PGAツアーではもちろん、国内ツアーでも使用率ナンバーワンの座を不動のものにしつつあるタイトリスト「 GT」シリーズ。ドライバー、FW、UTとそれぞれに豊富なラインナップがあるが、選手たちはどのモデルをどんな理由で選んでいるのか。ツアーの現場で彼らの話を聞くと、GTのホントの性能が見えてきた。

「ドローでも安定してスピンが入る。これはGT1ならでは」(阿久津未来也)

【使用モデル】ドライバー:GT1(9度)、5UT:GT1(23度)

まずは、今年のミズノオープンでツアー初優勝を飾るとともに、全英オープンの出場権も獲得した阿久津未来也から取材開始。この調査を行ったのがミズノオープンの練習日で、実は本戦の直前までドライバーのヘッドの調整を続けていた。

画像: 阿久津未来也(30歳)。今年のミズノオープンでツアー初優勝を果たし、全英オープンへの初参戦を決めた

阿久津未来也(30歳)。今年のミズノオープンでツアー初優勝を果たし、全英オープンへの初参戦を決めた

「僕はそもそも球が高いほうではなく、スピン量も少なめなので、ドライバーは高弾道でスピンが適度に入るものを選びたい。なので、昨年の9月にGTのドライバーが出たときは、GT2のロフト11度のものにしました」

しかし今年に入って新登場したGT1を試すと、それ以上の感触を得たという。

「1発目から印象が良くて。GT1はGT2より球が上がりやすいヘッドなので9度を打ったのですが、9度とは思えないつかまりの良さ。僕はドローが持ち球なんですが、それでも適度にスピンが入る。つかまって上がるから“これはいけるぞ”と。ドローヒッターは右に滑るミスが嫌なんですが、それが出ないのでどんどん気持ちよく振れて、結果的にヘッドスピードも上がって飛ぶようにもなりました。ただシーズンインしてクラブが振れてくると、GT1だと上がりすぎる気もしたので、今回GT2と打ち比べましたが、やっぱりGT1のほうが結果がいい。自分にはこっちが合っていると確信しました」

画像: 「GTシリーズはTSRシリーズと比べて、ボール初速が1m/s以上速くなっています」(阿久津)

「GTシリーズはTSRシリーズと比べて、ボール初速が1m/s以上速くなっています」(阿久津)

その判断が当たり、見事初優勝につなげた阿久津。そしてUTもGT2からGT1に替えて扱いやすくなったという。

「これもドライバーと同じで、上がりやすくてつかまりが良かったので、GT1にスイッチしました。形状は9番ウッドのように大きめでミスにも強く、それでいて操作もできる。かなり完成度が高いUTだと思います」

「GT1で飛ぶようになったし、どんな条件下でも安心できる」(米澤蓮)

【使用モデル】ドライバー:GT1(9度)、FW:GT1(14.5度)、FW:GT1(18度)

ツアー2勝、BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップでも優勝争いを演じた米澤蓮。彼はドライバー、そしてFW2本を「GT1」で固める。

画像: 米澤蓮(25歳)。昨年2勝を挙げ、賞金ランキング12位。若手を代表する実力者の一人

米澤蓮(25歳)。昨年2勝を挙げ、賞金ランキング12位。若手を代表する実力者の一人

「昨年はGT2の11度を使って十分満足していました。でも冬の間にカールスバッド(アクシネット ゴルフクラブ 本社)でフィッティングする機会があって、そこでGT1を初めて打ってみるとこれが良かった。アメリカのフィッティングでは、弾道の最高到達点が105フィートというのが一つの指標なんですが、GT1だとそれをクリアして実際飛距離も出ていました。
 
最近はクラブもボールもスピンが入らない方向に進んでいますが、僕がもともとスピンが少なめということもあって、たまに右に滑る球が出ることがあるんです。でもGT1は適度にスピンが入って右に滑らず、打球が安定するのも大きなメリット。ゴルフはいろんな条件下でプレーしますよね。特に雨の日とかだと、スピン量が足らなくて球が右に滑るドライバーだとちょっと不安になるんですが、GT1だとそれがないのも大きいですね」

画像: 「GT1はヒールヒットにも強い。芯の広さを感じます」(米澤)

「GT1はヒールヒットにも強い。芯の広さを感じます」(米澤)

逆にスピンが増えてしまうと、風の影響を受けやすくはならないのだろうか。

「スピンが入るものは減らして打つことができますから問題ありませんが、その逆は難しいんです。でもGT1なら、僕が基準とするドライバーでキャリー285ヤードを安定して出せる。ヘッドは最初大きいなと思いましたが、すぐに慣れました。それよりも結果重視です」

ドライバーの流れをくんで、FWもGT1にスイッチした。

画像: ドライバー、FWをGT1で統一。「FWはグリーンで止まってくれるものを選びます」(米澤)

ドライバー、FWをGT1で統一。「FWはグリーンで止まってくれるものを選びます」(米澤)

