テーラーメイド「SIM2 MAX」のシャフトマッチング
2020年に誕生したSIMの後継モデルとして2021年に発売されたテーラーメイド「SIM2 MAXドライバー」はテーラーメイド最後のチタンフェースモデルとして発売から4年以上経った現在も多くのゴルファーに愛用されている名ヘッドです。発売当時、SIM2 ・SIM2 MAX ・SIM2 MAX-Dと3機種のヘッドが用意されていましたが、今回はコアモデルの「SIM2 MAX」のヘッドにフォーカスして、ヘッドスピード(40~45m /s)のアスリートゴルファーがさらにパフォーマンスアップするシャフトチューニングを考えていきたいと思います。

SIM2は「SHAPE IN MOTION」の頭文字のS・ I ・Mと2代目を表す「2」を組み合わせたネーミング
シャフトマッチングを検証するにあたり改めてテーラーメイド「SIM 2 MAX」のヘッドをチェックしましょう。
フェースはスイートエリアを広くしながらも反発性能に優れた、スピードインジェクション搭載のツイストチタンフェースです。クラウン部分とソール部分にはカーボンを採用しています。特にソールにカーボンを採用したことによる軽量設計がエアロダイナミクス設計にも貢献しています。
ソール形状はスウィングプレーンに合わせて考えられていて、スウィング中の空気抵抗を可能な限り減らす空気特性になっていることで気持ち良いスピード感で振り抜きが可能なヘッドです。ソール後方のバックウェイトは24グラムを搭載していることで、インパクト時にボールを押し込むエネルギーを増幅してくれています。
現在も「SIM 2 MAX」を気に入ってお使いの方はクラブ競技などにもエントリーするアスリートゴルファーの方が多いと思います。
3つのチューニングポイント
私が考えるテーラーメイド「SIM2MAX」のシャフトチューニングポイントは3つです。
1、ボールのつかまりとバックスピン量の低減の両立
2、弾道の高さを抑えて直進性能の向上
3、ヘッドスピードアップとボールスピードの向上
3つのポイントを抑えながらも発売から4年経っているので、既に色々なモデルのシャフトを試されているアスリートゴルファーの方々も多いと思います。今回はまだあまり知られていないシャフトで「SIM2 MAX」をパフォーマンスアップできるシャフトをピックアップしてマッチングを考えました。

「SIM2 MAX」をパフォーマンスアップできるシャフト
1、ボールのつかまりとバックスピン量の低減を両立できるシャフトマッチング
「SIM 2 MAX ドライバー」のエアロダイナミクス設計によるヘッドの振り抜きの良さとチタンフェースの打球感の良さを気に入って使用されている方が多いと思いますが、インパクト時にややフェースがオープンアングルでインパクトを迎える方もいらっしゃいます。フェースが開いた状態のインパクトはバックスピン量が多くなり、打ち出しも高くなりがちです。そのような方が理想的なスクエアインパクトにヘッドを導きやすく、アスリートゴルファーが求めるボールのつかまり感とバックスピン量の低減を両立しやすい「SIM2 MAX」とのマッチングの良いシャフトを選びました。
それは「ALDILA ROGUE インフィニティ」です。
ALDILA社は現在三菱ケミカルグループの傘下に入っていて、ALDILA ROGUE インフィニティは同社の「テンセイ」「ディアマナ」に並ぶプロ・アスリート用のブランドです。三菱ケミカルの持つ高品質のマテリアルと高い技術力で作られた2023年2月発売の名シャフトです。
ALDILAブランドとしては始めて全長に超高弾性80tカーボンファイバーを採用したアスリートモデルのシャフトです。ヘッドスピード40~45m /sくらいのアスリートゴルファーにオススメのスペックは「50 TS」。58.5グラムの中調子のシャフトですが、高弾性シートを採用しアスリートモデルらしく手元剛性は高めです。

