全国から問い合わせが殺到するという知る人ぞ知る人気ショップ「ゴルフステージ成城」のクラブナビゲーター吉田朋広氏が注目するギアを徹底検証・解説する企画。今回は16年前に発売した「ツアーAD DI」から今年1月に「BLACK version」が登場。アメリカでは15年前にラインナップされていたが、なぜ今、日本で発売となったのか? DIの人気の理由を検証しつつ、その要因を解説する。

なぜ15年経った今「BLACK version」が発売された?

グラファイトデザイン社のツアーAD DIは今から約16年前の2009年10月に発売されました。これまでにプロゴルファーを含む多くのゴルファーに愛用されてきたグラファイトデザイン社を代表する名シャフトです。「DI」のネーミングの由来は「DEEP INPACT」で、芯のある深く厚いインパクトを実現するイメージで作り上げられたシャフトです。

画像: ツアーAD DIといえば松山英樹を連想するゴルファーは多いはずだ(写真は2025年ザ・セントリー 練習日 撮影/岩本芳弘)

ツアーAD DIといえば松山英樹を連想するゴルファーは多いはずだ(写真は2025年ザ・セントリー 練習日 撮影/岩本芳弘)

そんなツアーAD DIにシャフト外装カラーに黒を採用した「BLACK version」が2025年1月23日に発売されました。発売から5カ月経った今「ツアーAD DI」と「BLACK version」ともにグラファイトデザイン社の国内シャフト販売ランキングで最新モデルのGCに続く勢いで、非常に好調に販売が推移しているとのことです。今回は改めてDIの人気の理由を検証していきたいと思います。

日本では今年の1月から発売されたDI BLACK versionですが、アメリカではすでにDIの発売の翌年の2010年から発売されていました。なぜ「DI BLACK version」がアメリカのみで販売されていたかという理由は、PGAのツアープロの要望がきっかけだったようです。

その間約15年もの間、日本ではオレンジカラーのDIのみが販売され、アメリカではオレンジカラーとブラックカラーの2色のDIが販売されてきました。日本でもDIのBLACK versionを使いたいというこだわりのゴルファーはアメリカからの並行輸入品を購入して使っている方もいましたのでDIのBLACK versionの存在を知っている方はいると思います。

ではなぜアメリカの発売から15年も経って日本で正式にラインナップされることになったのか。そのきっかけは、昨年日本のクラブメーカーから秋に発売する新製品のカスタムシャフトにDI BLACK versionを加えたいとのリクエストを受けてのことです。

画像: ツアーAD DIのBLACK version

ツアーAD DIのBLACK version

リクエストしたメーカーのカスタムシャフトに正式に採用され、先行発売されたDI BLACK versionは3カ月後の2025年1月から正式にグラファイトデザイン社のカタログラインナップに加わり、グラファイトデザイン正規取扱店での購入が可能となりました。

まずツアーAD DIは当時のグラファイトデザイン社のトップの「グラファイトデザイン社を代表するシャフトを作る」と指示のもとで開発されたモデルだと認識しています。2009年の発売から現在まで、16年もの長い間、世界のプレーヤーに支持され、プロゴルファーの基準シャフトのポジションを築いています。PGAツアーで戦う松山英樹選手が高校生の時から使っているオレンジカラーの「DI」はトレードマークとなっています。

DIが発売されたのは2009年10月ですが、一足先に発売前にメーカーカスタムクラブに採用されました。採用したメーカーは「ブリヂストン」。当時開催されていた国内トーナメント「ブリヂストンオープン」の開催に合わせて発表されたブリヂストンの新製品「ツアーステージ X DRIVE 703」のドライバーに純正カスタムシャフトとして採用されました。

画像: ツアーAD DIと人気のマッチングだった「ツアーステージ X DRIVE 703」

ツアーAD DIと人気のマッチングだった「ツアーステージ X DRIVE 703」

「ツアーステージ X DRIVE 703」ドライバーは遠藤製作所製の高性能ヘッドでツアーAD DIのシャフト特性のマッチングの良さで抜群の人気を誇ったクラブになりました。その後もDIはメーカーカスタムクラブのシャフトラインナップとして長い間採用し続けられています。