「FWを選ぶ基準は、地面から打った時にしっかりスピンが入って球が上がってくれること。そこにGT1はぴったり当てはまります。その中でも3Wに関しては、ロフト15度だと球が上に行く感じが強かったので、14.5度のヘッドを用意してもらいました。結果、球の高さは確保しつつ、強く前にも飛ぶ弾道に。これもかなり気に入っています」

「GT280(ミニドライバー)、正直めちゃくちゃいい」(勝俣陵)

【使用モデル】ドライバー:GT1(9度)、ミニドライバー:GT280(13度)、4UT:GT1(20度)

初優勝が待たれる勝俣陵もドライバーは「GT1」。男子プロでもやさしいGT1を選ぶ選手が少なくない。

画像: 勝俣陵(29歳)。大きな飛距離と高いパーオン率でスコアを作る

勝俣陵(29歳)。大きな飛距離と高いパーオン率でスコアを作る

「GT1はGTシリーズの中で一番重心が深くて、僕にとって扱いやすいんです。僕自身がスピン量が少ないこともあって、適度にスピンが入ってくれるGT1がフィットしました。キャリーが伸びて、曲がり幅も減ったので300ヤードを安定して飛ばせるようになりました」

どうやら“持ちスピン量”が少なめの選手が、GT1にスイッチするケースが多いようだ。そして勝俣のGTセレクトで気になるのがミニドライバーの「GT280」だ。

画像: 勝俣が愛用するGT280。ウェイトは前3g、後ろ11gで球が上がりやすい設定

勝俣が愛用するGT280。ウェイトは前3g、後ろ11gで球が上がりやすい設定

「前澤杯で近藤智弘プロと回った時に、他のメーカーだったんですがミニドライバーを多用されていて。それがすごくよさそうだったので、翌週の中日クラウンズからGT280を使い始めました。本当に使い勝手がいいですよ。フェアウェイからでもスピンが入ってボールはしっかり上がるので、パー5での2オンが高確率で狙えるようになりました。もちろんティーショットでの刻みでも使います。270ヤードをより正確に打っていけるのでコースマネジメントの幅が広がりました。ドライバーとFWのいいとこ取りをしたようなクラブだと思います」

画像: ミニドライバーのGT280の飛距離は約270Y。「ヘッドが小さくても難しさは一切ありません」(勝俣)

ミニドライバーのGT280の飛距離は約270Y。「ヘッドが小さくても難しさは一切ありません」(勝俣)

ミニドライバーの下は4UT(20度)。こちらもGT1をチョイスしている。

「ヘッドが大きくて安心感がありますし、ソール幅が広いので滑ってミスを緩和してくれます。ドライバー同様、しっかりスピンが入って高く上がるので変に飛びすぎないのもいい。それでいて前にも行ってくれる飛び方をするので、縦の距離が合います。飛距離は245ヤードが目安。ミニドライバーとは少し間隔が空きますが、この間の距離(245~270ヤード)を求められるケースってあまりないので、現状これで問題は感じていません」

「300Yを上下左右に打ち分けたい。GT3はそれができる」(岩﨑亜久竜)

【使用モデル】ドライバー:GT3(10度)

2023年日本オープンチャンピオンの岩﨑亜久竜は、今年からGTのドライバーにスイッチ。使用モデルは、抜群の操作性を持つ「GT3」だ。

画像: 岩﨑亜久竜(27歳)。2023年日本オープン、2024年ANAオープンで優勝。スケールの大きなゴルフが魅力

岩﨑亜久竜(27歳)。2023年日本オープン、2024年ANAオープンで優勝。スケールの大きなゴルフが魅力

「僕がドライバーに求めることは、操作性が高くて飛距離が出ること。コントロールはそれこそ上下左右にしたいし、飛距離は300ヤードほしい。その2つの点をクリアするGT3には、まったく不満がありません」

岩﨑は大きな慣性モーメントのドライバーの特徴であるヘッドの安定した挙動、言い換えればヘッドを動かしにくい点に、使いづらさを感じるのだという。

画像: 使い込まれた岩﨑のGT3。ちなみにウェイトはブルー(12g)で通常より4g重く調整

使い込まれた岩﨑のGT3。ちなみにウェイトはブルー(12g)で通常より4g重く調整

「基本的に重心が深くないドライバーが好きなんです。そのほうが球をコントロールしやすいので。僕は真っすぐ飛ばしてフェアウェイをキープするのではなく、球を操作して狙っていくタイプ。GT3は感覚通りに操れるので、今年はフェアウェイキープ率もかなり改善されています(フェアウェイキープ率 24位[昨年84位]・トータルドライビング 1位[昨年59位T)」[2025年のデータは6/10現在]

画像: 意のままに曲げることでフェアウェイをとらえていく岩﨑。GT3のような操作性に優れるドライバーがマッチする]

意のままに曲げることでフェアウェイをとらえていく岩﨑。GT3のような操作性に優れるドライバーがマッチする]

取材時は入っていなかったが、通常はGT3のFW(18度)をバッグインする。

「ドライバーと同じで、やや小ぶりに見えて操作性があるものが好みです。フェアウェイだけじゃなくて深いラフや傾斜でも打てる、飛距離よりもとにかく“何でもできるもの”を使いたい。ある意味UT的なFWがいいですね。その点でGT3を選びました」

