
試合後の表彰式。ウォーバーンGCに落ちる夕日に照らされて誇らしげな総合、クラス別の勝者たち。ここに日本人選手が入る日もきっと来るはずだ
今日のウォーバーンGCはまたも「It’s cold!」。しかし、選手たちの「最後までベストを尽くそう!」というアツい想いは伝わってきます。
さて、選手たちは「スポーツクラス」という9つのクラスに分けられます。障害の種類というよりは障害レベルで「SITTING1」「SITTING2」「STANDING1」「STANDING2」「STANDING3」「VISUAL1」「VISUAL2」「INTELLECTUAL1」「INTELECTUAL2」。使用ティーは「グリーン」(女性、車椅子、視覚障害)と「イエロー」(それ以外)の2つに分け、各組11分間隔でスタートしていきます。

本大会では各国の協会・団体が参加するセミナーも開催され、障害者ゴルフの情報交換が行われた。DGAの面々も世界を舞台に“戦って”いるのだ(左から小竹、石塚、中山)
日本障害者ゴルフ協会(JDGA)のクラス分け委員、EDGA認定Classifierでもある中山侑哉さんは、「ヨーロッパではクラス分けのため、裏付けとなるデータを取っています。ジャンプ力、引く力(レッドリフト)などの筋力の差、また両足・片足によりゴルフスウィングは変わるのか、など。計測の基準は飛距離です。ただ、ゴルフは飛ばすだけのスポーツではありませんからなかなか難しい。パラリンピックの競技になるためにはある程度公平性を保たれている必要がありますし、折り合いをつけながら、研究していかなければなりません」
障害者ゴルフについて勉強するため、今回初めて参加した女子プロゴルファーの小竹莉乃は、「日本の大会しか見たことがなかったので、世界となるとやはりレベルが高いなと思いました。会場はなごやかですごくいい感じ。コースは狭くて地面が硬く難しいコンディション。女子プロがプレーしても難しいと感じるはずです。私が普通の調子なら、パープレーを死守していく感じでしょうか。また、日本のコースやゴルファーには、障害のある方は飛ばない、プレーが遅いなどの偏見があるのだなあと改めて感じました。私自身もっと“できないこと”が多いと思っていたんですけど、ここにいる皆さん、スウィングはパワフルで私より飛ぶ人もたくさんいますし、プレーも早い。そこはきちんと理解すべきだと思います」。
10代、20代の選手が増え、上位の顔ぶれも若返った本大会。DGA専務理事の石塚義将さんは、「今回も世界のさまざまな協会、団体の方々や選手と話ができました。障害者ゴルフは世界的に急速に成長していっています。協会や大会の運営を工夫したり、コーチングプログラムに力を入れたり。また、選手の実力レベルも上がり、若手選手を含む競争も激しくなっています。日本もその流れに乗り遅れないようについていかないといけないと感じました」。
さて、日本人選手たちの最終日をご報告しましょう。

ゴルフを心から愛して楽しみ、何度打ちのめされてもまた這い上がってくる4人の“サムライ”たち。世界の選手との交流も広がり、日本の障害者ゴルフの礎ともなっていく
上位を狙った小山雅人(57・右前腕下切断・STANDING2)は、「いやー疲れました。今までで一番悪い。1mくらいのパッティングを5、6回外してしまいました」と苦笑いのゴルフで結果は総合19位。日本チームのまとめ役として皆を気遣う姿勢が印象的でした。
吉田隼人(41歳・右大腿切断・STANDING2)は27位タイ。淡々と自分のプレーを振り返りながら「意気込みすぎなのかな、自分に対して甘いのかな。もう少ししっかりやらないと……」と憔悴気味。責任感の強さはときにストレスにもなる。しかし、だからこそさらなる高みを目指せるのです。
秋山卓哉(49歳・左大腿切断・STANDING2)は粘りのゴルフでスコアを作り、結果は37位タイ。「昨日は心が折れていたのでほっとしました。でもやっぱり世界大会は楽しい。皆ゴルフが大好きで、毎日ずっとゴルフをして、ゴルフの話をして、とても勉強になります。国を越えた交流も最高。今すでに『またここでゴルフしたいなあ』と思っています」。得意の英語とで多くの海外選手と交流、とても慕われている“童顔のお兄さん″なのです。
車椅子ゴルファーとして日本人初出場の大村実法(47歳・車椅子・SITTING2)は73位。「コースに叩きのめされましたね。でも来てよかったです。妻に『ありがとう』と言いたい。今、悔しいと思えていますから、ただ単に打っている練習を見直し、英語も勉強したいです」。この経験は、ご自身の、そして日本の車椅子ゴルファー、障害者ゴルフへの、大きな糧となりました。
どんなに打ちのめされても、なぜかまたプレーしたくなるのがゴルフというもの。そして世界の舞台に立つことは、新しい自分を発見し、成長させるきっかけにもなります。各人、新たな課題と目標を胸に、来年またこの舞台に立つことを誓うのでした。
PHOTO/Masuda Yasuo