今週開催の国内男子ツアーの今季メジャー第2戦「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」。ツアー選手がその実力を競って優勝を争うメジャー大会だけに、その舞台となるのは難コースで知られる茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブ西コースだ。特に、優勝争いが佳境を迎える17番ホールは近年、“日本一難しいパー4”として知られる超難関ホールだ。この17番の難しさをプロに聞いてみた。
画像: 宍戸ヒルズCC西Cの17番。手前がグリーンで奥がティーイングエリア。ホールを逆から見ている写真になる

宍戸ヒルズCC西Cの17番。手前がグリーンで奥がティーイングエリア。ホールを逆から見ている写真になる

宍戸ヒルズCC西Cの17番ホールは481ヤード・パー4。フェアウェイの右サイドはOBで、グリーンの右手前には大きく池が迫り出している。昨年の大会の4日間の平均スコアは4.4323だった。

まずこのコースの難しさを、“日本一曲がらない男”の稲森佑貴に解説してもらおう。

画像: 9季連続でフェアウェイキープ率1位の“日本一曲がらない男”稲森佑貴(撮影/岡沢裕行)

9季連続でフェアウェイキープ率1位の“日本一曲がらない男”稲森佑貴(撮影/岡沢裕行)

「ティーショットの狙い目は、右サイドは危ないので基本はフェアウェイ左サイドなんですけど、でも距離がしっかり残るから2打目も油断できなくなります。僕は2打目は4Uになるので、ライも左足下がりっぽくなっているから、長いクラブだと右に行きやすい。グリーンの右手前に池があるので、気が抜けないですね。グリーンは右の池に傾斜が向かっていて速いので、上からのパターやアプローチはやりたくないという感じです。1番注意するのはティーショットで左サイドのフェアウェイをキープしたい。もしミスをしてラフに入ったり、距離が残ってセカンドショットが危ないとなったら、僕はボギー狙いで刻んじゃいますね。無理して狙って池に入っちゃうよりも、1打払ってでも確実にピンの手前に乗せたいというホールです」

日本一曲がらない男にして、ティーショットは要注意ということなのだ。では、この17番、世界レベル基準で見た場合の難度はどうなのか。DPワールドツアーを主戦場にする川村昌弘に聞いてみよう。

画像: DPワールドツアーでシード権を保持し続ける川村昌弘(撮影/姉崎正)

DPワールドツアーでシード権を保持し続ける川村昌弘(撮影/姉崎正)

ヨーロッパの難しいミドルホールと比べて、宍戸・西の17番の難しさはどこにあるのか。

「もちろんヨーロッパにも難しいパー4はたくさんありますけど、でも難しさが違いますよね。何より日本のゴルフ場の難しいのはグリーンが速いことです。宍戸の17番なんて、ピンが右手前に切ってあって、2打目を左奥に付けたら、3打目のパットがなかなか止まらない。ヨーロッパで『止まらない』とかってあまり無いんですよ。もちろんグリーン面が凄いコブで傾斜になっていて止まらないということはあっても、あんなになだらかで、あれだけのスピードが出るというグリーンって珍しいので、この17番はそこが難しいと思います」

なだらかに池に向かって下っている超速グリーンが難しさを生んでいると、川村。2018年のツアー選手権では、逆転でツアー初優勝を果たした市原弘大と、首位を走っていた時松源蔵が、この17番で明暗を分け、あまりにも有名な18番のドラマを演出したことは記憶に残るところ。振り返ってみよう。

画像: 18年の日本ゴルフツアー選手権で市原弘大がツアー初優勝を挙げた(撮影/姉崎正)

18年の日本ゴルフツアー選手権で市原弘大がツアー初優勝を挙げた(撮影/姉崎正)

時松は最終日、2位に3打差、優勝した市原とは5打差でスタート。時松が16番を終えた時点で2位の市原とは2打差あった。時松に当時の心境を聞いた。

「僕が17番のトンネルを潜る時に、凄い歓声が聞こえたんですよ。それで弘大さんがバーディを獲ったなと思って(この時点で差は1打に)。優勝争いをしていない普通のラウンドでも、あの17番は嫌ですからね。ティーショットがラフに行ったら1ペナみたいなもんですし、フェアウェイに行ったとしても右に迫り出した池があるので、ライによっては左足下がりで右の池にペロッと行く可能性がある。僕は2打目はロングアイアンになるので、キャリーと方向を合わせないといけないので、そこが1番難しい」(時松)

時松のティーショットは幸運にも左ラフからフェアウェイに出てくるが、2打目は残り210ヤード。本人が『そこが1番難しい』と言った2打目は、グリーン左奥へ。3打目は川村が『あれだけのスピードが出るというのは珍しい』というなだらかな傾斜の池に向かったパットを残してしまう。ファーストパットはカップをオーバーし反対のカラーに。パーを逃し、この時点で時松と市原は並び、最終ホールの18番で時松はボギーを叩き、市原に逆転優勝を許してしまう。

18番でグリーン奥のドロップエリアから劇的チップインバーディを決め、それが時松の17番、18番の連続ボギーを誘うプレッシャーを与える形になり、初優勝を果たした市原弘大。彼はあの17番をどうパーでやり過ごしたのか。次は市原に聞いた。

「まあ難しいですよね。ティーショットでは右側はOBだし、打ち直しも難しいから簡単にダボ、トリになっちゃう。といって左もラフにいくと前下がりが厳しいライになるので、そこから180、190ヤードでも池越えとなるとパー獲るのも難しい。助けてくれるものが何もない、パーを獲れればいいホールです。僕は、4日間で2回パーが獲れればいいかなって思うホールです。つまり、2回ボギーでも仕方ないなって思っています」(市原)

市原の3日目までの17番のスコアは、初日がボギーでそれ以外はパー。自身の計算では、最終日はボギーとなる公算が高かったのだが、結果はパーで凌いでいる。このホールが明暗を分ける演出をしたということである。

今年はどんなドラマがこの『日本一難しいパー4』で生まれるのか。プレーヤーにとっては厳しいだろうが、見る側にとっては楽しみな17番ホールである。

※2025年6月4日22時34分、一部加筆修正しました。

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