
このままの順位で行くと最終戦「ツアー選手権」に出場できないリッキー・ファウラー。先週のように逆転できるか!?(写真は全英オープン、撮影/姉崎正)
復活の兆し、好転の理由
ファウラーの今季は、まさに「綱渡り」の連続だった。7月のロケットモーゲージ・クラシックで予選落ちを喫し、フェデックスカップ・ランキングは72位まで後退。プレーオフ圏外に転落する危機に瀕した。しかし、そこから彼は驚異的な粘りを見せる。
翌週のジョンディア・クラシックを18位タイで終えるとランキングを68位まで上げ、再びプレーオフ圏内に復帰。さらに全英オープンでの14位タイで63位とし、70位以内の出場権を確実なものに。そして、レギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」を44位タイで終え、ランキングは64位でプレーオフに進出。この時点で、ファウラーはすでに「ここ数カ月、ゲームは正しい方向に向かっている」と語っていた。肉体的な不調に苦しんだ時期があったことを認めつつ、「痛みのない状態でプレーできるようになった」ことが、成績向上の最大の要因だと分析している。
この頃のファウラーは、スコアを追い求めるよりも、まずは「安定したラウンド」を重ねることに重点を置いていたようで、「70台のスコアを68に、もっと頻繁に変えたい」と述べ、自身のプレーに満足感を示しながらも、さらに上を目指す姿勢を明確にしていた。
トップ50入りをかけた戦い
先週の「フェデックス・セントジュード選手権」では、生き残りをかけた切実な思いがにじみ出ていた。
「トップ50に入り、来年のシグネチャーイベント出場権を得る」という目標を掲げ、1日目(「66」でトータル4アンダーの7位タイ)、2日目(「69」でトータル5アンダーの15位タイ)と安定したプレーを見せる。しかし、「もっと多くのパットを決めたい」と語り、決して満足していなかった。
しかし、この厳しい状況は、ファウラーにとってポジティブなものだったようだ。「(フェデックスカップの)順位が、通常よりも少し違う気持ちにさせるか?」という質問に対し、「我々は戦っている。自分たちを良い位置につけ、後半で追い上げるチャンスを得たい」と、一打一打に集中する重要性を語った。
最終日、彼は「フロントナインで良いスタートを切る」ことに焦点を絞り(結果的にフロントナインはイーブンだったが)、3日目の6位タイを最終日も守り、トップ50入りという目標を達成。安堵と達成感を胸に、プレーオフ第2戦へ駒を進めた。
追いかける立場の「心地よさ」
先週の「フェデックス・セントジュード選手権」で、まさに崖っぷちからプレーオフ第2戦への進出を決めたリッキー・ファウラー。彼の戦いは今週の「BMW選手権」で再び「綱渡り」の最終日を迎えることとなる。しかし、ファウラーの心境は、これまでの苦闘を経て、ポジティブな変化を遂げていた。
プレーオフという「背水の陣」の状況が、「良いプレーをしなければならない」というシンプルな思考を促し、かえって彼を「楽な気分」にさせているという。54ホールを終えて通算6アンダー、8位タイという好位置につけ、フェデックスカップ・ランキングも週の初めの48位から暫定32位へと大きく順位を上げた。しかし、最終戦「ツアー選手権」の出場権(30位以内)獲得には、あと一歩届かない位置だ。
この状況を、ファウラーは冷静かつ前向きに分析している。「中にいて順位を守ろうとするよりも、外から見ている方がずっといい」と彼は語る。トップ30圏内の選手たちがプレッシャーを感じるであろう状況を横目に、彼は追いかける立場を心から楽しんでいるようだ。自らの運命は自らの手で掴むという、彼のポジティブな姿勢こそが、今シーズン何度も見られた奇跡の原動力となっている。
最終日を前にした彼の言葉には力が漲っている。「明日、もう少し良いスウィングができればいい。今日はいくつかパットが入ってくれたのは良かった」「明日も良いラウンドを組み立てることができれば大丈夫だ」。具体的な目標として「トップ5に入れば確実に(ツアー選手権に)行ける」ことを意識しつつも、彼は目の前のゴルフに集中する姿勢を崩さない。
数々の苦難を乗り越え、心技体ともに再構築してきたリッキー・ファウラー。苦闘の先に掴んだ「シンプルさ」と「集中力」が、彼を最終戦の舞台へと導くか。ファンはその勇姿を固唾をのんで見守っている。