
解説●堀越良和
豊富な試打経験に裏打ちされた知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発に携わる、“キング・オブ・試打”。クレアゴルフフィールド所属
近年のアイアンはやさしく、ラクに打てるモデルが多い。今回、ギアに詳しい堀越良和プロに現代アイアンの特徴を聞いた。
「マッスルバックが主流だった時代は、上から打ち込む“ダウンブロー”で打たないとスピンが入らず、ボールも上がりませんでした。しかし、ダウンブローは技量や体力が備わっていないと難しい打ち方です。近年は重心が低く、重心深度は深くて、重心距離の長いアイアンが主流です。重心が低くなることによって、緩やかな入射角、いわゆる“レベルブロー”で球をとらえたときに、フェースの下側でヒットしやすくなります。あくまでもアイアンの打ち方はダウンブローが基本ですが、近年のやさしいアイアンはフェースの下面でボールをとらえても適正なスピン量で飛距離が出やすい設計なので、レベルブローでも性能を発揮するモデルが多いです。
加えて、重心が深いので球は上がりやすく、ヘッドの重心位置からシャフトの中心を結ぶ重心距離が長いので、ヘッドの動きが安定しやすいです。つまり、レベルブローで打ってもスピンが入り、飛距離が出て、球も上がる。加えて、真っすぐ飛ぶアイアンが現代アイアンのトレンドですね」
続いて、現代アイアンの種類と特徴を堀越プロが教えてくれた。

現代アイアンには3つのタイプがあります
「現代アイアンは大きく分けて3つのタイプに分類できます。まず、マッスルバックおよびプロキャビタイプ。薄いソールでバックフェースの構造がほとんど均一で重心は高く、深度が浅いので、ダウンブローでとらえた場合に、性能が発揮されます。重心距離が短いので、操作性は高いです。
2つ目が、キャビティアイアンですが、重心が低く、ダウンブローはもちろんレベルブローでも打ちやすい設計になっています。ロフトが立っているため飛距離は出やすく、重心深度が深いため球も上がります。重心距離の長いモデルが多く、ヘッドの挙動が安定しやすく、寛容性が高いです。
最後に中空アイアン。ヘッド内部の空洞周辺に重量が配置されているので、ヘッドの慣性モーメントが大きいのが特徴です。この空洞にふたをするようなバックフェース側の形状の関係で重心は高くなりやすいです。また、重心が深いモデルが多く、重心の高さの面で見たらダウンブローで打てて、球は上がりやすく、レベルブローでも打てます。重心距離は長く、ヘッドの挙動が安定しやすいです」
アイアンの性能は3つのデータでわかる
①高重心
弾道に影響。高重心は低弾道で、打ち込むとスピンが入りやすい。低重心は弾道が高くなりやすい。
②重心深度
スピン量と許容性に影響。重心が深いモデルはスピンが入りやすく、ミスヒットにも強い。
③重心距離
操作性に影響。長いとヘッドが動きにくく、挙動が安定しやすい。短いモデルは、操作性が高い。
現代アイアンと相性のいいスウィング
中空
重心は高くて深くて長い
空洞を閉じているバックフェースの構造上、重心は高い一方、空洞周辺に重量が配置され、重心深度は深く、重心距離は長い傾向がある。
→ダウンブローでもレベルでもOK

中空
キャビティ
重心は低くて深くて長い
バックフェースのくり抜いた部分の重量が後方とソール側に配置され、重心が低く、深い。重心距離は長めで球は上がり、安定性が高い。
→ダウンブローでもレベルでもOK

キャビティ
マッスルバックプロキャビ
重心は高くて浅くて短い
キャビティに比べ、重心高がスコアラインおよそ2本分高くて、重心深度は浅いのが特徴。重心距離が短いため、操作性が高い。
→ダウンブロー

マッスルバックプロキャビ
自分がフェースのどこで打っているかを把握しよう
「フェースのボールをとらえているポイントと、ヘッドの入射角度は密接な関係にあります。アマチュアの場合、フェースのどこでボールをとらえているかを把握していない人も多いと思いますが、市販で売っている打点をチェックするシートやスプレーを活用して、当たっているポイントを把握することで、使うべきアイアンのタイプが絞られてきます。フェースの下部でとらえている場合は、ヘッドが緩やかに入っているので、キャビティや中空。ヘッドの中央や上めでヒットしていたら、しっかり打ち込めているので、中空やマッスルバックがいいでしょう」

「ミートしているポイントで選ぶべきアイアンが変わります」(堀越プロ)
▶マッスルバックは難しい?キャビティ・中空との打ち方比較で見えた最新傾向
PHOTO/ Yasuo Masuda
THANKS /クレアゴルフフィールド
※週刊ゴルフダイジェスト9月9日号「現代アイアンの正しい打ち方」より一部抜粋