
解説/武田登行プロ
豊富なアマチュアの指導経験を持ち、理論的なレッスンには定評があるスウィング研究家。JGTOツアープレーヤーでもあり、スウィングメカニズムのスペシャリスト。松原ゴルフアカデミーヘッドプロ。
100Y以内でグリーンオンできる技術が必要
スコア90を切ったことがない。そんなアマチュアには、どんな技術が必要なのか? スウィングに詳しい武田登行プロに聞いた。
「ボクがよくレッスンで言うのは、80台で回るなら100Y以内で確実にグリーンをキャッチできる技術が必要ということです。90台のアマチュアなら100Y以内でもグリーンをよく外します。これは“ボールをつかまえられない”からなんです。ショートアイアンのようなロフトが寝たクラブは、フェース面でボールが滑りやすいです。そうなるとコスリ球になり、番手通りの飛距離が出せません。ボールをしっかりつかまえる必要があるのですが、その答えがフェースの開閉にあります。最近のレッスンは『フェースは常にスクエア』『体と腕を同調させて』といったワードが多く、フェースをターンさせないスウィングになりがちです。これではボールはつかまらないです。7Iと8Iの飛距離が変わらないなどは、ボールがつかまっていないことが原因でしょう」
すべてのクラブで、ボールをつかまえる技術が必要だと語る武田プロ。だが、ショートアイアンは、そもそもつかまりやすいクラブ。なぜできないのか?
「簡単に言うとヘッドスピードの違いです。ヘッドスピードが速いショットは、遠心力によってフェースがターンしてくれます。ところがショートアイアンはそうはいきません。だからフェースの開閉が大事なんです」
3つのステップ
ステップ① ベストスコア更新はグリーンを狙うショットがカギ
「スコアメイクで考えるとグリーンを狙うショットが大きなカギです。その目安は80台なら100Y以内で確実に乗せる、70台なら150Y以内で確実に乗せることです。ここがベスト更新の分かれ目です」(武田プロ・以下同)
プロはフェースを閉じる
・高さが出る
・スピンがかかる
・飛距離が出る

ヘッドスピードが遅いショートアイアンこそつかまえる意識が大事
ステップ② ボールがつかまれば番手通りの距離が打てる
「プロや上級者はつかまったボールが打てます。フェースを閉じながらとらえるため、ボール初速が上がり、スピンがかかって球の高さも出せます。だから番手通りの距離が打てるんです」
アマチュアはフェースが開く
・高さが出ない
・スピンがかからない
・飛距離が出ない

つかまえられれば番手通りの距離が打てる
ステップ③ ボールをつかまえるにはフェースターンが不可欠
「フェースが開いたままでは、ボールはフェース面を滑るだけで、ボールをつかまえられません。フェースの開閉(フェースターン)がなくては、ボールは絶対につかまらないんです」
長いクラブほど……遠心力が大きいので勝手にフェースが返る
「ドライバーやFW、UT、ミドルアイアンなどはフルショットします。ヘッドスピードが速いため、遠心力でフェースが返ります。クラブが勝手につかまえてくれるんです」

フェースターンが大事
ボールがつかまるインパクト
ボールをつかまえるには、フェースターンが必要なことはわかったが、フェースの開閉は、どう意識するといいのか?
「クラブはすべて偏重心で、シャフト軸線より後ろにヘッドの重心がある構造になっています。そうなるとインパクトゾーンでは、シャフトが装着されているネック側であるヒールが先に動き、後からトウが動くことになります。フェースターンとは、ヘッドのヒールをトウが追い越すことなんです。これがフェースの開閉であり、トウがヒールを追い越すことで“ヘッドが走る”わけです。ですから、ボールをつかまえるには、ヘッドのトウがしっかり動くことがキーワードになります」
フェースを開いて閉じる。単純にそう考えるアマチュアは多いが、ヘッドのトウを動かす。なかなか難しそうだ。
「最初は『フェースを返す』でいいです。それでもトウは動きますから。まずはトウが追い越す。その感覚をつかみましょう。では、トウを動かすにはどうするのか? それが手や腕の使い方にあります。右手と左手を同方向に動かすドアスウィングでは、フェースはスクエアのままですからトウは動きません。ですので、インパクトで左手を止め、右手が追い越すイメージを持ってみましょう。これがフェースを返す動きになります。この動きだけで、ボールは十分につかまるはずです。ただ、この動きだと引っかけやチーピンが出てしまうんです……」

トウがヒールを追い越す。これがつかまりの正体
ボールがつかまる3つのポイント
ポイント① トウがヒールを追い越す
「インパクト前後のヘッドの動きを見るとわかりますが、トウがヒールを追い越しています。これがフェースターンです。トウはヒールより遅れて入ってくるため、追い越す動きは必要不可欠です」

少しフェースはかぶる
ポイント② 右手と左手は別々に動かす
「アマチュアは右手と左手が同じ方向、同じスピードで動きます(ドアスウィング)。右手と左手は別々に動かさなければ、トウは動かせない、つまりフェースターンしないんです」

左手を止めて右手が追い越すのが簡単
ポイント③ インパクト後グリップエンドが見える
「トウがヒールを追い越す動きができるとフォローでは、グリップエンドが自分の体側に向きます。左つま先の前でグリップエンドが見えれば、トウがしっかり動いた証しになります」

「フォローでは、左手の上に右手が重なる状態になります。トウの動きはヘッドの走りでもありますから当然、インパクトも強くなります」
これ試してみて
できるだけ小さい振り幅でボールを飛ばすドリル
「できるだけ小さい振り幅でボールを飛ばすドリルがおすすめ。腰から腰、肩から肩の振り幅でいいです。飛ばそうとするほど、トウをいっぱい動かすようになります」

トウをたくさん動かそう
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▶引っかけやチーピンが出ないフェースターンとは? 「ロフトを起こすだけ」でボールがつかまる
PHOTO/Tadashi Anezaki、Yasuo Masuda
THANKS/松原ゴルフガーデン、サザンヤードCC
※週刊ゴルフダイジェスト9月9日号「ロフトを起こしてボールをつかまえる」より一部抜粋