最近ではタイトリストのアメリカでのフィッティングデータで、多くのゴルファーにパフォーマンスの出やすいという結果が認められ、2020年11月発売の「TSI」シリーズでメーカー推奨カスタムシャフトになったのも記憶に新しいところです。

なお、DIの重量とフレックスのラインナップは以下の通りです。

50グラム台の「DI5」 R2.R1.S.X
60グラム台の「DI6」SR.S.X
70グラム台の「DI7」S.X
80グラム台の「DI8」S.X
DIの基準モデルは6S。6Sの設計を基準にSRはしなりを大きく感じやすく、Xはしなり量を少なく設計されています。

人気の理由1:優れたシャフト設計

DIがグラファイトデザイン社のツアーADシリーズ のプロゴルファーの基準モデルとしてのポジションは現在も変わりありません。この理由は基本設計が優れているからにほかなりません。

DIの基準モデルは6Sになります。基本設計は手元側のバット部分は剛性も高くありません。切り返しでタメを作りやすくシャフトの中間部分にかけてしなりがあるので、コントロールしやすく、そのしなりは先端部分のやや上まで持続していき、硬めの剛性の先端部分でインパクト時に厚くボールをとらえる設計です。基本弾道は中弾道でバックスピン量はやや少なめです。

最近のツアーモデルのシャフトと比べても手元側は硬くないので、ダウンスウィングでの切り返しのタイミングを重視するゴルファーにとってはきっかけが作りやすく自身のスウィングタイミングを教えてくれる目安となります。

また、シャフトのしなりを使ってしっかりとインパクトを作っていきたいゴルファーにとって、程よい剛性感がもたらすしなりが持続していく挙動は、自身のスウィングでインパクトを作っていきたいゴルファーにとっても扱いやすいでしょう。

画像: ツアーAD DI(上)とツアーAD DI BLACK version(下)

ツアーAD DI(上)とツアーAD DI BLACK version(下)

基本弾道はややフェードですが、シャフトコントロールしやすいので上級者にとってはドロー回転もかけやすい設計だと思います。

手元側が緩めのシャフトが合う方も、先端部分が硬めのシャフトが合う方のどちらにも結果が出やすいシャフトです。スウィングに迷いがある時に自身の現状を判断する基準モデルとして絶対的な信頼感があるのも人気の理由です。

人気の理由2:ヘッドとのマッチングの良さ

DIが発売された2009年から16年の間にドライバーヘッドは様々なモデルが市場に投入されてきました。特にDIの発売当時はヘッドに直接シャフトを接着するのがほとんどで、可変式スリーブ搭載ドライバーへの装着はほぼ考えてなかったですが、現在の主流となる可変式スリーブに装着した際の性能面やフィーリング面で全く問題なく対応できています。DI発売当時よりも大きな慣性モーメントの設計のヘッドも多く販売されていますが、それらの新しい設計のヘッドにも十分対応できています。

大きな慣性モーメントのドライバーヘッドの場合、手元側や先端部分の剛性が高すぎるシャフトだと、スクエアにインパクトしにくい場合もあります。しかしDIの場合、シャフトのどの部分も剛性が高すぎないのでスムーズな挙動で理想的なインパクトを実現できます。打点ブレにも強いのでボールスピード等の数値も良好です。

DIの発売当時よりもデータによる分析が細かくなっている現在でも、最新のシャフトに比べても遜色ない良いデータが出ます。

慣性モーメントの大きいドライバーヘッドだけでなく、慣性モーメントの小さいフェアウェイウッドともマッチングが良いのがDIです。適度にしなり厚いインパクトを実現できるのでインパクトを重視されるフェアウェイウッドに非常に良いマッチングになります。

