※取材・撮影/田邉安啓

原 英莉花
1999年2月15日生まれ。神奈川県出身。ジャンボ尾崎に師事し、2018年プロ入会。
黄金世代を代表するひとりとして、日本女子オープン2勝を含む、JLPGAツアーで5勝を挙げている。昨年のアメリカ女子ツアーの最終QTの成績によりエプソンツアーに出場し、来季のアメリカLPGAツアーの出場権を獲得した。
「来年はアメリカ『LPGAツアー』で戦います」

2023年に腰の手術をしてから、瞬発系のトレーニングがあまりできなかったという原だが、アメリカに来る前には、ダッシュやサーキットメニューもこなし、瞬発力や心肺機能を上げるトレーニングを十分にやれたという
GD: 原プロは、なぜ戦いの舞台をアメリカに移そうと考えたのでしょうか?
原: 実は日本の春が苦手で、どこかソワソワする感覚があるんです。それが夏まで響いてしまって、毎年8月になってようやく戦えるモードになるんです。そんな自分を変えたいという思いがありました。
GD: スロースターターの自分を打破したいということですね。
原: それと、日本では毎年同じコースを回って、悪いイメージが残ってしまったり、年間のスケジュールが習慣化してしまっていた自分がいました。本当はもっとできるんじゃないか、と感じることもあったし、長いシーズンのどこにモチベーションを置けばいいのか、わからなくなっていたのかもしれません。
GD: そういう意味では、まったく初めてのコースで、環境も大きく変わって、アメリカはどうですか?
原: そういうことを忘れるくらい一打に集中してプレーできています。勝つためにどうやってコースを攻めるか、一試合たりとも予選落ちしないように、どう戦うかの毎日です。

紫外線が強いアメリカでは、サングラスをかけてプレーすることも多い。レンズを通すと、色のコントラストが向上するため、フェアウェイの起伏やグリーンの傾斜、アンジュレーションが見やすくなると言われる。
GD: 以前、ANAインスピレーションと全米女子オープンに出場したとき、初日のスタートホールでつまずいてしまったことがありましたよね?
原: あのときは、調子がよくて飛距離も出ていたんですけど、時差や湿度の違いの影響もあって、いきなりティーショットが右にすっぽ抜けたんです。いまでそんなボール一度も打ったことがなかったのに。それで、私にはスポット参戦は向かないんだなと痛感しました。
GD: あのとき、そんなことを感じていたんですか。
原: もちろん、メジャーに出たいとか、メジャーに勝ちたいとか、抱いていた夢はありますが、あの体験から、もしアメリカで戦うなら、一年を通して戦いたい、という気持ちが強くなっていきました。
GD: 日本では、原プロはあまりアメリカ志向ではないと思われていたようですね?
原: そうかもしれません。でも、実はアメリカに限らず、どんなツアーにも挑戦したい気持ちがありました。自分のなかでルーティン化されてしまうのがイヤだったし、本当はもっとガッツリいきたくて、感情も表に出るタイプなんですけど、ちょっと自分を抑えながらプレーしている部分もあったと思います。だから、新しいところに挑戦して、自分の力をもっと付けたいという気持ちが強くなっていったんだと思います。
GD: それが、アメリカのLPGAツアーを目指した理由だったんですね。
原: もう27になる年なので。自分が納得したところにたどり着きたいじゃないですか。自分で思い描いていたところに挑戦して、やっぱり成し遂げてみたいっていう感じです。

ドライバーを構えたときの見た目と据わりのよさにこだわる原は、エリートの打感にほれ込んで、即決。「これでちゃんと練習すれば、ミスショットは全部、自分の打ち方が原因」と思えるほど、信頼できる一本だという
GD: そんな原プロが、アメリカに来るときに一番気にかけたクラブは何ですか?
原: やっぱりドライバーです。見た目はいいけど、置いたらコロンッ!て転がるモデルは使えなくて。でも、今回のエリートは見た目も据わりもよくて、打感もめちゃくちゃいいんです。打った瞬間、「これだよ~!」ってピ~ンときて、即決しました。

60度のウェッジは、ジャンボモデルと同じソール形状に削ってもらったという。ロフトを58度に立てて、ストレートネックがややグースに見えるように調整している
GD: ウェッジは?
原: ウェッジは、ジャンボさんからいただいたモデルが私の基本なんです。だから、「このバウンスと同じ形にしてください」って、平らめに削ってもらっているんです。
※週刊ゴルフダイジェスト9月26日号「来年はLPGAツアーで戦います」より
===
日本のルーティン化した環境を変え、スロースターターな自分を打破したいという強い決意が明らかとなった前編。続く後編では、エプソンツアーで初優勝した試合の最終日を振り返るインタビューや、苦手なホールでの出来事、試合よりも緊張したという優勝スピーチの様子も話している。続きは週刊ゴルフダイジェスト9月23日号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!