ケガの影響でシーズン序盤は、やや出遅れたスコッティ・シェフラーですが、3月末以降はメジャー2戦目の全米プロも含め3勝、7試合連続トップ8入りと世界ランクナンバー1の実力を存分に発揮しています。最大のライバルであるローリー・マキロイは今季自身の初戦となったAT&Tペブルビーチプロアマでいきなり優勝すると、第5のメジャー、ザ・プレーヤーズ選手権を制覇。マスターズでは遂に念願だったキャリアグランドスラムを達成し、10年以上続いたメジャー無冠を返上。人生最良の日を迎えました。
ところが、これまでに4勝を挙げている得意のクエイルホロークラブが舞台だった全米プロでは、メジャー連勝を期待されながら47位タイと惨敗しました。マスターズ以降の4試合でトップ10は1回だけ。過去2勝と相性の良いRBCカナディアンオープンではカットラインに10打以上足りず、昨年の全英オープン以来の予選落ちを喫したのです。上昇気流に乗るシェフラーと下降線をたどるマキロイ。なぜそのような事態に陥ったのでしょう? その答えらしきものをマキロイ本人が全米オープン前の記者会見で語っています。
両肩に重くのしかかっていたキャリアグランドスラムという命題。その重荷をマスターズで下ろしたことで今後のビジョンが不鮮明になったというのです。「マスターズで最後のパットを入れる瞬間を夢見ていたけれど、その先のことは考えてなかった」。キャリア最大の目標を達成したことである種バーンアウトのような状態になったようです。
「僕はいつも大きな大会の後や優勝した後にいいプレーを続けるのが苦手な選手だと思います。何かを成し遂げれば、その感激に浸って楽しみたいし、目標を達成したという事実をかみ締めたい。だから次の試合にモチベーションをキープするのが難しいのです」。そして「これからのことはまったくわからない。いまはただ一戦一戦頑張るしかありません」とも。
世界ナンバー1とナンバー2に差があるとすれば、それは鈍感力かもしれません。シェフラーは試合直前に逮捕されてもすぐ立ち直る鈍感力の持ち主。マキロイはマスコミや外野の声に敏感に反応する繊細なタイプ。〝マスターズロス〞のマキロイに新たな目標が見つかるまで、少し時間が必要なのかもしれません。

オークモントCCで行われた全米オープンの会見で心境を語っていたマキロイ。今大会は+7の19位タイで終了。本記事の前週、トラベラーズ選手権はシェフラーと並んで‐12の6位タイに入った。今週(6/26~29)は欧州のイタリアンOPに出場する
※週刊ゴルフダイジェスト7月1日号・PGA TOUR NEWSより(Text/Mika Kawano、Photo/Yoshihiro Iwamoto)