スポーツ界には、運命の巡りあわせによってその時代の天才が同じ学校に集って黄金期を築くことがある。甲子園を沸かせたPL学園の桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」が活躍した同じ頃、日体荏原高校に3人のジュニアゴルファーが集まった。伊澤利光、丸山茂樹、そして「今回の連載」の主人公、西川哲である。全国高校団体優勝の主軸として活躍し、日体荏原黄金時代を築いたメンバーのひとり。個人でも関東高校3連覇、日本ジュニアのタイトルも手中に収め、プロ入り後もツアー3勝を挙げた。伊澤、丸山だけでなく、多くのプロゴルファーが一目置く「西川哲のゴルフ」。これまで多くを語らなかった西川だが、その内容は意外なものだった。

全身を使って打たなきゃ飛ばない

ラウンドデビューは北海道旅行の時だった。

「スコアは前半が62、後半は57の109でしたね。練習場以外で球を打てるという楽しさ半分と、もっとできると思っていた中でのこのスコアだったから悔しさもありましたよ」

そこから「もっと上手くなりたい、次にラウンドする時はもっといいスコアで回りたい」と練習に取り組む心境に変化があった。初ラウンドから半年後に100を切ることができた。

365日独学で練習を積み、メキメキと上達していった。ある時、父親の紹介で指導者と出会う。

「中学2年の時に芝ゴルフ練習場のレッスンプロを紹介されました。習った回数は高校生の時も含めて数える程でしたけど。でもその時に教わったことが、スウィングの基礎の部分で大切なことでした。特に体全体を使って球を打つという内容が印象に残っています」

現在、西川は自身が主宰しているスタジオでアマチュアの指導を行っている。その時に感じることは、全身を使ってスウィングできる人が少ないことだという。

「小学校6年間、野球と柔道をやっていました。体がもともと小さかったので大きな力を出すためには自然と全身を使って物を動かしたりする感覚がありました。それはゴルフも同じなんです。
 
しかし、アマチュアの方をレッスンするようになってから気づいたのは、特定の部位に頼って打とうとするんです。例えば力のある男性だと、腕っぷしだけでクラブを振ってしまうんです。それでは飛距離は出ないですし、再現性も低くなります。
 
下半身と上半身を捻って、下半身を先行させて上を少し我慢する。その『間』を作り出すことでエネルギーが生まれてスウィングになるんです」

画像: 切り返しで下半身を先行させながら、上半身がつられないように「遅らせる」のが重要だという

切り返しで下半身を先行させながら、上半身がつられないように「遅らせる」のが重要だという

西川が考えるスウィングの本質で、現在の指導でも伝えていることが、全身を使ってスウィングすること。小柄ながらもパーシモンと糸巻きボールで270ヤードを超える飛距離でビッグタイトルを獲得してきた。その原動力は全身を使ったスウィングにあった。

「技術的なことだけじゃなくて、誰にも負けたくない気持ちがあったし。飛距離だったら1ヤードも置いていかれたくないって思っていましたから」(西川)

それは伝説的な強さを誇り、後に日本プロゴルフ界で活躍する面々が揃っていた高校時代にルーツがあるようだ......。

つづく

※撮影協力/バーディ赤坂24

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