▶ゴルフ界における女性の地位向上への活動とは
イベント参加者のアンケートには『ゴルフを始めるきっかけを探していた』『参加したイベントでゴルフ友達ができた』『こういう取り組みをもっと続けてほしい』との声多数。
「移動手段や経済面など、ゴルフはハードルが高いスポーツというイメージもあるので、一緒にやろうと誘い合うことが重要。その場を作っていきたいと考えています。ゴルフは遅くから始めても誰でも上達できるスポーツですし」(JGAゴルフ振興推進本部「女性とゴルフ部会」の部会長・吉村佐喜子氏・以下同)
実際、参加する女性は40代以上が多いという。若者への取り組みはもちろん、シニア女性層への働きかけも必須だ。
「知人の女性は60歳からゴルフを始めご夫婦で楽しんでいます。ゴルフを始めてすぐ息子さんが深刻なご病気になり、大変落ち込んだ日々でしたが、病院へのお見舞いの帰りに時々9ホールだけご夫婦でゴルフをして帰ることで精神を保つことができ、ゴルフに感謝しているとおっしゃっています」

東京のハイランドセンターでの未経験者、初心者向けレッスン会。ショートコース併設の練習場で芝から打つ楽しさを知ってもらう。1人でも友達と一緒でも参加でき、二の足を踏んでいる人がきっかけをつかむには絶好の機会だ
女性の人生には、多くの選択がある。そのとき、ゴルフを排除せず、傍らに置いておいてほしい。
「仕事、結婚、出産、子育て、介護、病気など。女性に限らずいつもゴルフができる環境にいられるとは限りません。でも、ゴルフは人生を豊かにしてくれるスポーツだと思います。私自身、18歳でゴルフを始め、真剣に競技ゴルフをしていましたが、特に子育ての時期はできなくなった。それは仕方ないことでもありますけど、いつでも再開できるのもまた、ゴルフのよさ。そのための環境を整えることも私たちの目標の1つです。これからもゴルフ振興推進本部の『ゴルフと健康部会』(ゴルフを通して国民の健康に寄与していく)、『情報シェアリング部会』、『政策部会』とも協力しながら活動を広げていきたいです」

サントリーレディスなどJLPGAツアー会場にて、PR活動や女性向けレッスン会を開催。女性のプロによるレッスンを希望する声も多い
ゴルフが女性の人生を豊かにするのみならず、共生社会の推進、健康寿命延伸のためにも一役買う存在になるといい。ゴルフは社会を変える存在になり得ると信じて。改めて、ゴルフの魅力を吉村氏に聞いてみた。
「老若男女が共に楽しめる、生涯楽しめる、体力のない方もできる、自然の中で非日常を味わえる、違うレベルの人と競技ができたり一緒にプレーすることができる数少ないスポーツ、社交的になれる、初対面の人とでも仲良くなれる、日頃できないファッションを楽しめる、人との縁が広がる、一生の友達が見つかる、すべて自己責任で他人のせいにできない……ありすぎてまとまりませんね(笑)」
WGNは、皆でゴルフの魅力を見出し、「ゴルフは楽しい!」の想いを増やしていく活動なのかも
しれない。
“家族ラウンド”も楽しむ競技女子アマ 「いろいろな人とつながれるスポーツです!」
長田紫野香さん(2024年日本女子ミッドアマチュアゴルフ選手権優勝)
昨年、8度目の挑戦で女子ミッドアマの覇者となった長田さん。ゴルフを始めたのは両親の影響。
「練習場に連れて行かれたんです。最初は楽しくなくて、ゲームばかりして。小2くらいから真剣に始め、小6で試合に出始めました。だんだん楽しくなりましたが、中学で一度やめてソフトテニス部に。皆との部活が楽しかったんです」
1年でゴルフを再開。大学でプロへの道を意識し始め、卒業後3回受験するも断念。しかし、競技は続けたかった。25歳から出られる女子ミッドに挑戦するようになる。
「試合が好きなんでしょうね。やっぱり1番になると嬉しいですよ。仕事場でも練習はできるし、兄がプロゴルファーとして働く練習場にもよく行きます」。
ゴルフ一家――今もときどき4人でラウンドする。両親はゴルフの会話ができることが嬉しそうだ。女子ミッドアマはいろいろな職業・世代の女性が参加する。
「皆仲良く、友達を増やしながら和気あいあいと頑張っている感じです。ギスギスはしてないですよ。年上の方もよくしてくださるし、インスタをやっている人が多いので、そこでつながったり。レベルは高い。50代の方でも優勝争いしてくるし、若い選手も増えました」。
競技を基準に生活していると笑う。練習場は多くて週5回、ラウンドは週1回。キャディの仕事は自身の上達にも役立つそうだ。
「スウィング面でも盗めるものがありますし、お客さんのメンタルを感じながら、よいほうへ誘導することも仕事ですから。でもそれが自分にも返ってくるんです」
ゴルフはずっと続けたいと思っている。
「競技も続けたい。シニアになってからでもいいですよね。女性がゴルフを続ける大変さは、お金と家族の理解にあるのかな。でも周りに旦那さんと一緒にやる方もいますし、子どもができたら親の協力が必要だから……うちの両親には預かってもらえるはず(笑)。ゴルフはどんな世代でも一緒にできるスポーツ。そしていろいろな人とつながれます。普通なら縁がない社長さんなどとも話せて人生の勉強にもなる。ゴルフはいつ始めても楽しめるし、上手くなれます。私の母も父がやっていたから始めたんですよ。もちろん私たちが子どもの頃は経済的なこともありあまりできなかった。その反動で今、2人で週1回ラウンドしています。今や父より上手です(笑)。2人でガチの勝負をしています」。
ゴルフが生活の中にあるチャンピオン。今後の人生でも傍らにあり続けそうだ。

長田紫野香さん
PHOTO/ Hiroyuki Okazawa、日本ゴルフ協会
※週刊ゴルフダイジェスト6月24日号「ゴルフの多様性を女性から発信」より一部抜粋