弾き感があるのにフェースに乗る「打感」がスイッチの決め手
蟬川は国内男子ツアーの開幕に先立ち、米下部ツアーの「コーンフェリーツアー」で2025年をスタートさせていた。4試合に出場したがまさにその4戦目で肋骨の疲労骨折が判明、歩くこともままならない状態に陥っていた。懸命の治療と休養を経て、ようやくクラブを持てるようになったのが2週間前。まだ本調子ではないものの、国内男子ツアー3戦目の中日クラウンズから復帰を果たした。
昨年、ザ・CJカップ バイロン・ネルソンで9位に入るなど、PGAツアーへの限定的な出場ながら結果を残し、世界への想いを新たにした蟬川は、世界中のツアーで圧倒的な使用率を誇る“グローバルスタンダード”タイトリストとボール契約を交わした。選んだボールは2025年モデルの「プロV1x」だ。

蟬川泰果(せみかわ たいが)。2022年にパナソニックオープンで史上6人目となるアマチュア優勝を果たすと、同じ年の日本オープンでアマ2勝目という偉業を達成、その後プロ転向を表明。2023年は日本シリーズなど2勝を挙げ賞金ランキング2位に。日本ツアーの主役のひとりだ
「スイッチの決め手になったのは、何と言っても“打感”ですね。クラブフェースとのファーストコンタクトは硬めなんですが、もっちりした感じでフェースに乗っている感触がするのがすごく好きなんです」
ロングショット弾き感のある打感、パターを含めたショートゲームでは食いつくような軟らかさ。この相反する打感を両立している点は、プロV1xユーザーの多くのプレーヤーが口にする特徴だ。
そしてもう一つ、蟬川が重視するのが“スピン性能”。

スピン性能も非常に重視する。「自分の理想とする弾道、高さで飛んでいく。コースマネジメントを立てるうえで重要なポイント」(蟬川)
「(2打目以降では)スピンもしっかり入ってくれる感じがあって、操作がしやすい。結果的に弾道の高さも自分の理想に近づきます。想定している打ち出しの高さで飛び出してくれる。自分の思っている球と打った球がリンクしているという感じですね。これはコースマネジメントにおいてとても重要な部分で、仮にそこに違和感があると、ハザード超えなどシビアな場面で戦略が立てにくくなる。これからさらに馴染ませていくところですが、きっとコースを攻めやすくなると思っています」

シグネチャーイベント(昇格大会)「RBCヘリテージ」で約3年ぶりのツアー16勝目を果たしたジャスティン・トーマス。ロングアイアンでのスピン性能を重視して、蟬川同様「プロV1x」で戦う
今年、PGAツアーで約3年ぶりの優勝を果たしたジャスティン・トーマスも、「ロングアイアンでしっかりスピンが入って、グリーンに止められる」ことからプロV1xをチョイス。蟬川の選択もPGAツアーのシビアなグリーンが念頭にあるからなのかもしれない。

2025年モデルの「プロV1」(右)と「プロV1x」。プロV1シリーズは、PGAツアーのみならず、国内男子ツアーでも初戦、2戦目ともに使用率60%超えと圧倒的なシェアを誇る
「(プロV1xは)やっぱりいい、それに尽きますね。しかも世界中どこに行っても、きっちりツアーのサポートをしてもらえるメーカーという点も、かなり魅力を感じています。この2年、海外の試合に出場したことで、やはり“世界を見据えるとタイトリスト”なんだと思いました」(蟬川)
シューズのこだわりは「スパイクレス」
蟬川泰果のダイナミックなスウィングを支えるシューズも、新たにフットジョイと契約した。
「僕はシューズに関しては、“スパイクレス”にこだわっています。そして“踏ん張れる”というのがシューズにおいて大事にしているところです。それに見合ったシューズをずっと探して、試しているなかで僕にとってはコレ(Pro/SLX)が一番よかったですね」

現在は「Pro/SLX」を愛用。「毎試合戦い抜くためには“疲れない”シューズがポイント。だから僕はあえてスパイクレスを履きます」(蟬川)
スパイクレスにこだわる理由はどこにあるのか。
「ずばり“疲れにくいところ”です。連戦の疲労感は思いのほか大きいですから。加えてかかとが高いタイプのシューズを普段も好きで履いているので、似ている形状という点も選んだ大きな理由です」
メーカーの言を借りると、(ソフト)スパイクだとドライバーショットでボールがつかまりすぎる時があるため、スパイクレスを愛用するのも理由なのだという。圧倒的な疲れにくさと最適なグリップ性能がバッチリはまったのだろう。
新勢力の台頭が著しい男子ツアーにおいて、新たなギアを携えた蟬川泰果がどんな存在感を示すのか、要注目だ。
PHOTO/Hiroaki Arihara