「ドライバーには“やさしさ”、FWには“球の強さ”がほしかった」(鈴木晃祐)

【使用モデル】ドライバー:GT2(10度)、FW:GT3(16.5度)、4UT:GT2(21度)

学生時代から頭角を現し、ツアー優勝まであと一歩に迫っている鈴木晃祐。ドライバーは「GT2」を愛用する。

画像: 鈴木晃祐(24歳)。安定感のあるドライバーとアイアンショットの正確さはプロ仲間も一目置く

鈴木晃祐(24歳)。安定感のあるドライバーとアイアンショットの正確さはプロ仲間も一目置く

「TSシリーズでずっと2を使っていて、GTでもGT2を使っています。もちろんGT3も試しました。でも僕にはスピンが少し足りなかったですね。理想はスピン量2700~2800回転/分くらい。ちょっと多いと思うかもしれませんが、それぐらいが持ち球のフェードとマッチして安定して飛ばせます。GT3だと2200回転/分前後。これぐらいだと、僕はスピンが少なかったり逆に増えたりとムラが出る。なのでGT2の2000回転/分後半がちょうどいいんです」

画像: 「低めの球が好み」という鈴木は、すべてロフトを0.75度立てて使っている

「低めの球が好み」という鈴木は、すべてロフトを0.75度立てて使っている

一方、FWは「GT3」、UTは「GT2」と複数のモデルをブレンドしている。

「GT2のFWもいいんですが、こちらは僕が打つとスピンが多めに入って球が上がりすぎる感じがありました。距離はほしい、でもグリーンにも止めたい。その両方を兼ね備えていたのがGT3でした(16.5度を0.75度立てて使用)。高すぎない好みの弾道で飛んで、でもグリーンに止まるだけの高さは出ます。GT2の4UTはキャリー230ヤード。これはパー5で2オンを狙った時にしっかり止まる弾道が必要。その点でGT2を使っています」

画像: GT3のFWで250~260Yを打つという鈴木。「上がるだけではなく、前に飛ぶ球の強さも欲しい」

GT3のFWで250~260Yを打つという鈴木。「上がるだけではなく、前に飛ぶ球の強さも欲しい」

「UTは高弾道で止めたいからドライバーとは違うGT2に」(前田光史朗)

【使用モデル】ドライバー:GT3(10度)、3UT:GT2(18度)、5UT:GT2(24度)

着実にステップアップを果たし、昨年は日本シリーズ初出場も果たした前田光史朗。彼も初優勝に近い一人だ。使用ドライバーは岩﨑亜久竜と同じGT3の10度。

画像: 前田光史朗(24歳)。近年伸び盛りの若手。GT3ドライバーで飛距離を大幅に伸ばしている

前田光史朗(24歳)。近年伸び盛りの若手。GT3ドライバーで飛距離を大幅に伸ばしている

「僕はもともとスピン量が多いタイプなので、自分の理想とする2100~2300回転/分で打てるものを選びたい。さまざま試した結果、GT3の10度がピッタリはまりました。飛距離もTSR3に比べてキャリーで5ヤードは伸びています」

前田にとってスピン量は大きな要素だが、それ以外にもGT3を選択する理由がある。

画像: GTシリーズのドライバーに替えてキャリーが5ヤード伸びたという前田

GTシリーズのドライバーに替えてキャリーが5ヤード伸びたという前田

「見た目ですね。小ぶりなものが好きなんです。それは球を曲げて打っていきたいということにも関係していると思います」

UTはGT3ではなくGT2を選択している。

「GT3のUTはアイアン的な雰囲気。それはそれでいいんですが、僕的には球が強くなってしまうイメージなんです。UTはグリーンに止めたいので、形状的にも上がる印象のものを使いたい。GT2のUTは、つかまえにいけば飛距離が出るし、少し逃がし気味に打てばボールが浮く。本当に使い勝手がいいんです。ちなみにGT1も楽に上がるのに吹き上がらないすごくいいUTなんですが、入れたいロフトがなかったのでGT2に落ち着きました」

画像: 3UT(18度)を0.75度寝かせて18.75度、5UT(24度)は0.75度立てて23.25度に調整。3UTはさらにアップライトなポジションにしてつかまりもサポート

3UT(18度)を0.75度寝かせて18.75度、5UT(24度)は0.75度立てて23.25度に調整。3UTはさらにアップライトなポジションにしてつかまりもサポート

今回、人気のGTを題材に、男子プロのドライバー、FW、UTのモデル選びを見てきたが、ヘッドスピード50m/sを超えるような男子プロでも、やさしいとされるGT1を使うなど、さまざまな発見があった調査となった。

プロは、やさしいとかシビアとかではなく、自分の求める弾道を実現するためにどのモデルが適しているのか、ひいてはどれを使うことで“スコアアップ”できるのかということだけにフォーカスしてクラブを選んでいる。

固定観念にとらわれない男子プロのクラブ選びは、我々にも大いに参考になるはずだ。

PHOTO/Tsukasa Kobayashi
取材トーナメント/〜全英への道〜ミズノオープン

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