
ペイン・スチュワート賞を受賞したポール・エージンガー
99年に不慮の飛行機事故で亡くなったペイン・スチュワートに敬意を表し2000年に創設された同賞は彼の「人格、慈善活動、スポーツマンシップに通じる価値観を持つ選手」に贈られる。
設立から四半世紀たってようやく選ばれたエージンガーは「この賞を受賞したことは人生でもっとも誇らしい瞬間の一つ」と喜んだ。
中継された受賞式のスピーチを彼は「ペインにはゴルフを超えた目標がありました。人生を変えるという目標。我々もその意志を受け継ぎ周りにいるすべての人の人生を変えていきます。ペイン・スチュワートのように」と涙ながらに締めくくった。
いたずら好きだったスチュワートとエージンガーはお互いの悪口を言い合いながら友情を育んだ。スチュワートがリードを続け優勝目前だった93年のメモリアルトーナメントでエージンガーが最後にバンカーからチップインバーディを決めて逆転Vを飾ったときは親友に駆け寄り「本当にごめん」と謝った。
「大丈夫さ。ゴルフはそういうゲームだから」とスチュワート。さぞ傷心しているだろうとロッカールームに戻って慰めようとしたらエージンガーのシューズがスチュワートのいたずらでバナナの皮まみれになっていた。
ツアー12勝のエージンガーだがメジャー無冠最強の時期が長かった。殻を破ったのは93年の全米プロ。グレッグ・ノーマンをプレーオフで下しての優勝だった。ライダーカップのキャプテンを務めるなど栄光もあったが苦難も。右肩のリンパ腫を患い放射線治療と化学療法で克服。私生活では貧困と闘う人々の支援を続け、現在はPGAツアーチャンピオンズのテレビ解説を務めている。
彼の著書には生前のスチュワートの言葉がつづられている。「エージンガーは勇気と信念を持ち人々が真似したいと思えるような素晴らしい友人です」。まさに受賞にふさわしい。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年9月16日号「バック9」より