▶藤田寛之が戦うツアーチャンピオンズって、いったいなに?
5、6、7月はシニアメジャー月間
多くのシニア選手が憧れを口にするシニアメジャー。第1戦である「リージョンズトラディション」を皮切りに、シニアメジャー月間が始まった。3日間競技で予選落ちなしというフォーマットが基本のPGAツアーチャンピオンズにあって、メジャーは4日間競技で、初戦を除き予選落ちがあるという“ガチンコ勝負”。しかも特筆すべきは、5月と6月にそれぞれメジャー2連戦、計4大会が開催されるということ。普段は3日間競技に慣れているシニアにとっては、体力面においてもハードなスケジュールになる。
そんなメジャーに、昨季の「全米シニアオープン」での雪辱を果たすべく並々ならぬ覚悟で臨む藤
田寛之。そのライバルとなるのが、ベルンハルト・ランガーだ。今年でマスターズ引退を決意したドイツの名手は、同大会でわずか1打足りずに、無念の予選敗退となったものの、2日目は同じ組で回ったウィル・ザラトリスに5打差をつけるなど、67歳にしてその実力は健在。
そんなランガーのシニアメジャーでの成績は、史上最多となる12勝。直近では2023年に65歳にして「全米シニアオープン」を制しているほか、昨年の「リージョンズトラディション」、「全英シニアオープン」ではトップ10入り。
さらに同年、PGAツアーチャンピオンズでメジャーを除き唯一の4日間競技である最終戦の「チャールズ・シュワブカップ」で見事勝利し、ツアー最多勝記録を更新する47勝目を挙げている。60代になってもなお勝ち続けるランガーの強さの秘密はどこにあるのか。
今季「三菱電機クラシック」2日目にランガーと同じ組でラウンドした藤田寛之はその印象を「大きなミスはほぼない。あったとしてもボギーにはならない」(藤田)と語っているが、スタッツを見てみるとその傾向が顕著に表れていた。パーオンを逃したホールでパー以上を取る確率を示したスクランブリング(日本ではリカバリー率と呼ばれる)で、ランガーが60歳を迎えた2016シーズン以降、8シーズン連続でトップ10入りし、今季は72.87%(ツアー平均は59.31%)で2位に。
つまり、その強さの秘密は、大崩れしないリカバリー力にあったのだ。レギュラーツアーからシニアツアーに戦いの舞台を移したばかりのルーキーが強いと言われるPGAツアーチャンピオンズだが、そんな“若手”よりひと回り以上年が離れても成績を残し、もはや生ける伝説と化したランガー。世界で最も偉大なシニアアスリートから目が離せない。
シニアツアーの“マスターズ”●5月15~18日
リージョンズトラディション
(●グレイストーンG&CC/アラバマ州)
シニアメジャー初戦。シニアの“マスターズ”として知られる。ジャック・ニクラスと青木功がプレーオフにもつれ込む熱戦を繰り広げた1995年大会は今なお多くの人の記憶に刻まれている。昨年の優勝者はダグ・バロンだった。

ダグ・バロン
2013年に井戸木鴻樹が優勝●5月22~25日
全米プロシニア
(●コングレッショナルCC/メリーランド州)
1937年に創設されたシニアのゴルフトーナメントで最も歴史のある大会。2013年大会では井戸木鴻樹が日本人男子初の海外メジャー制覇を成し遂げた。昨年はLIVゴルフリーグで活躍しているリチャード・ブランドが大会を制覇。

井戸木鴻樹
シニアの“ザ・プレーヤーズ選手権”●6月19~22日
カウリグカンパニーズ選手権
(●ファイアストーンCC/オハイオ州)
長年「シニアプレーヤーズ選手権」の名称で親しまれてきた大会。A・パーマーが大叩きしたことで知られる“モンスター”こと16番ホールを有するファイアストーンCCで開催される。昨年の優勝者はアーニー・エルス。

アーニー・エルス
昨年は藤田寛之が惜しくも2位●6月26~29日
全米シニアオープン
(●ブロードモアGC/コロラド州)
ツアーの全試合のなかで最も賞金額が大きく、優勝者には全米オープンの出場権が与えられるビッグトーナメント。昨年は、藤田寛之がプレーオフに敗れ惜しくも2位、全米プロシニアに続きリャード・ブランドが2冠を達成。

藤田寛之
2002年に須貝昇が優勝●7月24~27日
全英シニアオープン(●サニングデールGCオールドC(イングランド))
大会自体は1987年に始まったが、2003年からメジャートーナメントに昇格。2002年に須貝昇が制したものの、1年の差でメジャーチャンピオンになることはできなかった。昨季はK・Jことチェ・キョンジュが優勝。欧州シニアツアーに挑戦中の“ヨコシン”こと横田真一が目指している大会でもある。

須貝昇
18年連続で優勝している“鉄人”ベルンハルト・ランガー
2007年のシニアルーキーイヤーから18年連続で優勝、トータル47勝のツアー記録を持ち、今季も記録更新に期待がかかる。

米シニア最多47勝の67歳
シーズン | 賞金王 | 年間王者 |
---|---|---|
2024 | スティーブン・アルカー | スティーブン・アルカー |
2023 | スティーブ・ストリッカー | スティーブ・ストリッカー |
2022 | スティーブン・アルカー | スティーブン・アルカー |
20-21 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2019 | スコット・マッキャロン | スコット・マッキャロン |
2018 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2017 | ベルンハルト・ランガー | ケビン・サザーランド |
2016 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2015 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2014 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2013 | ベルンハルト・ランガー | ケニー・ペリー |
2012 | ベルンハルト・ランガー | トム・レーマン |
2011 | トム・レーマン | トム・レーマン |
2010 | ベルンハルト・ランガー | ベルンハルト・ランガー |
2009 | ベルンハルト・ランガー | ローレン・ロバーツ |
2008 | ベルンハルト・ランガー | ジェイ・ハース |
2007 | ジェイ・ハース | ローレン・ロバーツ |
2006 | ジェイ・ハース | ジェイ・ハース |
2005 | ダナ・クイグリー | トム・ワトソン |
2004 | クレイグ・スタドラー | ヘイル・アーウィン |
シニアツアー参戦の翌年に早速賞金王を取ると、2012年から7年連続で賞金王を獲得。賞金王と年間王者を6度も独占するなど、シニア界でもレジェンドに。20-21シーズンには64歳にして賞金王と年間王者2冠を達成するなどいくつになっても衰え知らずだ。
PHOTO/ Hiroaki Arihara、Blue Sky Photos、BKコーポレーション、Getty Images
※週刊ゴルフダイジェスト6月3日号「PGAツアーチャンピオンズ大研究」より一部加筆して掲載