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デジタルを駆使して軟鉄鍛造が大きく進化
大手量販店や工房に話を聞くと、アイアンはいま軟鉄鍛造が売り上げの上位を占めているという。その理由についてスタジオCGAの山崎康寛さんに話を聞いた。
「大きな魅力はやっぱり打感の良さでしょう。それと“FORGED”と刻印されているという満足感。この2つが大半です。これまで軟鉄鍛造のモデルはマッスルバックやセミキャビのような上級者だけが扱えるモデルばかりでした。しかし、今は技術開発が進み、軟鉄鍛造でも球が上がりやすくミスヒットに強いやさしいモデルが増えてきた。値段が手頃になったのもあり人気の要因はそこにあります」
なかでも、大きく進化した要因に「3D CAD」が大きな役割を占めているという。
「軟鉄鍛造の打感を損なわずに、どうすればミスヒットに強くできるか、の最適値のデータをコンピューターに入力するだけで、今は高精度の成型がオートマチックにでき上がる。それも安価で大量に生産できる。正直今はアジア生産のほうが明らかにその技術力は進んでいます。欧米はFORGEDに対してこだわりはありませんが、日本のマーケットだけに絞っても軟鉄鍛造をベースにして開発する価値はあるんです」

「加工技術が明らかに上がり、設計の自由度が高まりミスに強くなった」と話すのはスタジオCGA店長の山崎康寛さん。クラフトマンでありながらトップアマの顔も持つクラブを知り尽くしたスペシャリストだ
いま軟鉄鍛造アイアンは3カテゴリーに分類される

ネックからフェースにかけて一体で成型。いまどきの1ピースは、やさしさに重きを置いて、最適な重心位置を設計の段階から割り出してデザインを行っている。なので1ピースでも一定の寛容性をキープ。1ピースならではの美しさも魅力だ。
●メリット
軟鉄鍛造ならではのピュアで軟らかい打感と見た目の良さ。
●デメリット
一体成型な分、やさしさを追求するのに限界が生じる。

ネックからフェースにかけて一体で成型しているが、中にウェイトや制振材を加えて、やさしさや打感の良さを追求。さらに、わずかな製品の個体差をウェイトによって微調整できるのも魅力だと山崎さんは語る。
●メリット
ウェイトによって重心位置を調整できるので設計の自由度が高い。
●デメリット
トウ側にボルトが入り、それでデザイン性を損なうモデルも……。

ネックからバックフェースにかけては軟鉄鍛造だが、フェースは強度の高い薄型の金属を使用するなどのハイブリッド仕上げ。薄型フェースによりボール初速を上げて飛距離性能も満足できる。より細かなフェース設計ができる。
●メリット
初速を上げて飛距離性能が◎。球の高さ、ミスヒットの寛容性は高い。
●デメリット
1ピース構造に比べて弾き感があり、やや硬めの打感になる。
山崎さんに聞いた「軟鉄鍛造の素朴なギモン」

Q.1 同じ軟鉄を使っても鍛造と鋳造ではやっぱり違う?
A. 昔ほどの差はありませんが鉄の密度はやっぱり違います
>「昔よりも高品質になりましたが、鋳造は金属を型に流し込むので密度にムラができてしまうんです。鍛造は均一に調整できます」

Q.2 軟鉄の素材でS20CとS25Cで性格は変わる?
A. 数値が小さいほど軟らかい。シニアはS25Cに慣れているはず
>「今はS15Cまで使ってますが、軟らかすぎても打感がぼやけるので、ミズノのようにS25Cにこだわっている会社も多いんです」

Q.3 ライ角やロフト角はどれぐらいまで調整できる?
A. モデルによって変わりますが平均±3度くらいまで調整できます
>「軟鉄は曲げやすいのですが、表面のメッキによって曲げ幅の上限が変わります。ピンは8~9度まで調整できます」
Q.4 FORGEDが売れているのは日本だけでしょうか?
A. 海外は軟鉄鍛造だから売れるというわけではなさそうです
>「欧米だけでなく、日本でも若いゴルファーは軟鉄鍛造にこだわりを持っていません。ほかの金属でも十分打感が良くなりました」
(つづく)
PHOTO/Tomoya Nomura、Kosuke Mori、Hiroaki Arihara
SPECIAL THANKS/GC成田ハイツリー
※週刊ゴルフダイジェスト2月4日号「軟鉄鍛造アイアン打ち比べ」より