今季、坂詰和久コーチ(ニックネームは、わきゅう)の契約選手たちが大活躍している。前編では、Sky RKBレディスで優勝を果たした神谷そらプロの指導法を聞いたが、後編では、リゾートトラスト レディスでツアー初優勝を遂げた稲垣那奈子プロについて聞いていくことにしよう。

▶▶▶「契約選手が次々に大活躍、わきゅうコーチのレッスン法とは?【神谷そら編】」を読む

画像: 坂詰和久コーチ

坂詰和久コーチ

坂詰和久 

さかづめ・かずひさ。女子ツアーを中心にティーチング活動を行っているプロコーチ。TPIメソッドを基本としたレッスンを展開しており、現在、渡邉彩香、神谷そら、稲垣那奈子、宮田成華らのコーチを務める。2024年レッスン・オブ・ザ・イヤー。

画像: リゾートトラスト レディスで優勝した稲垣那奈子。大学時代から坂詰和久コーチに師事(撮影/大澤進二)

リゾートトラスト レディスで優勝した稲垣那奈子。大学時代から坂詰和久コーチに師事(撮影/大澤進二)

――今回は、5月に行われたリゾートトラスト レディスでツアー初優勝を果たした稲垣那奈子プロについて伺いたいと思います。稲垣プロはいつ頃から教えているのですか?

わきゅう(以下 わ): 22年の5月からですね。お世話になっているプロに頼まれて教えるようになりました。そのとき、彼女はまだ早稲田大学の学生で、23年のプロテストに合格してプロになった、という感じです。

――アマチュア時代から見ているんですね。どんな指導をしてきたのですか?

: 当時、彼女はナショナルチームのメンバーで、球を打つのは上手かったんですが、女性特有のゆるみがあり、重心が浮いて、体をしっかりと使い切れない傾向がありました。だから、シャドースウィングや素振りでムダな動きを抑えつつ、下半身で打つ感覚を徹底して指導しました。

――今回の優勝はどんなところがよかったのでしょう?

: いちばんよかったのは、感情のコントロールができたことじゃないでしょうか。彼女は心配症なところがあって、プレッシャーがかかったり追い込まれたりすると焦るクセがあるんです。でも、今シーズンからハウスキャディではなくプロキャディをつけるようになって、落ち着いたプレーができるようになったんですよ。

――技術面より精神面が安定したことが結果につながったわけですね。

: そこが大きかったと思います。彼女のいちばんの長所は球が曲がらないことにあります。飛距離は平均的なのですが、とにかく曲がらない。ただ、今回のリゾートトラストが行われたコースは、海が近いこともあって、ものすごく風が強かった。風が強ければ、どんな選手でもいつもより球は曲がるし、思わぬミスも出ます。そういうミスを受け入れて耐えしのぐためには、技術だけでなく、精神面の安定が大事なんです。

――それは、アマチュアゴルファーにも同じことが言えそうですね。

: そうですね。アマチュアゴルファーのほうが技術偏重というか、単純にショットがよくなればスコアがアップすると考えている人が多いですからね。でも、正直に言って、ちょっとくらいショットがよくなっても、スコアはそれほど変わりません。スコアをアップさせるためには、ショートゲームやマネジメント、感情のコントロールのほうが大事だったりするわけです。ゴルフが上手くなりたいのであったら、そういうところにも目が向けられるようになるといいですよね。

――プロキャディの経験のある、わきゅうコーチらしい考え方ですね。

: ははは。そうかもしれませんね。スウィングの重要性なんて、ゴルフ全体の2割くらいにすぎません。技術は大事だけれど、それ以外の部分がとても大きいということを知ってもらいたいですね。

――稲垣プロは、今後も期待できそうですか?

: とにかく、彼女はゴルフに対する向き合い方がとてもいいんです。よく、プロコーチに教わったらそれだけで上手くなると思っている人がいるんですが、そうとは限らないわけです。ゴルフに限らず、言われたことを仕方なくやっていても身になりませんからね。
 
その点、稲垣プロは、自分がやりたいことに対して何が足りないのか、自分のやり方は合っているのか、どうしたらできるようになるのかを、向こうからぶつけてくるんです。そうやって、自分で目標を持って、問題点を見つけて、自分の力で解決しようとする選手なので、まだまだ上手くなれるんじゃないでしょうか。

リゾートトラスト レディスで初優勝した稲垣那奈子

This article is a sponsored article by
''.