
マルタン・クーブラ。「スタッツを見ると、飛距離は平均的ですが、フェアウェイキープ率とパーオン率が高いショットメーカーです」(佐藤プロ)
ゴルフ大国とは言えませんが、ボクらの時代から選手の数が多いのがフランスです。DPワールド(欧州)ツアーではイングランド、南アフリカ、スペインなどに次いで多いのですが、なかなかスター選手が生まれないのもフランス。メジャーチャンピオンに至っては、1907年のアーノード・マッシーがいるだけです。しかし、18年にはライダーカップ、22年には世界アマ、そして昨年はパリ五輪が開催され、ゴルフブームに火が付きそうな雰囲気も。その先陣となる期待がかかるのが、今回紹介するマルタン・クーブラです。
5月のトルコオープンで、欧州ツアー初優勝。欧州ツアーの選手は情報が少ないのですが、わかっていることはカンヌ在住の22歳だということ。フランス国内のアマチュアの試合ではいくつも優勝しており、22年のフレンチアマでは2位に5打差をつけての圧勝。世界にその名が知られるようになったのは翌23年。南アフリカアマでの36ホールのストロークプレーでメダリスト、同大会のマッチプレーで優勝、そして南アアマストロークプレー選手権で優勝と、「南アフリカのアマチュアゴルフ界のトリプルクラウン」と呼ばれる3つの大会で史上初の〝三冠〞を達成しました。
ちなみに南アアマの予選でもあるストロークプレーは、プレーオフも行って優勝者を決めます。その対戦相手は、アルドリック・ポトギーター。今年6月のロケットクラシックでPGAツアー初優勝を果たした〝超飛ばし屋〞の20歳に勝ちました。さらにストローク選手権では、6打差で圧勝しました。
また同年、欧州・チャレンジツアーのスペインの試合で、3人のプレーオフを制して、史上7人目のアマチュア優勝を果たします。その翌週にプロ転向。24年はチャレンジツアーに25試合出場して7試合でトップ10。ランク17位でDPワールドツアーに昇格し、今シーズンを迎えます。
そしてルーキーイヤーとなった今年は、現時点(8月13日現在)で17試合に出場し、優勝したトルコを含むトップ10フィニッシュが6試合。ポイントランク8位でルーキー・オブ・ザ・イヤーの最有力。来年はかなりの確率でPGAツアー挑戦となることでしょう。
実は現時点で彼を有名にしているのは髪形で、トルコで優勝した際には、実況が「世界一のカーリーヘア」と紹介しました。とにかく帽子を取ると溢れ出す金髪が、可愛い顔立ちとよく似合います。英語は流ちょうとは言えませんが、インタビューでも明るい表情とコメントで、人気も上昇中のようです。
これまでフランス人でライダーカップに選出されたのは、カーヌスティの悲劇のジャン・バン・デ・ベルデのほか、トーマス・レぺ、ビクトル・デュビソンの3人しかいません。ちなみにボクは、デュビソンのゴルフが大好きでした。09年の世界アマランク1位で、欧州ツアー2勝。実力的にはスター選手になって当然の選手でしたが、メンタルをやられてその座をつかみ取れませんでした。
そうした先輩たちの〝悲劇〞を乗り越えて、22歳のクーブラがフランスゴルフ界を引っ張ってくれることに期待します。
PHOTO/Getty Images
※週刊ゴルフダイジェスト2025年9月2日号「さとうの目」より