
マスターズは2勝しているが、そのほかのメジャーでは勝利がないスコッティ・シェフラー(撮影/Blue Sky Photos)
思えば昨年の全米プロ2日目の朝、シェフラーは会場のヴァルハラGC(ケンタッキー州ルイビル)に入ろうとして交通整理中の警官の静止を振り切り侵入したとして逮捕された。
オレンジ色の囚人服姿でマグショットまで撮られ留置所に入れられた彼は「膝を抱えて1時間震えていた」というがスタート前に釈放され、その後起訴は取り消された。逮捕劇にもめげず第2ラウンドでは66をマーク。最終結果は8位
タイだったが強靭なメンタルを見せつけたものだった。
あれから1年。今年の第2ラウンドでは4バーディ、1ボギーの3アンダー68をマークし、20位タイから5位タイと優勝戦戦に浮上した。「ラウンドが進むにつれスウィングが安定してきた。週末に向け首位に近づけて満足している」
と普段と変わらぬ様子で語ったシェフラー。
調子は「ベストではない」といいながら「メジャーの難しいセッティングでは必ずどこかで困難が待ち受けている。試練に直面したときどう対応するかが重要。それが今日はできたと思う」と手応えを口にした。
昨年は逮捕劇に関わらず上位争いを続けたのだから、ラウンド中の多少の困難に動じるわけはない。
「ゴルフは他のスポーツと違ってディフェンスができない。自分の力を最大限に発揮してコースを打ち負かすしかない。相手のプレーはコントロールできないから」
同組で回った世界ランク2位のローリー・マキロイと3位のザンダー・シャウフェレはともに通算1オーバー、カットラインぎりぎりで決勝に滑り込んだ。
「2人以外にも150人以上の選手がいる。フィールドは広くて厚い。誰かを意識するのではなく、まずはコースとの勝負。サンデーバック9には相手を意識せざるを得ないだろうけれど」
世界No.1が上位に浮上したことで他の選手はシェフラーを意識せざるを得なくなった。全盛期のタイガー・ウッズが上位に来ると他の選手が戦々恐々としたように。
しかしシェフラーもこの日の17番ホールで1.2メートルのバーディパットを外したようにミスをしないわけではない。どれだけ忍耐強くプレーするかが勝敗を分ける。