「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する連載。

左足に障害を持つ小林茂さんは、レッスンプロとして生計を立てています。関東練習場連盟のレッスンプロの資格があるのです。

「今、レッスンは週4日やっています。減らしたんです。もう70だよ(笑)。少し前までは週5日、びっちり教えていました。練習場の経営者が変わったタイミングでお願いしたの。でも、なかなかやめさせてくれないんだもの」

そう、小林さんのレッスンはとても人気があります。その教えはシンプルでわかりやすい。筆者も以前、アプローチを教えてもらい、確かに寄るようになりました。

画像: 職場でもある練習場。ここに勤務しながら多くのアマチュアにレッスンを行う。「このへんの方は、ほとんど僕が育てたようなものです(笑)」

職場でもある練習場。ここに勤務しながら多くのアマチュアにレッスンを行う。「このへんの方は、ほとんど僕が育てたようなものです(笑)」

『カッコつけずに基本は転がしで、距離感は番手を変える。ボールは右足の前。バックスウィングは低く、体を固めずに、パターと同様へそを左右に動かすイメージで』

アマチュアゴルファーを上手くさせる自信はありますか、と聞くと、「はい」と答える小林“プロ”。
生徒に一生懸命向き合い、教えるときも、とにかく明るいのです。

「僕が明るいというけれど、足のこととか、いろいろあったわけじゃん。だから今こうして、ゴルフが仕事で、ゴルフをやっていられるんだから、こんな幸せなことないんですよ。だから、僕にはあまり挫折ってないんです」

いや、挫折がないのではなくて、きっと、自分の努力と工夫で挫折を乗り越えてきたんですね。

「そうね、こういうふうに、前向きにいれば、挫折なんて感じないんじゃないかと思うんですよ」

年齢、障害……体が変化してしまったら、今の自分に“必要なこと”をやればいい……。

「諦めずに工夫したらできるんですよ。前にやっていたことができなくなることも多いけれど、そのときは昔のやり方をきっぱりやめて、新しいことをやってみるのもいいんです」

画像: 障害者ゴルファーは皆、苦労しているから研究していると小林さん。レッスンのときは、より熱が入ります。「動くところをいかに使うかが肝心です」

障害者ゴルファーは皆、苦労しているから研究していると小林さん。レッスンのときは、より熱が入ります。「動くところをいかに使うかが肝心です」

障害者ゴルファーのレッスン会でも、教える立場で参加することもある小林さん。
「障害者への教え方はまた違います。どこが動かないか、逆に動くところはどこかを最初に見て、それを最大限に使って飛ばす方法を考える。頑張って取り組めばどんな人でも技術は上がる。普通の人も同じですよ」

左ひざを複雑骨折して左右の足の長さが違う小林さんもまた、16歳でゴルフを始めてからずっと、自分自身のゴルフに関しても工夫し続けています。

「今はね、トップで止めてから打つように努力してるの。柔軟性や筋力が落ちるから体を使えなくなる。すると切り返しが早くなって手と体がバラバラになって曲がる球になっちゃう。だからなるだけ体をねじって、トップで止めてから打つんです。練習では1秒くらい止めて打ちますし、コースではなかなかやりづらいけど意識はしています。そうすると力がボールに集まるようになるんですよ」

画像: 8月28~29日に岐阜・恵那峡CCで行われた「JAPAN WR4GD TOUR SERIES」の「東海マスターズWR4GDカップウイーデイシリーズ」。優勝を目指して参加し、結果は3位。「まだまだですね……」

8月28~29日に岐阜・恵那峡CCで行われた「JAPAN WR4GD TOUR SERIES」の「東海マスターズWR4GDカップウイーデイシリーズ」。優勝を目指して参加し、結果は3位。「まだまだですね……」

目下の目標は、「もう1度、何かの大会で優勝すること」。

「エージシュートもね、出したことがないから目標ではあります。この前、前半を2アンダーで回ったから、出るかなあと思ったけど、なかなか出ませんねえ」

今も普段はバックティからプレーする小林さん。そこはプロとして譲れない部分です。

「でも、まだまだ努力が足りないなあ。やっぱり今ここに居られるのも皆のおかげなんだからさあ。僕、今年、このへんの地区の区長をやらされちゃって。日曜日にしなければいけないことがけっこう多いんです。集まりも多いし。これから敬老会の用意もしなくちゃいけない。だから日曜日の試合に出ることは難しいときも多くなりました。でもまあ、皆がやってくれというから、皆のためにはなるからいいかなと思っています」

画像: 現在取り組むドリルは「トップで止める」。「これでインパクトに力が集中します。切り返しが早くなると、体だけ先にいってクラブが来ないとか、逆にクラブだけが来るとか、そういう動きが出るようになるんです」

現在取り組むドリルは「トップで止める」。「これでインパクトに力が集中します。切り返しが早くなると、体だけ先にいってクラブが来ないとか、逆にクラブだけが来るとか、そういう動きが出るようになるんです」

それにしても、ゴルフって飽きないよねえ、と笑う小林さん。

「本当にバカじゃないと思われちゃうかも(笑)。でも、まだまだこうしたいなんていう思いが出てくる。ゴルフって、いつも違って同じ状況がないし、やればやったなりに成果は出ると思っています。だから今でも、少しでも上手になるように練習するんです。それがまた、楽しいでしょう」

 とにかく明るい小林さんは、70歳になっても、とにかく前を向いて進んでいるのでした。

小林茂のアプローチ、プチレッスン!

「基本は“転がし”。ボール位置は右足前。転がすときはシャットめに上げてフック系で打つ。上げるときはボールの位置は変えずにフェースを開いてインサイドアウトに振る」

画像: アプローチ教えます

アプローチ教えます

転がしアプローチ

画像: ボールは右足前

ボールは右足前

上げるアプローチ

画像: フェースを開いてインサイドに振ろう

フェースを開いてインサイドに振ろう

写真/日本障害者ゴルフ協会、増田保雄

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