「ALDILA ROGUE インフィニティ」はカウンターバランス設計でボールを押して前へ運んでくれる
しっかりとした強めの切り返しでもレスポンスの良さを感じられ、シャフト全体のしなりとカウンターバランス設計によるスピード感があります。全長に採用した超高弾性80tシート採用のシャフトですが、コントロール性能も良く、中間部分から先端部分にかけてはやや動いてくれるシャフト挙動ですので、「SIM2 MAX」でややフェースが開き気味のインパクトの方でもフェースが開いて当たるのを防いでくれると思います。
インパクト時にはボールを弾くのではなく、「SIM2 MAX」のチタンフェースにしっかりと押し込んでくれるような厚いインパクトイメージですので、ボールの高さを抑えられバックスピン量も低減しやすく飛距離アップも期待できると思います。
「ALDILA ROGUE インフィニティ」は再現性の高いインパクトで着弾エリアでのばらつきが少ないのも特長ですので、コースでの結果を重視するアスリートゴルファーにオススメのシャフトです。
是非試して欲しいシャフトです。
ALDILA ROGUEインフィニティー 50 TS
長さ | 振動数 |
45.5インチ | 262cpm |
2、弾道を抑えた直進性能の向上
「SIM2 MAX」をお使いの方でボールの弾道の高さが気になるという方が多くいらっしゃる印象ですが、理想的な打ち出し角度よりも高い打ち出し角度は着弾時にランが出にくく飛距離ロスにも繋がります。弾道の高さを抑えることでボールに推進力を与えることで効率良くパフォーマンスアップさせるマッチングシャフトを考えました。
このクラスのシャフトの候補は多く存在しているのでチョイスするのに悩みましたが、発売から日が浅く、試した方が少ないと思うシャフトをピックアップさせて頂きました。
それは「HZRDUS GEN5 BLACK 60(ハザーダス ジェン5 ブラック60)」です。
TRUE TEMPER GOLF(トゥルーテンパーゴルフ)から2025年5月16日に発売された新製品です。トゥルーテンパーゴルフはスチールシャフトの代名詞のダイナミックゴールドやPROJECT X ・Steel Fiber(プロジェクトX・スチールファイバー)ブランド等を有するゴルフシャフトの世界トップメーカーです。

