
全米プロゴルフ選手権 2025にて(撮影/岩本芳弘)
こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回は海外男子シニアメジャーの「全英シニアオープン」で、「全米シニアオープン」に続いて今季メジャー2冠を達成したパドレイグ・ハリントン(以下ハリントン)の後方からのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させて頂きます。ハリントンのスウィングには、
①左足をヒールアップするので、左ひざの動きが大きい
②胸と骨盤の捻転差(Xファクター)を効率良く増やしている
の2点が主な特徴です。また、中盤では「Xファクターストレッチ」についての解説、後半ではアマチュアとハリントンを比較して、ヒールアップのタイミングの違いについても解説しています。それでは早速チェックしてみましょう!
左足をヒールアップするので、左ひざの動きが大きい
まずは左足の動きに注目しましょう。元々ハリントンはレギュラーツアーで活躍していた頃から、「左足のヒールアップ」を取り入れて、足の動きがある選手でしたが、それがわかるデータがあります。「Lead Knee Flexion」は右打ちの場合は左ひざの屈曲角度を表します(左打ちの場合は右ひざ)。ハリントンのアドレスとトップでの左ひざの角度はアドレスが157度、トップで140度と、トップにかけて左ひざはより深く曲がっています。

画像①アドレスとトップの比較/左足をヒールアップするハリントンは、トップで左ひざが深く曲がっている
スポーツボックスAIが独自で調査した、トップのポジションでの左ひざの屈曲角度の海外男子ツアーレンジは、141度~145度ですので、ハリントンは海外男子ツアープレーヤーの中でも左ひざの動きがやや多めのタイプであることがわかります。ハリントンはこの左足をヒールアップすることで胸と骨盤の捻転差(Xファクター)をトップにかけて効率よく増やしています。これを「Xファクターストレッチ」と言います。
胸と骨盤の捻転差を増加させる「Xファクターストレッチ」とは?
それでは、「Xファクターストレッチ」について解説します。これはバックスウィングで骨盤が胸よりも先に左に戻り始めることで発生する「捻転差の増加値」のことで、このXファクターストレッチによって腹部の筋肉が伸ばされるので、より大きな力(フォース)でクラブスピードを上げることができます。スポーツボックスAIでは、このXファクターストレッチを「バックスウィングで骨盤の回転角度が最大になるタイミング」と「トップ」でのXファクターのデータをそれぞれ比較することで、Xファクターストレッチのデータを割り出すことができます。「Pelvis Turn」は骨盤の回転角度を表しますが、ハリントンはバックスウィングでマイナス48度、トップでマイナス39度ですので、トップの時点ですでに骨盤は左に戻り始めています。

画像②Xファクターの比較/バックスウィングからトップにかけて、骨盤が先に左に戻り始めて、Xファクターが増加している。この増加値がXファクターストレッチだ
この骨盤が左に戻り始めることで、Xファクターもマイナス38度からマイナス43度と5度増加しています。この5度の数値がXファクターストレッチです。ハリントンのように左足をヒールアップしてタイミングよく踏み込めると、Xファクターストレッチを発生させてより速いクラブスピードを出せますが、この動きはタイミングがカギになります。
ヒールアップはタイミングがカギ! 左足を早めに上げて、トップで踏むのがポイント
それでは、この左足のヒールアップをハリントンとアマチュアの3Dアバターで比較してみましょう。画像③はトップの比較ですが、左のアマチュアはトップの時点で左足かかとが最も上がっていて、骨盤の回転角度はマイナス54度と回り過ぎているのに対して、右のハリントンはトップですでに左足かかとは地面を踏み始めて、骨盤の回転角度はマイナス39度と左に戻り始めている分だけ回転角度は少なくなっています。

画像③アマチュア(左)とハリントン(右)の3Dアバター比較/左足かかとを踏むタイミングの差が、骨盤の回転角度にも影響している
アマチュアがヒールアップを取り入れた際に多いエラーは、左の写真のように「トップで左足が最も高くヒールアップしている」ケースです。これでは骨盤が左に戻り始めるタイミングが遅れるので、Xファクターストレッチは発生せず0度になります。
このヒールアップのタイミングのズレは、他にも骨盤の右へのスウェイや、上体や腕からクラブを振り下ろすアウトサイドイン軌道など、さまざまなエラーを引き起こします。ですので、左足のヒールアップを取り入れる際にはハリントンのように「バックスウィングで早めに左足を上げて、トップで地面を踏み始める」意識で練習しましょう。ヒールアップの正しいタイミングを覚えられれば、飛距離アップやキネマティック・シークエンス(体の動きの順番)を整える効果もあるのでお勧めです。
今回はパドレイグ・ハリントンのドライバースウィングを解説させて頂きました。ハリントンはPGAチャンピオンズツアーでの平均飛距離は300Yを超えており、50歳を超えてなお飛距離アップに取り組んでいます。また、自身のYouTubeチャンネルでもレッスン動画を積極的に配信しているので、是非ご覧になってみて下さい!