「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する本連載。今回は、障害者ゴルフの世界大会「THE G4D OPEN」がいよいよ開幕! ウォーバーンGCは昨日の練習ラウンドまではとてもよいお天気で、「イギリスにも温暖化の波が⁉」と感じていましたが、大会初日は期待を裏切らない「Cloud&Windy」。朝からずっと「It’s very cold!」と暗号のような挨拶が飛び交っていました。その「THE G4D OPEN」初日の模様をお伝えします。

さて、日本人選手たちの初日を追いましょう。

トップスタートでの栄誉ある“オナー”を任された吉田隼人(41歳・右大腿切断・STANDING2)。硬くボールが転がるコースに300Yのドライバーショットは封印し、マネジメントを徹底する決意です。「調子はまあまあですね」とにこやかに準備していましたが、名前をコールされ拍手が起こると、引き締まった表情でキャップに軽く手を当ててセットアップ。UTで放ったショットは右ラフへ。今年も世界制覇の夢に向けて一歩を踏み出しました。そして、その後ろを走って付いて行く日本人男性の姿が――。

小山田雅人(57歳・右前腕下切断・STANDING2)の同組だった昨年のチャンピオン、キップ・ポパート(イングランド・STANDING2)が欠場となり、手に障害がある3人が同組に。いつも通りリラックスしたようすの小山田。ドライバーを握って振り抜いたボールはフェアウェイ右へ。ベテランの貫禄が見て取れます。同組2人のティーショットを見て「いいね、若いって」と笑いながらスタートしていきました。

画像: 1番のティーグラウンドに飾られた美しい優勝トロフィー。今年は誰が手にするだろうか。今年もスターターを務めるR&Aの紳士。見た目はとても渋いけれど皆にフレンドリー

1番のティーグラウンドに飾られた美しい優勝トロフィー。今年は誰が手にするだろうか。今年もスターターを務めるR&Aの紳士。見た目はとても渋いけれど皆にフレンドリー

秋山卓哉(49歳・左大腿切断・STANDING2)は、試合前ルーティンのコーヒーを片手に登場。「昨年よりは緊張していないかな。いや、やっぱりコースに来たら緊張していますね。この雰囲気にやられます」と顔もちょっとこわばり……。ドライバーを手に、素振り2回のルーティン後に放ったショットは右のラフのほうへ。元気に手を振りながらスタートしていきました。

画像: スタート前のコーヒーは秋山のルーティン。YouTube撮影はいったんやめて試合に集中

スタート前のコーヒーは秋山のルーティン。YouTube撮影はいったんやめて試合に集中

注目の大村実法(47歳・車椅子・SITTING2)は、車椅子カートのバッテリートラブルが気にかかり、「そちらが心配で、逆に緊張はしていません。海外の車椅子の選手と回るのは初めて。めっちゃ楽しみ」とスタート前に笑顔で同伴競技者と握手。記念すべき日本人車椅子ゴルファーの世界大会デビュー第1打は、ドライバーでフェアウェイど真ん中へ。「Oh! ベリーグッドショット、オオムラ!」との声援を背に、日本から持参した“手作りバギー”で颯爽と走っていきました。

画像: 車椅子ゴルファーは2サムでのプレー。世界の舞台に立つ喜びを胸に戦う大村

車椅子ゴルファーは2サムでのプレー。世界の舞台に立つ喜びを胸に戦う大村

さて、吉田に付いて行った日本人男性は、ここウォーバーンGCの唯一の日本人メンバー、吉倉隆治さんです。「25年前、日本人メンバーは13人いましたが、皆コーポレートメンバー。私だけプライベートメンバーで今に至ります。今日は日本人選手4人を応援に来ました。コースを知り尽くしているのでアドバイスできたらいいですね。とにかくこのコースは狭いので林に入れないこと。ドライバーは必要ないです」と優しいまなざしで嬉しいお言葉を。スタートホールで見ていた倶楽部の社長に手を振りながら“スタート”していきました。

画像: 吉田隼人の“始球式”ショット。得意のドライバーを封印し、平常心で挑んだ

吉田隼人の“始球式”ショット。得意のドライバーを封印し、平常心で挑んだ

初日の結果です。最上位は吉田隼人の8オーバー、14位タイ。「クラブの細かい選択ミスなどがありました。寒いからかボールが飛ばないけれど、地面が硬くて高い球だと止まらず前にいきすぎる。それでも18番でバーディが取れたので明日につながります」。小山田雅人と秋山卓哉は10オーバー、22位タイ。「グリーンの対応に苦労してショートゲームで粘る自分のスタイルが出せませんでした。でもショット自体に不安はないので明日また頑張ります」(小山田)

画像: ショットの調子はとてもいいという小山田。持ち味の粘りのゴルフで上位をうかがう

ショットの調子はとてもいいという小山田。持ち味の粘りのゴルフで上位をうかがう

「パーオン率はよかったのですが、パットがなかなか入らず。同伴競技者にも『今日は君の日じゃないね』と言われました。でも初日の緊張の中で我慢のゴルフができた。ひとつかみ合えばスコアも出ると思うので明日も頑張ります」(秋山)。

大村はショットが安定せず30オーバー、72位。世界大会の洗礼を受ける形となりました。

試合後も遅くまで練習グリーンで調整していた日本人選手たち。まだまだこれから。2日目以降の巻き返しに期待しましょう。

画像: 唯一の日本人メンバー・吉倉さん。ラウンド後は吉田を連れて倶楽部を案内していた

唯一の日本人メンバー・吉倉さん。ラウンド後は吉田を連れて倶楽部を案内していた

PHOTO/Masuda Yasuo

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