前提なので設計自由度が高い。つまり、つかまりが良くてミスヒットにも強く、初速も出せるわけです」
では現代のミニドライバーの実力はいかほどか。次のページで徹底検証した。
ミニドライバーへの素朴な疑問な長所
FWと何が違う?→「ミニドライバーはティーショットを前提に設計しています」
FWは地面から打つことを想定しているぶん、シャローバックで球を上げやすいように設計されている。対してミニドライバーは、ティーアップして打つことが前提で、ややディープバック気味。スピン量を抑えて高い初速性能を発揮できる。

ミニドライバーはややディープバック
長所は3つ!
1、操作性が高くつかまりやすい
大型ヘッドのドライバーと比較して、ヘッド体積が小さいため操作性が高い。「ミニドライバーは重心距離も短いため、つかまりやすいのが特徴です」(松尾氏。以下同)
2、短尺シャフトだからミート率を上げられる
ELYTEはクラブの長さが45.5インチ。ELYTE MINIは43.5インチ。2インチ短いことで操作性が高まり芯でとらえやすい。「短い分硬くなり、飛距離が出ない人はフレックスを落とすのも手です」
3、ロフトが寝ているので球が上がる
ドライバーはロフト角が9度〜10.5度が主流。ミニドライバーは11度〜13度が多い。「ミニドライバーは重心が浅めで、球が上がりにくい。それをロフト角で補っています」

ミニドライバーのほうが短い
つかまりやすさに影響するネック軸回りMOI
製品名 | ネック軸回り慣性モーメント |
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BRNR ミニドライバー カッパー | 6369g・㎠ |
Qi35 ドライバー | 8719g・㎠ |
操作性の高さ、つかまりに影響するネック軸回りの数値で「2000g・㎠違うとだいぶつかまりは変わります」

ヘッドの返りやすさを示すネック軸回り慣性モーメント
PHOTO/Yasuo Masuda
THANKS/クレアゴルフフィールド
※週刊ゴルフダイジェスト5月6日号「いま巷で話題になってる”ミニドライバー”」より一部抜粋