タイの首都バンコク郊外に難易度の高いリンクスが出来て話題になっていると耳にした。設計は高評価のコースを手掛けているだけではなく、世界的な名門コースを数多く改修しているギル・ハンスだと分かった。しかも1917年チャールズ・ブレア・マクドナルドが手掛けたニューヨーク州ロングアイランドのリドーCCをオマージュしたというではないか。これは現地に飛ぶしかない、早速クラブを担いでバンコクに向かうことにした。

聖地セントアンドリュースで生まれたパー3の基本エデン
3番ホール/206・175・148ヤード
パー3(EDEN)

セントアンドリュース(オールド)の11番(172ヤード/パー3/High)をオマージュしたホール。同様のザ・ナショナルGLの13番(170ヤード/パー3)、リドーCCの3番は175ヤードだった。

打ち上げになるホールで、グリーン右手前には幅のあるバンカーがあり、このバンカーからグリーンまでは距離があることと、グリーン中央手前にはポットバンカーがあっていずれも入れてはいけないバンカーだといえる。レギュラーティからなら距離的には難しくないがグリーンの傾斜はかなり強いと感じた。

グリーン奥はウェイストエリアが囲んでいるのでオーバーはしてはいけない。このエデンと名付けられたホールはセントアンドリュースにあり、戦略性に優れたパー3ホールのお手本と評価されている。

距離があり難しい、最短ルートはなお難儀で海峡を渡れない
4番ホール/606・568・532ヤード
パー5(CHANNEL)

リドーCCの4番には、505ヤードと466ヤードのルートが2つあり、飛距離に応じてルートが選択できる。HC1の難ホールで、ドーバー海峡を望むイングランドのリトルストーンGC(1888年)の16番(464ヤード/パー4)がデザインソースになっていて、やはりHC1の難ホールだ。

バリシアーGLの4番は、右ドッグレッグで1打目は池越えで左側の島に向かって打つ。2打目も池越えで攻めることからチャネル(海峡)とされる。フェアウェイは大きな池に浮かぶ島状で、グリーンまで2ルートがある。

ひとつは大きな島の左側から攻める3オンルート。もう一つはチャレンジングな池越えで小さい島から最短でグリーンを狙う2オンルートであり、飛距離とともに方向性が求められる。

2オンルートの島の周囲は、ウェイストエリアなのでフェアウェイは外せない。1打目を首尾よく島にランディングさせたら2オン可能となり、ゴルファーの挑戦意欲を喚起させる造りになっている。このデザインタイプはアメリカではリドーCCが最初だった。

1打目をうまく打てても、やや上りの2打目も池越えでミスショットはできない。グリーン手前にはフェアウェイ幅と同じバンカーが横たわり、しかもグリーンまで距離があることから脱出してピンを狙うのはそれなりの技量が求められる。

グリーン自体はかなり広く、ピンの位置により距離のあるパッティングを強いられる。パー5なので無理をせず慎重に攻めたいホールだ。

左の池が気になるので大回りで無難に攻める
5番ホール/455・409・364ヤード
パー4(CAPE)

マクドナルドは、ザ・ナショナルGLオブ・アメリカの14番(355ヤード/パー4)、バミューダのミッドオーシャンCの15番(400ヤード/パー4)にウォーターハザードを斜めに横切って攻める“ケープ”というホールをデザインしている。

バリシアーGLの5番“ケープ”は、左ドッグレッグで距離のあるパー4。1打目はハザードに限りなく近づけ、2打目以降を短い距離で攻めるのが基本的な攻略法。

ケープが多くのコースで採用されている理由のひとつは、斜めに打つという攻めにくさから錯覚しやすくミスを誘発するからだろう。飛距離に自信があれば池を横切ることができ、残り距離もかなり少なくなるが危険であることには間違いない。

フェアウェイは大きく左に曲がり、構える方向をミスすると4番から続く池に入れてしまう。だが意識して右に打つとグリーンエリアまで続くウェイトエリアに入れてしまう可能性も高い。

フェアウェイはやや右が高く池に向かい傾斜していることから、グリーンまで遠くなっても右寄りから攻めていくのが安全だといえる。

左右のウェイストエリアが曲げるなと囁く
6番ホール/407・390・352ヤード
パー4(PLATEAU)