「HZRDUS GEN5 BLACK 60」は低スピンかつ弾道を抑えられる
HZRDUS(ハザーダス)のネーミングはご存じの方もいらっしゃると思いますが、 ハザーダスはプロジェクトX のグラファイトシャフトシリーズになります。ハザーダスブラックは初代モデルの発売から10年が経過し、ハザーダス ジェン5 ブラックは5代目のモデルとなります。
PGA TOURプレーヤーからの要望に応える形でブラッシュアップされた「ハザーダス ジェン5 ブラック」から今回のコラムのテーマに合わせてお選びさせて頂いたシャフトスペックは「W55」です。55はシャフト重量ではなく、プロジェクトXのスチールシャフトのフレックス表記と同じシャフトフレックス5.5 を意味します。実際のシャフト重量は65グラム、トルク3.5の元調子です。
ハザーダス ブラックの65グラムだと重くてハードなのでは? と思う方も多いと思います。私もテストするまではそのように思っていましたが、5.5は「SIM2 MAX」のヘッドに装着した際のシャフト振動数は248cpmで実際に打ってみるとイメージとは違い意外と扱いやすい印象に変わりました。
ハザーダス ブラックらしさを感じる手元側の剛性感は硬くしっかりとしていているものの、GEN5はただ硬いだけでのシャフトではありません。元調子設計で硬さの中に感じられる間の取りやすさはアスリートゴルファー向けのシャフトらしく、切り返ししにくい印象はありません。
ダウンスウィングから意外とオートマチックに切り返しができるスッキリとしたアスリートモデルです。中間部分のほどよいしなりがシャフトのパワーを生み出し、先端部分にシャフトのパワーを伝えてくれます。プレーヤーが振れば振っただけエネルギーがインパクトでボールにしっかりと伝わるアスリートモデルらしいシャフトです。
やや弾道の高さが出る「SIM2 MAX」のヘッドでも打ち出し角度はやや抑えられ、硬めの先端部分の剛性設計がハードなインパクトでもバックスピンを抑えられます。ブレの無い強い弾道は明らかに弾道に違いを感じてもらえるでしょう。強靭さの中に感じられる操作性の良さはアスリートゴルファーが求めるニーズを満たし、「SIM2 MAX」にボールの推進力を与えてくれ飛距離アップが期待できるシャフトマッチングだと思います。
アスリート系のシャフトユーザーの新しい選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?
HZRDUS GEN5 BLACK60 (5.5)
長さ | 振動数 |
45.5インチ | 248cpm |
3、ヘッドスピードアップとボールスピードの向上
「SIM2 MAX」のヘッドを更なるパフォーマンスさせるためにカスタム系シャフトメーカーからもピックアップさせて頂きました。それは「コンポジットテクノ社 ファイアーエクスプレスMX-P#(エム・エックス・ピー シャープ)」です。
コンポジットテクノ社は優れたパフォーマンスのシャフトをラインナップに持つ老舗のカスタムシャフトメーカーとしてシャフトに造詣の深いゴルファーに知られています。主にゴルフ工房で取り扱いされているのでシャフトに拘りのある「SIM2 MAX」ユーザーの中には知っている方も多くいるのではないでしょうか。今回ピックアップしたMX-P #は2023年の秋に高強度高弾性のカーボンシートを贅沢に使用して作られた飛距離性能の高いシャフトとして発売されたモデルです。
本格的なハードスペックのアスリートモデルのシャフトに比べて手元側の剛性は高すぎず切り返しのしやすさを感じられるシャフトです。手元側の剛性が高く、硬いシャフトだと切り返ししにくいと感じるアスリートゴルファーにもスムーズでオートマチックな切り返しとスピード感のあるシャフトフィーリングを与えてくれるシャフトです。

「MX-P#」は2カラー展開。写真上がレギュラーカラー、下がブラックエディション仕様
MX-P#は飛距離性能が高いシャフトですが、「SIM2 MAX」のヘッドを使っているアスリートゴルファーの方だとドライバーショットの安定性がスコアに直結することで安定性を気にされる方が多いと思います。ファイアーエクスプレスMX-P#はアスリートゴルファーの求める飛距離性能と安定性能のどちらも高い次元で両立しているシャフトです。
今回のコラムのテーマに沿って選んだスペックは「MX-P# 5(S)」。シャフト重量58グラムの中調子のシャフトで、トップからダウンスウィング時にスムーズに切り返しができ、シャフト中間部分で溜まったパワーを先端部分に伝えてくれ、パワーをキープしたままインパクトを迎えます。
インパクトを点でイメージするよりもインパクトエリアを振り抜くイメージで振ればフェースでボールをしっかりと弾き飛ばしてくれ、スピード感をキープしたままフィニッシュまで振り抜ける爽快感があります。インパクトエリアでのスピード感があるシャフトだと挙動が不安定になりやすく、インパクト時のミート率が心配だと思う方もいると思いますが、ファイアーエクスプレスMX-P#にその心配はいらないと言っても良いでしょう。
インパクトエリアでのシャフト挙動はスピード感をキープしたまま安定している感覚はあまりないフィーリングのシャフトです。弾道測定器でチェックすればいつもより速いスウィングスピードと高いボールスピードの数値が出る方も多いと思います。その数値がマッチングパフォーマンスを証明してくれるでしょう。
爽快感のある振り心地は「SHAPE IN MOTION」がコンセプトの「SIM2 MAX」とのヘッドマッチングにより一層感じられると思います。ヘッドスピードアップとミート率の向上による飛距離アップが可能なマッチングは飛距離と方向性をどちらも犠牲にしたくないアスリートゴルファーにオススメのシャフトです。気になった方は是非試してみて下さい。
ファイアーエクスプレスMX-P# 5S
長さ | 振動数 |
45.5インチ | 256cpm |