会場となった真駒内カントリー空沼コースは2週間ほど雨が少なかったこともあり、最終日に向けてグリーンは硬くなり難しいコンディション。ラフまで転がる硬いフェアウェイ、小さく硬いグリーンに強い風が吹く中でパーオン率3位と安定したショット力を発揮したのはコンビを組んだ島中大輔キャディの「考え過ぎないゴルフ」でした。

「ミネベアミツミレディス北海道新聞カップ」で4日間大会完全優勝で初優勝を飾った内田ことこ(写真/有原裕晶)
内田選手は前週まで調子は悪くないのに2週連続予選落ちの理由は、「ライや風、打ってはいけないエリアなど打つ前に考え過ぎて結果に結びついていなかった」と優勝会見で話しました。島中キャディは「距離と方向だけを伝え構えたら、あと構えたらシンプルに打つことだけを4日間続けました」とピン位置や風、ライなどすべて考慮したうえで、狙うべき方向と距離を計算して内田選手に伝えることでそのポテンシャルを引き出し初優勝へと導きました。まだ実績の少ない選手にとってベテランキャディの力は大きいものです。
ではスウィングを見てみましょう。テークバックでは左肩が下がりながらの前傾した姿勢に沿って手元を胸の前から外さずに上げて行きます。左手首に注目すると左腕が地面と平行な位置で、左手の甲と前腕が一直線になる“フラットレフトリスト”が確認できます。

前傾した姿勢に沿って左肩が下がるようにテークバックする(写真/姉崎正)
“フラットレフトリスト”はスクエアグリップやウィークグリップで握った際にインパクトでフェースをスクエアにキープし、ややフェースを起こしてハンドファーストで打つと左手首はフラットになるという動作ですが、テークバックでフェースを開かないようにしながら前傾姿勢に沿ってあげると、左前腕を反時計回りに回す(回外)動きが入ることで左わきも締まりフェース向きのコントロール性が高まります。
ダウンスウィングでは上半身と下半身の捻転差が大きく手元がインサイドから下りてきています。胸を右に向けたまま体幹を使って巻き戻すことで地面からの反力も使い、クラブをインサイドから下ろすことができています。

上半身を右に向けたまま体幹を使って切り返すことでクラブはインサイドから下りてくる(写真/姉崎正)
斜め前方からの画像を見るとクラブヘッドは遅れていますが腕は振り遅れていないことが見て取れます。ドローヒッターはインサイドからクラブを下ろそうとして腕が振り遅れると、右へのプッシュやそれを嫌がってフェースを返して左へのミスが出てしまいますが、内田選手は切り返し以降左肩が上がらずにしっかりと左わきが締まっているので、腕が振り遅れることなく正確で再現性の高いインパクトを実現しています。

クラブヘッドは遅れても腕は振り遅れない
初優勝を4日間大会で飾るのは2010年「日本女子オープン」の宮里美香選手以来15年ぶり5人目の快挙となりました。内田選手のポテンシャルはコーチの間でもプロキャディの間でも知られていましたが、大器が目を覚ましたことで2勝目、3勝目と積み重ねていくことでしょう。