初代「MCI」が発売したのは2013年。それから13年の時を経て2025年7月、NEW「MCI」が誕生した。果たしてどんな進化を遂げたのか? 全国から問い合わせが殺到するという知る人ぞ知る人、人気ショップ「ゴルフステージ成城」のクラブナビゲーター吉田朋広氏が前編・後編に分けて徹底検証・解説する。

フジクラNEW「MCI」

今回取り上げるのは、フジクラのアイアン用カーボンシャフトを代表するモデル「MCI」。初代「MCI」が発売されたのは2012年。しなりと操作性を両立した革新的なシャフトとして発売され、一躍アイアン用カーボンシャフトの代名詞として高い評価を受けました。

「MCI」は(Metal Composite Iron)の意味で、ネーミングの由来にもなっている「MCT」(Metal Composite Technology)を採用して設計されたシャフト。「MCT」はシャフト重量が重くなると手元側に重心が寄るのを解消するために考えられたテクノロジーです。一般的に手元重心を改善するためにシャフト先端部分にカーボン繊維を多く巻くと剛性が高く、硬いシャフトになりがちで、フィーリングが損なわれます。しかし、「MCT」によるシャフト設計はカーボンシャフトらしいフィーリングを保ちつつ、シャフトの重心ポイントを先端部分寄りにコントロールすることが可能になります。

画像: フジクラNEW「MCI」

「MCI」はシャフト先端部分に金属の管が入っていることが広く知られていますが、実際に金属管が入っているのは80グラム台以上のモデルで50~70グラム台は金属箔を積層した先端部分設計になっています。カーボンシャフトの設計自由度の高さを活かし、カーボンシャフトらしい「しなり」がありながらも捻れに高い強度を持つシャフト設計は今までにないイメージのアイアン用カーボンシャフトとして人気のモデルとなりました。

画像: 50~70グラム台は金属箔を積層した先端部分設計(写真左)、金属管が入っているのは80グラム台以上のモデル(写真右)

50~70グラム台は金属箔を積層した先端部分設計(写真左)、金属管が入っているのは80グラム台以上のモデル(写真右)

スチールシャフトユーザーからのリシャフトを想定したバランスポイント等の拘ったシャフト設計やシルバー系のシャフトカラーは発売直後から多くのユーザーに注目され、カスタム系アイアンやリシャフトでアイアン用カーボンシャフトの代名詞として市場で認知度が上がりました。「MCI」の市場での高い評価を受けて大手ゴルフクラブメーカー各社もカスタムシャフトとして徐々に採用するようになり、現在ではほぼ全てのゴルフクラブメーカーのカスタムシャフトにラインナップされています。

その「MCI」が13年ぶりに新型モデルを投入しました。2012年の発売から13年の時を経て更なる革新的な進化を遂げた新しい「MCI」はどのような仕上がりになっているのでしょうか? NEW「MCI」のラインナップはMCI50、60、70、80、90、100の6つの重量帯にRとSの2つのフレックスが用意されています。

今回は50、60、70グラム台。次回は80、90、100グラム台と2回に分けて検証して行きたいと思います。

フレックス重量トルク調子振動数
50R53グラム3.4中調子259CPM
50S55グラム3.4中調子273CPM
60R63グラム2.7中調子267CPM
60S65グラム2.7中調子277CPM
70R73グラム2.4中調子274CPM
70S75グラム2.4中調子285CPM

まずは外観からチェックしていきましょう。シャフトカラーはグレーメタリックで、アドレス時には濃いめのダークグレーに見えるシックなカラーリングです。シャフトの正面にはホワイトのMCのロゴを大きく配置。ロゴが目立つので気になる方もいると思いますが、遠目でも目立つ存在感のあるデザインはプロモーションにも有効なのでしょう。

MCI50(R)

では早速MCIで最も軽量で軟らかいフレックス「50R」を検証。軽量アイアンシャフトのRフレックスのイメージよりも手元側は剛性感があり、意外としっかりとした印象です。ダウンスウィング時は切り返しから間がとりやすく、シャフトの挙動はしっとり、おだやかです。シャフト中間部の剛性は高めでしなやかなのに潰れに強く、シャフト先端部分は動きは感じられるものの余分な動きは抑えられているのでインパクト時に物足りなさを感じることはないでしょう。ボールのつかまりは良く、フェースでしっかりとボールをとらえてくれますが、方向性は犠牲になっていません。

NEW MCIの特長でもあるボールの高さはしっかりと体感できます。ボールの拾いやすさがあるのでスウィングスピードに関係なく理想的な高さが出やすく、キャリーでターゲットを狙いやすいと思います。非常にバランスの良い完成度の高いフレックスに仕上がっています。

MCI50(S)

Rフレックスに比べて手元側にハリがあるのでしっかりとしていて、プレーヤーの切り返しのタイミングが取れるかどうかで印象はだいぶ変わりそうです。切り返しのタイミングが合えば軽量シャフトのSフレックスらしいすっきりとした振り心地とスピード感があります。先端部分はしっかりしているので打ち込んでいくタイプの方でも物足りなさを感じることはないと思います。

ボールの高さはしっかりと出るのでグリーンでボールを止めやすいと思います。ボールのつかまりはやや抑えられているので、左へのミスを気にせずに高い弾道でターゲットを狙っていけるでしょう。軽量でも手元側がやや硬めのシャフトがタイミングを合わせやすいという方にオススメです。

MCI60(R)

63グラムのRフレックスはNEW「MCI」で人気のモデルとなっています。50グラム台のRフレックスに比べて重量が10グラム増えたことによりシャフトフィーリングにしっとりした感じがプラスされたフィーリングです。切り返し時の間がとりやすくシャフトの動きは非常になめらかでスムーズな印象です。Rフレックスながら先端部分の動きは大きくなく、インパクト時にしっかりとボールをとらえてスウィングエネルギーをボールに伝えてくれます。

