
プロゴルファー西川哲
19歳でプロテストをトップで合格(当時の最年少記録)。レギュラーツアー3勝の実績を持つ。現在は「バーディ赤坂24」を主宰。
なお、バーディ赤坂24では初回【無料体験レッスン】を実施中
トッププロを真似るのは危険
雑誌やインターネットで世界中のプロのスウィングをチェックして、真似ようと取り組んだことがあるだろう。手首の角度やクラブの振り方、脚の使い方など、細かいポイントを自分なりにやってみる。しかし上手くいかない。むしろぎこちないスウィングになり上達どころか前よりも下手になったと感じてしまい路頭に迷ったことがあるはずだ。
「ツアープロをそっくりそのまま真似をすると危険なんですよ」と西川は話す。それに続けて「賞金王がやっている練習だったり、他の有名なプロが取り組んでいる方法は基本があったうえでやっていることなので安易に真似るのはおすすめしません」と渡辺司プロも頷きながら同調した。

「プロの中でもさらに飛び抜けた能力を持っているトッププロをアマチュアが参考にするのは危険」という
大前提としてプロゴルファーは基本が無意識レベルでできる。そのうえで様々な打ち分けや、体の細かい捌き方を増やすために特殊な練習をしている。一方でまだベースができていないアマチュアが雑誌やインターネットで紹介されているトッププロの練習を真似るのは早いし、その前にやることがたくさんあるわけだ。
「強い選手に限ってアマチュアが真似しちゃいけないことをやっていたりするんですよ」と渡辺が言うと西川は笑みを浮かべる。そしてその代表が師匠である青木功プロだ。特にアプローチの打ち方は青木功だからできる神技の領域だと話す。
「僕や哲が青木さんのように打っても同じように寄ることなんてなかったですから。全然上手くいきませんでしたよ」(渡辺)

真似しちゃいけないトッププロの代表が師匠の青木功だという。誰よりも目の前で見ていた彼らでさえ真似ることができなかった
あの独特な打ち方でも精密機械のようにボールとヘッドのコンタクトが正確だからこそ成せる技。目の前で所作を見ていた2人でもできないほど青木はクラブの扱い方や、感覚の鋭さが常軌を逸していた。
「もし青木さんをそっくりそのままやるとしたら、基本的な体の使い方で、寸分の狂いなくボールを芯に当てて飛ばせるくらいのレベルがベースにないとできないですから」(西川)
並外れた練習で技術や基本を身につけたうえで、他のプロとは異なる才能があり、他を寄せ付けない成績を残している。ある種、別次元の人間だからこそ一般のアマチュアが同じように真似るのは危険なわけだ。
▶西川哲、渡辺司が「女子プロを真似してはダメ」という理由とは?
肉体のしなやかさが参考にできるかの基準
「ただでさえゴルフが上手いプロゴルファーの中でもさらに上にいるのがツアーを何勝もするトッププロなんです。彼らは特殊能力者なんです」(渡辺)
ゴルフのイロハを習得したうえでオリジナルの型や、常識はずれの方法を編み出し、結果を出しているのがトッププロだ。さらに技術だけでなく身体能力だってトップアスリート。青木と鎬(しのぎ)を削ったジャンボ尾崎の飛距離の秘密を紐解くような雑誌記事が各媒体で取り上げられていたこともある。たしかに細かいテクニックはあったが前提として日本人離れした肉体。バックボーンには甲子園優勝投手に輝いた実績とプロ野球に入団するほどの身体能力があった。
当時、ジャンボと自分を重ねて試行錯誤していたゴルファーも多いはずだ。しかし体つきも違えば身体能力も並ぶことすらできないわけだから、2人がトッププロを真似ることへ注意を促しているのも理にかなっている。彼らの師匠も癖のある打ち方以外にも身長が高く、ジャンボと同様の骨格の違いからくる難しさがある。

【写真は左から93年の尾崎、82年の青木】尾崎や青木は日本人離れした体格と類まれなスキルを併せ持ったプロの中でも飛び抜けていた。だからこそ「彼らのようなトッププロをアマチュアが真似るのは注意が必要だ」と西川と渡辺は話す
「もしツアープロを真似るならベテランのシニアプロが良いと思います」と西川は言う。さらに「よく男子のツアープロはパワーがあるから参考にするのは難しいので、女子プロを参考にしよう、といろんな媒体で書かれていますが一番しちゃいけないんです」と渡辺も続いて話す。
「連続写真を見ると頭が動かずに上手に重心移動をして球を飛ばしています。あれは体のしなやかさがあるからなんです。一方、アマチュアの方は女子プロよりも力がある方はいるかもしれませんが、一番大切な体のしなやかさがないんです。女子プロは一番対局な存在なんです」(渡辺)
彼女たちは体の可動域の広さとそのしなやかな体をコントロールする技術がベースに備わっているから飛ばせている。しなやかさが不足しているアマチュアが単純な飛距離やスウィングスピードが近い存在だからという理由で女子プロを参考にすることは危険なわけだ。
「僕も若い時は今よりも体が柔らかかったので頭が微動だにせずスウィングすることができていました。しかし歳を重ねるにつれて可動域が狭くなり、トップの位置が浅くなったりしています。今は多少、頭が動いてもいいのでしっかり重心移動を意識して振っています」(西川)
アマチュアのしなやかさのレベルと彼らのようなベテランシニアの肉体レベルは近いところにある。だからこそ参考にできるところが多い。例えば過去に憧れていた選手のスウィングを真似ようとしても諦めた経験があるのなら、現在シニアで奮闘している選手たちを研究することで上達のきっかけを掴めるかもしれない。
つづく
・取材協力/バーディ赤坂24