
優勝カップを掲げる佐藤快斗(撮影/有原裕晶)
佐藤快斗の3日目が終わった時点で、2位タイの3人(日本大学2年生の清水蔵之介、早稲田大学4年生の柏俣結生、そして勇志国際高校1年の長﨑大星)とは6打差をつけた独走状態。ラウンド後の会見でも「いつも通りやっていけばいいのかなと思います。マネジメントをしっかりして、今日や昨日みたいにやっていきたいです」とプレッシャーを感じているようには見えなかった。
迎えた最終日。佐藤は3番から3連続バーディがあったものの、6番でボギー、9番でもボギーとする。通常なら、前半を1アンダーで終え、上々といえるスコアだが、さすがアマチュアの日本一を決める大会。そうはいかなかった。

前半28という驚異的なスコアで追い上げるも2位に終わった長﨑大星(左)。右は同組だった加藤金次郎(撮影/有原裕晶)
それは、一組前にいるナショナルチームの後輩・長﨑が2番から6番まで、そして8番、9番と前半だけで7つのバーディを奪う猛チャージを見せ、前半が終わった時点でアドバンテージがなくなった。このときの心境を聞かれると、「(長﨑とは)3日目に同組で、ショットの調子が良くて、パッティングが入ればもっと伸ばせる、と思っていたので、不思議ではなかったですが……。ただ、まさか前半で追いつかれるとは思わなかったです」と動揺があったことを認めた。
そして、「並ばれてから17番でバーディがくるまで、ずっと苦しい展開でした。距離的にはバーディチャンスに付いても、ラインが難しくて打ち切れないでパー。逆に、15番や16番のようにグリーンをこぼしてしまって難しいアプローチをしっかり寄せてパー。そういうのが交互にずっと来ていた感じだったので」と話すように、10番から16番までパーを並べ、しっかり耐えた。
その間、前半の猛チャージで佐藤を追い込んだ長﨑は、10番のバーディパットは同伴競技者のおかげでラインがわかっていたのに外したり、それを引きずった11番のティーショットを難しいライの右ラフに入れてしまうなど、ちょっとずつ噛み合わなくなり、13番、15番でボギーと後退。
ワンオンが狙える17番のティーイングエリアで、一組前の長﨑はグリーンが空くのを待っていると、16番をホールアウトした佐藤に追いつかれる。キャリングボードで自身と佐藤との差が2打とわかると「(佐藤のスコアである)14は遠いって」と長﨑が話しかけると「(まだ2ホールあるし)まだまだだよ」と佐藤が返す。長﨑の実力を知る佐藤は2打差が安全圏ではないことをわかっており、自身の気持ちを切らせないためにも「まだまだだよ」と発したという。
その17番、長﨑はワンオンできず、ボールはグリーン左のバンカーに入ったものの、そこから見事に寄せてバーディ。対する佐藤もワンオンできなかったものの、30ヤードを2mに寄せバーディとし、最終ホールに。
「17番のバーディで優勝を確信したのか?」という記者の問いに、「2日目、3日目と18番は林に入れていたので、(17番のバーディでは)安心できませんでした。ティーショットを3Wでしっかりフェアウェイに置けたので、(確信したのは)その時点ですかね。今週一番いい3Wのショットが打てました」と最後の最後まで気持ちを切らさずに戦い切った。

優勝を決めてギャラリーの声援に応える佐藤(撮影/有原裕晶)
これまでの大きな大会で勝てなかった自分と、今日、勝てた自分の大きな違いは? との記者の質問には「ひとつひとつのショットの精度が上がってきていること。そして、いろいろな大会に出場したなかで自分の引き出しが増えたことですね。あとは気持ち。いろいろな人の話を聞いて、メンタル面で本当に強くなったと思います。(一番響いた言葉は?)ナショナルチームのニール・スミスさんの言葉で『ゴルフは未来のことを考えると緊張してしまうし、過去のことを考えるとまた同じミスをやってしまうのではと不安になる。そうだからこそ、いま自分が変えられる、いまできることを考えてやったほうがいい』と言われました。
また、東北福祉大には座禅の授業があるのですが、その授業でも『未来のことを考えたり、過去のことを振り返ると座禅に集中できない。未来や過去ではなく今をみると座禅で集中できる』というような話をしていて、ああ、同じこと言ってるなぁって。ラウンド中もスコアのことを気にしだしたら、『あ、未来のことを気にしてる、今のことをやろう』と気持ちの切り替えに役立っています」。
部活やナショナルチームの活動からだけでなく、大学の授業で学んだことをゴルフに結び付けてレベルアップし、日本アマを優勝した佐藤快斗。受け答えもはっきりしていて、言葉をしっかり選んで質問に応える姿は“自分を持っている”ように感じた。「この優勝でなんかやっと勝ちきれたっていう気持ちがあるので、これからもっと大きい試合では、この優勝を自信に変えてプレーしていきたい」と力強く語った佐藤は、今後もいろいろな経験を糧に実力をつけていくはずだ。まだ大学2年生。日本アマ連覇、そしてその先の未来に、期待せずにはいられない若者がまた一人現れた!
※2025年7月5日9時47分、一部加筆修正しました。