「ルーキーがシードを取るのは2~3割。厳しい世界です」(佐渡充高・TV解説者)
海外ツアー前半戦、日本選手たちの「通信簿」を付けてみましょう。松山英樹は開幕戦(ザ・セントリー)で優勝しましたが、そのスコア35アンダーは72ホールでの新記録。トップランカーとしてのレベルを超え、限界を打ち破ったかに見えました。しかし、その後優勝はなく苦しんでいるようです。
フェデックスポイントランク(以下「FE」)は22位(7月24日現在では21位にアップ)ですが、さらなるランクアップを期待し〈4.5〉(5段階中、以下同)。久常凉はFEで74位(7月24日現在では79位にダウン)、100位までシードされますから、ここからが勝負。現段階では〈3.5〉ですが、シードが取れれば満点〈5.0〉でもいいと思っています。
星野陸也、金谷拓実、大西魁斗のルーキーイヤーは厳しいものがあります。出場権も確定しないし、急きょの出場機会にも対処しなければなりません。大会開催コースも初めてだろうし、組み合わせも4つのカテゴリーの新加入組で、スタート時間も一番早いか、遅い組。最後の組では荒れたグリーンなど、つまり最悪の過酷な条件でプレーしなくてはならないわけです。ですからルーキーがシードを取れる割合は2~3割、残る7〜8割は取れないのが現実。厳しい世界であることがわかる数字です。

世界で戦う日本ジプレーヤーたち
星野はFE179位(7月24日現在では182位にダウン)、残り試合5~6試合でどうなるか。金谷拓実はFE149位(7月24日現在では150位にダウン)。バイロン・ネルソンで5位、トップ10に1回入ったこと、フェアウェイキープ率5位が励みになって後半戦どう戦うか。大西魁斗はFE192位(7月24日現在では179位にダウン)。15回出場して3回予選通過しただけ。パットに苦しみ厳しい位置にいます。これを修行だと思って開花することを祈るばかりです。よってこの選手の評価は後半戦を待ってとしか言いづらいですね。
今年から下部ツアーのコーンフェリーツアーに参戦の平田憲聖。実は松山に次いで大開花するのは彼ではないかと思っているほど楽しみな選手です。現在ポイントランク15位(7月24日現在では17位にダウン)で、PGAツアーに参戦できるトップ20位までに入る可能性濃厚。今、〈4.0〉。もしPGAツアー参戦決定ならむろん〈5.0〉満点です。
欧州ツアーでの中島啓太、ポイントランク17位(7月24日現在では19位にダウン)。最終的に有資格者を除く10位以内なら米ツアー出場権獲得。今年は13試合出場で2位2回。現時点で〈3.5〉、もし米ツアーのシードが取れるなら〈5.0〉とします。桂川有人、ポイントランク102位(7月24日現在では99位にアップ)。BMWオープンで惜しくも11位。ここでトップ10に入れば〈5.0〉でもいいくらいでした。川村昌弘は怪我のため6月に日本で復帰したばかり。頑張ってほしいとしか言えないですね。
さて、米ツアー全体について。さすがにメジャーはZ世代(代表はスコッティ・シェフラー)の経験豊富な選手が取っていますが、今年のトレンドとしてはα世代の若手選手が活躍していること。Z世代をデジタル世代と呼ぶなら、α世代は2001年以後生まれ、AIネイティブ世代。現在まで30試合開催されていますが、6人のα世代が優勝しています。代表格はアルドリック・ポトギーター。南ア出身で22年に全英アマを史上2番目の若さ、17歳で制しています。これまでも天才ぶりを示す勝ち方をしていて、米ツアーではロケットクラシックで初優勝。飛ばし屋で平均飛距離328.4ヤード。2位のマキロイを8ヤードほど引き離しています。

「α世代」が躍動!
もう1人はカール・ビリップス。豪州生まれででスタンフォード大出身。タイガーがほれ込んで、自身が立ち上げたアパレルブランド・サンデーレッドの新アンバサダーに選んだほど。プエルトリコオープンで初優勝しました。
新陳代謝は選手ばかりでなく、PGAツアー組織にも及んでいます。新CEOがNFLのビジネス責任者、ブライアン・ロラップへ交代して、さらなる飛躍が期待されています。
「2年目に突入できれば経験がモノを言う」(タケ小山)
米ツアーについてはシーズン前に予想された通り、順当⁉ といった印象です。松山英樹を筆頭に、久常涼も米ツアー在籍年に準じてそれなりの成績を残しています。それでいくと、やはり金谷拓実、星野陸也、大西魁斗のルーキー組は苦戦を強いられているようです。これは当たり前とも言えます。ルーキーイヤーから活躍するのは至難の業なのです。3人の日本選手もここから抜け出し、2年目に突入できれば経験がモノをいうことになり、飛躍できるはず。米ツアーでは経験―コースも試合も―が一番チカラになるのです。本当にこれからがプレーオフシリーズへ向けての正念場だといえます。
また、平田憲聖は、下部(コーンフェリー)ツアーで、ポイントランク15位(7月24日現在では17位)。このままだと来季のツアーカード(上位20位まで)を手に入れることができます。上出来です。
DPワールドツアー(欧州男子ツアー)での中島啓太はこのままいけば、念願の米ツアーに行けそうです。昨年の“失敗”を糧にできましたね。日本と海外を行ったり来たりせず、DPワールドツアーに専念したのが功を奏したと思います。転戦して米ツアーシードを手に入れられるような甘さは、DPワールドツアーにだってありません。桂川有人は厳しい状況が続いていましたが、ここからでしょうね。
日本選手も戦っていく技術は十分持っています。ただ生活様式、試合の雰囲気、土地柄、言葉、つまり経験ですね、これらの要素は一朝一夕に身につくものではない。常駐することが必須条件。スポット参戦で結果は絶対出ない。また、選手の低年齢化は否めませんが、メジャーは別。コースの難度が上がると経験豊富なベテラン勢が優位に立つことはすでに立証済みです。
現在までの「通信簿」を。
松山/4点。米ツアー11年でフェデックスポイントランク上位30位には必ず入ってきています。開幕戦以後の優勝が欲しい。
久常/5点。着実に成長しているのが素晴らしい。
金谷/3点。QTからの参戦で厳しいはずだが粘りに期待したい。
星野/3点。DPツアーでの活躍が米ツアーではできていないかな……まだまだここから。
大西/2点。下部ツアーと米ツアーの壁の高さを証明してしまっているように見えるのは残念ですが……昨年同様下部ツアー終盤での粘りを期待。
平田/4点。15試合出場のうち10試合で予選通過、トップ10が3回、2位と3位もあります。

タケ小山・TV解説者、プロゴルファー
▶「戦う理由は、自分の中にある」――海外で躍動する日本勢の真価
PHOTO/ Yoshihiro Iwamoto、Hiroyuki Okazawa、 Tadashi Anezaki、Getty Images
※ランクなど数値は7月9日現在
※週刊ゴルフダイジェスト7月29日号「海外で戦うニッポン男子の通信簿」より一部抜粋