6番パー4の“プラトー”は、リドーCCでは2番(421ヤード/パー4)とされ、ザ・ナショナルGLオブ・アメリカでは11番(434ヤード/パー4)だ。右ドッグレッグのパー4で左はウェイストエリアとバンカー、右には効果的なバンカーが3つ連なり、さらに左方向にもバンカーが3個ある。

画像: 6番ホール/407・390・352ヤード/パー4(PLATEAU) 手前は7番ティーイングエリア

6番ホール/407・390・352ヤード/パー4(PLATEAU) 手前は7番ティーイングエリア

ホールは右ドッグレッグでフェアウェイは狭く感じる。ティーショットを右に打ちすぎるとマウンドによりグリーンは視認できないので方向性には要注意だ。グリーン右手前、左側にもバンカーがあり、オーバーするとウェイストエリアに入ってしまう。グリーンは奥に向かって上りになっていたがグリーンスピードは想定よりも速く感じた。

広大なウェイストエリアに捕まる恐怖
7番ホール/506・479・452ヤード
パー5(HOG´S BACK)

バリシアーGLの2番はパー4ながら510ヤードあり、ここ7番はそれよりも短い506ヤードでパー5という謎は、ホッグスバック(イノシシの背の意味)でライが複雑でショットが難しいのかと考えたが、正解は1打目に正確性が求められ、プレーラインから外れるとイノシシの背からボールは転がりバンカーや窪みに入れてしまうからだった。

右ドッグレッグで、フェアウェイはウェイストエリアで2分割されている。1打目は広大なウエストエリアに浮かぶ島状のフェアウェイを狙う。フェアウェイ手前縁にはバンカーが連なり、フェアウェイ右側にも複数のバンカーがありプレッシャーを与える。

グリーン手前にはフェアウェイ幅と同じ幅の長大なバンカーがありグリーンまで約170ヤードと距離があることからピンに寄せるのは至難の業になることだろう。グリーン左側には8番につながるウェイストエリアがありフックボールには要注意。

グリーンへは打ち上げになり、面積は大きいがその分アンジュレーションが強い。リドーCCの7番(469ヤード/パー5)、ザ・ナショナルGLの5番(478ヤード/パー5)にもホッグスバックがある。

フェアウェイの中央が山なりになっているホールを日本では“馬の背”と呼ぶ。川奈ホテルGC富士の7番(393ヤード/パー4)はフェアウェイに高低差があり左はフラット、右側はホッグスバックになっている。

最も気になり最も気に入った奇怪なビアリッツホール
8番ホール/217・200・179ヤード
パー3(BIARRITZ)

グリーン周辺が、すべてウェイストエリアになっている距離のあるパー3。

グリーンは長方形の縦長。ほぼセンターにスウェルと呼ばれる窪地があり、前方、左右、後方ともウェイトエリアがガードしている。日本にはない形状のホールであり、大半のゴルファーには馴染みはないだろうが世界的には名高いホールでもある。

取材日は連日アゲンストの風。レギュラーから179ヤードだから実質190ヤード強だった。乗せるだけでも難しいが、ホール形状を考えると左右には外したくない。グリーン中央には馬の背のようなマウンドがありピン位置によってマウンド越えのパットになるだろう。

当日、グリーンセンターを横断するスウェル(窪地)は花道扱いになっており、距離感が求められる打ち上げのアプローチになる。

画像1: 8番ホール/217・200・179ヤード/パー3(BIARRITZ)

8番ホール/217・200・179ヤード/パー3(BIARRITZ)

このデザインはマクドナルドとレイナーが、1911年に創設されアメリカ屈指の富裕層だけが集うパイピングロックCの9番(227ヤード/パー3、コースはレイナーの単独設計とされる )、イエール大学の9番(225ヤード/パー3・1926年)でも採用している。

リドーCCの8番(234ヤード/パー3)の名称はOCEANで、当時のアメリカでは最も難しいパー3ホールだった。スコットランドのプロ、トム&ウイリー・ダン兄弟が設計したフランスのビアリッツにある、ゴルフ・ド・ビアリッツの3番をオマージュしたもので、1920年にハリー・コルトが改修している。ちなみにビアリッツはナポレオン3世が愛した海岸沿いの保養地だった。

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