画像: ツアーAD DI

ツアーAD DI

ドライバーに合わせて「DI5」や「DI6」を3番ウッドや5番ウッドに装着するのはもちろん良いマッチングになりますが、最近アスリートゴルファーでも使用率が高くなってきている7番ウッドや9番ウッドのショートウッドにも「DI7」や「DI8」は抜群のマッチングです。DI7や DI8の先端部分はナノテクノロジーによって強化された高い剛性設計でインパクト時のブレを抑えて厚いインパクトを実現する設計に仕上がっています。ショートウッドに方向性を求めるアスリートゴルファーにとっても最適なシャフトともいえるでしょう。

フェアウェイウッドに装着する際に気になるバット部分のカット量によるフィーリングの変化も、DIは少ないのが特長です。手元側から中間部分にかけて剛性値を大きく変えていないのでドライバー用のシャフトながら5インチ位までならカットしても手元側のフィーリングは大きく変化しません。先端部分もパラレル長をとっている設計ですのでTIP部分のトリミング(TIPカット)による先端部分のフィーリング調整が可能です。

画像: どちらかというと粘りが強い

どちらかというと粘りが強い

DI BLACK versionが追加されたことでフェアウェイウッドに装着した際のカラーマッチングも良いと思いますので、今後更に装着される方も増えるでしょう。

かつてのDIユーザーに是非試して欲しい「DI5 R1」「DI5 R2」

DIのドライバー用の販売の中心は50グラム台のDI5と 60グラム台の DI6になります。フレックスもSフレックスがもっとも多い数量となります。2009年の発売から16年経ちますので過去にDIを使ったことがあるゴルファーも多くいらっしゃると思いますが、DIを使ったことがある方でも5R1や 5R2を試したことがある方は少ないのではないでしょうか。

店頭にあるデモシャフトはだいたい5Sと6Sですので、5R1や5R2はメーカーの試打会やシャフトフィッティングをメインにしているショップでしかなかなか試すことができないレアなスペックです。今回DIの魅力を検証する中で改めてこの2本を検証しましたが、5R1と 5R2が非常に魅力的なパフォーマンスを発揮するフレックスでした。

画像: ツアーAD DI 5R1とツアーAD DI 5R2

ツアーAD DI 5R1とツアーAD DI 5R2

まず5R1というフレックス表記ですが、一般的なフレックスで表すとSRフレックスです。Sフレックスよりもバット部分が若干細く、ダウンスウィング時に手元側をしならせやすいことでシャフトそのものをスムーズに動かしやすく自らインパクトを作っていきやすい素直な挙動が特長です。R1でも中弾道のブレの少ないDIらしい弾道を体感できますので、Sフレックスだと硬く感じてきたゴルファーにオススメのフレックスです。

5R2は一般的なフレックス表記で表すとRフレックスです。R1よりも更に細いバット径は15.10です。手元側から先端部分にかけてスムーズにしなりが持続するDIのシャフト挙動をヘッドスピードが速くなくても感じることが可能です。以前と同じイメージでスウィングしているのにヘッドスピードが落ちてきてしまったシニアゴルファーでもDIらしい重厚な厚いインパクトが体感できるフレックスです。素直なシャフトのしなりを生かしてしっかりとボールをとらえてボールを前に飛ばすことができるオススメのフレックスです。

R1もR2どちらもバット部分と中間部分は剛性が高くなく、先端部分が硬いのが特長です。スムーズなシャフトのしなりはヘッドのポジションも感じやすいので自身のスウィングでコントロールしてインパクトを作っていくことが可能です。硬く走るイメージのシャフト挙動が苦手なゴルフ歴の長いシニアゴルファーにとって非常に使いやすいイメージのシャフト挙動です。

軽め、軟らかめのDIを打つことで新たな発見があると思います。気になった方は是非お試しください。

フレックス振動数
ツアーAD DI 5(R1)241CPM
ツアーAD DI 5(R2)229CPM

※テストクラブSIM2MAX 45・75インチ

シャフトチャート

画像: ※フレックス「5S」基準

※フレックス「5S」基準

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