初優勝から1カ月で2勝目を飾った佐久間朱莉選手ですが、その間も10位タイ、11位タイ、6位タイと上位の成績をキープし安定したゴルフを続けていました。今大会でのパーオン率は意外と低く全体トップで7位タイで終えた高橋彩華選手の63/72、3位タイで終えた鈴木愛選手61/72と比べると51/72と10ホールほど少なく、ショットの調子が絶好調という程ではありませんでした。
その中で初日から首位を守れたのは、オフからのテーマとしているアプローチとパッティングの向上があったから。蛭田みな美選手のコーチとして現地でサポートしていましたが、グリーンの傾斜付近にカップが切られていてラインの読みにくいパットが多かったように思いました。それでも佐久間選手のスタッツを見ると4日間トータルの平均パット数は25.75パットと全体の1位でグリーンを外してもパーを拾い、チャンスでバーディパットを決めたことが表れています。

「ブリヂストンレディスオープン」で今季2勝目を完全優勝で飾った佐久間朱莉(写真/大澤進二)
パッティングが好調な要因を佐久間選手をサポートする藤山トレーナーに聞くと、今季で一番目の状態が良かったと言います。「目のトレーニングにオフから取り組んでいますが、そのころから比べると格段に良くなっています」とビジョントレーニングと呼ばれるゴルフで大切なアライメントのズレを少なくするトレーニングに取り組んでいると教えてくれます。

好調なパッティングでバーディパットもパーパットも決めた(写真/大澤進二)
具体的には、朝の練習グリーンでパターのフェース向きがターゲットに対してレーザーを使って確かめるとティー1本分くらいしかズレていなかったことで、タッチさえ合えば好調は続くだろうというもの。そしてもう一つは足裏で傾斜を測ってラインを読むエイムポイントで重要になる傾斜を感じる感覚も傾斜計と自身の感覚にずれがなかったことで正確なライン読みができていたと藤山トレーナーは分析します。
もちろんそれ以外にも体のコンディションを整えるためのウオーミングアップや、トップが思った位置に挙がっているかどうかのギャップを埋める作業など普段から取り組むメニューもこなしながら、良い状態でコースに送り出そうとする藤山トレーナーの貢献度は大きいはずです。

コンビを組むベテラン後藤勝キャディは背中を押してくれる(写真/大澤進二)
そして百戦錬磨のベテランキャディのジョンさんこと後藤キャディとの初優勝コンビも2勝目を引き寄せた原動力になったことも付け加えておきます。
それではスウィングを見てみましょう。佐久間選手はゆっくりとしたテークバックが特徴ですが、切り返しで一気に加速するのではなく実際は徐々に加速しインパクトで最大のヘッドスピードになるように振っています。

ゆっくりとしたテークバックでテンポが狂わない(写真/姉崎正)
振り子のように動くクラブに対してどんなタイミングでグリップにエネルギーを加えるか。ターゲットに対して後方にテークバックしボールに向かって動くクラブの周期に合わせて、グリップにタイミングよくエネルギーを加えることでクラブヘッドはスムーズに加速し、クラブ軌道も整います。

クラブが動く振り子の周期に合わせてタイミング良くグリップにエネルギーを与える(写真/姉崎正)
ブランコをイメージすると落下に合わせてタイミング良く荷重するのと同じで、スウィングでも切り返しのタイミングがズレるとショットが曲がる原因になります。佐久間選手は独特のゆっくりとしたテークバックから切り返しでもクラブが動く周期を感じながら下半身から始動し胸、腕、クラブへとスムーズにエネルギーを伝えることで大きな飛距離と方向性を生み出しています。
優勝会見では「ポイントランク年間女王を目指します」と公言した佐久間選手。近いうちに3勝目も見られることでしょう。