弾道は気持ちよく上がり、誰でも高い弾道が打ちやすい印象です。ボールのつかまりはよく、飛距離性能も高いのですが、落下角度がありバックスピンもしっかりと掛かることでボールをグリーンで止められます。アイアン用カーボンシャフトに求められる飛距離性能とスピン性能をバランス良く両立しているフレックスです。

MCI60(S)

60グラム台のSフレックスは比較的使い手を選ぶイメージがあります。Rフレックスに比べて切り返し時にシャフトを硬く感じるので50S同様切り返しのタイミングが合い、しっかりと打ち込んでいける方に合うフレックスだと思います。アイアンでアウトサイドインのスウィング軌道の方は手元側が硬く感じる場合があるでしょう。

画像: MCI60(S)

切り返しのタイミングが合う方は、Sフレックスの持つスピード感のあるスッキリとした印象のシャフト挙動はインパクトで厚くボールをとらえられ、高い弾道を実現してくれます。ボールのつかまりはやや抑えられているので、左を気にせずにターゲットやグリーンを狙って行けます。60Sは50Sと非常に近いフィーリングのシャフトのに仕上がっていますので、どちらの重量が合うか比較して選ぶのが良いでしょう。

MCI70(R)

70グラム台のカーボンシャフトは80~90グラム台の軽量スチールシャフトからのリシャフト等も検討されている方からも注目されている重量になります。シャフト重量と剛性設計のバランスが非常に良く、大きな力を加えなくてもスムーズに切り返しができます。

画像: MCI70(R)

MCI70(R)

シャフトのトルクも2.4と少なめですが、非常になめらかなでスムーズなシャフト挙動です。インパクトエリアでもスピード感があり、インパクト以降もフィニッシュまで気持ちよく振り抜くことができます。70グラム台になると先端部分に剛性感があるのでインパクトは厚く、ボールを押せるイメージです。この辺りはフジクラの開発イメージ通りの結果が出ているのでしょう。

弾道は楽に高く上がるイメージです。キャリーはしっかりと出て練習場のグリーンでもボールが止まるのを確認できますので、バックスピンもしっかりと確保されているのでしょう。スウィングスピードが速くない方でもボールの高さも出しやすく、グリーンをしっかり狙いやすいバランスの良いフレックスに仕上がっています。

MCI70(S)

Rフレックスに比べて明らかに手元側の剛性が上がりしっかりした手応えがあります。Sフレックスになると60S同様に切り返しのタイミングが合う方と合わない方で印象が変わると思います。切り返しのタイミングが合えば中間部分までしっかりしてますがその先にかけて動きを感じられます。先端部分の剛性は高過ぎないので適度にボールの拾いやすさも感じられ高い弾道が実現でき、理想的な落下角度でターゲットを狙えるフジクラの設計通りのイメージの弾道が出るでしょう。

画像: MCI70(S)

MCI70(S)

一方で切り返しのタイミングが合わない方は手元側がしならせきれずにややアウトサイドインの軌道になることで理想的な高さまでボールが上がらず、ボールもやや左にいきやすくなる場合があると思います。ちなみに、70Sは装着するヘッドによっても印象は変わると思います。高い重心設計のアイアンヘッドだとシャープなフィーリングに感じられ、低重心設計のアイアンヘッドだと比較的Rフレックスに近いおだやかな挙動のしっとりしたシャフトフィーリングになると思います。

試打する際は自身のヘッドに近い試打用のヘッドで試すと良いでしょう。

MCI 50、60、 70 総評

今回はNEW「MCI」の50、60、70を検証しました。NEW「MCI」50、60、70は初代「MCI」同様シャフト先端部分には金属管ではなく、金属箔を積層した先端部分の設計になっています。この重量帯に求められるカーボンシャフトらしいしなやかな「しなり」と「操作性」を両立されているシャフトに仕上がっている印象を受けました。

RフレックスとSフレックスでは手元側の剛性の違いを持たせることで違いを出しています。Rフレックスは50、60、70グラム台のユーザーにターゲットに合わせて切り返しのタイミングが取りやすい手元調子系の間の取りやすさを感じられ、Sフレックスはやや強めの切り返しに対応している手元剛性設計になっています。

画像: MCI 50、60、 70

MCI 50、60、 70

各重量帯共に初代MCIに比べてシャフト全体の各部分の剛性が上がっている印象ですが、フジクラが初代MCIを発売してから13年の間にドライバーシャフトもSPEEDER evolutionシリーズからSPEEDER NXシリーズへと進化していますが、そのことも多く影響していると思います。

今回のNEW「MCI」は最近のフジクラシャフトとフィーリングが非常に似ているシャフトに仕上がっている印象で、高いスピン量とヘッドスピードアップを特長としていますが、高いスピン量に関しては「落下角」にフォーカスしたアイアンシャフトの「TRAVIL」開発時のノウハウも取り込まれているでしょう。ヘッドスピードアップに関してはSPEEDER NX VIOLETから採用されている45度以外の第2のバイアス層を新たに積層するテクノロジー「DHX」を採用することで実現しています。

ベストセラーモデルの「MCI」をモデルチェンジすることは容易ではないことは想像がつきますが、高い評価を受けてきた良い部分を残しながら、更に性能を進化させるために新しい設計でブラッシュアップされたNEW「MCI」は非常に完成度の高いシャフトに仕上がっています。是非試して頂きたいと思います。

次回はMCI80、90、100を検証したいと思います。

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