ザンダー・シャウフェレは長年、〝メジャー勝利のない最強のプレーヤー〞と呼ばれてきました。かつてコリン・モンゴメリーやリー・ウエストウッドがそう呼ばれましたが、30代になったばかりのシャウフェレにそのレッテルを貼るのは時期尚早では? そう思われていた矢先、彼は一気に2つのメジャータイトルを獲得しました。メジャー無冠最強説についてシャウフェレは、「ただ周りが騒いでいるだけだと思っている」と柔和な表情で語っていました。
「十分に練習をしてきたし(メジャーに勝つだけの)実力はあると信じている」。その言葉通り、ネガティブな評判を打ち砕いたのです。2024年バルハラGCで開催された全米プロゴルフ選手権と、スコットランドのロイヤルトゥルーンGCが舞台の全英オープン。どちらも最終日に「65」をマーク、「65」フィニッシュでの2冠は史上初めてのことでした。
全米プロでは初日「62」で飛び出すと21アンダーまで伸ばし、ブライソン・デシャンボーを1打差で撃破。全英ではビリー・ホーシェルとジャスティン・ローズに2打差をつける鮮やかな逆転劇を演じました。メジャー無冠の称号を返上した彼は、キャリアでメジャー2勝以上を挙げた46人の仲間入りを果たしたのです。
「苦しかった。本当に難しかった」と全英で優勝した直後の会見でシャウフェレは揺れ動いた胸中を打ち明けています。「全米プロでメジャーに勝ったことが今日のバック9のプレーに生かせたと思う。緊張する場面でも落ち着きを取り戻せた」

昨年の全米プロ(左)では初日から首位の座を守る完全優勝でメジャー初制覇。全英オープン(右)では1打差を逆転しメジャー2勝目。同一シーズンのメジャー2勝は2018年のブルックス・ケプカ以来。メジャー初優勝からの同シーズンメジャー2勝は、2015年のジョーダン・スピース以来だった
「1年で2つのメジャータイトルを獲得できたのは夢の実現。1つ勝つだけでも永遠に時間がかかったのに2勝を挙げたられたなんて…。本当に特別な気分だ」。本人はメジャー初勝利まで「永遠に時間がかかった」と言いましたが客観的に見れば決して〝永遠〞ではありません。
トム・カイトが1992年に生涯初にして唯一のメジャー、全米オープンの勝利まで72回メジャーに挑戦し続け、セルヒオ・ガルシアは2017年マスターズでの戴冠まで74試合を費やしています。これが最長記録。それに比べれば28回目のメジャー挑戦で全米プロに勝ったシャウフェレの無冠時代はそれほど長くなかったと言えるでしょう。
まもなく今年3つ目のメジャー、全米オープン(6/12~15 @オークモントCC)が始まる。
(コーリー・ヨシムラさんが急逝されました。このコラムは生前に頂いていた原稿によるものです。安らかにご永眠されますよう、心よりお祈りいたします。)
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※週刊ゴルフダイジェスト2025年6月3日号より(ARRANGE/Mika Kawano PHOTO/Blue Sky Photos、Tadashi Anezaki)