14本の道具があるから体が大きくなくても戦える

現在7215万7784円と2位の金子駆大(5996万5916円)と突き放している(※9月12日現在)
開幕戦で初優勝したと思ったら6月には2勝目を挙げ、しかもそれ以外の試合でもトップ10以内に入る率が高い。2位を突き放して賞金ランクトップ(9月12日現在)を快走している生源寺は、どんなゴルフ人生を送ってきたのか。
「父親の練習について行ってゴルフを始めて、スクールに通いだしたのは小学校4年生です。6年生から試合にも出るようになって、負けず嫌いだからそれなりに頑張っていましたけど、プロになろうとは思っていませんでした」
将来は会社を起こしてビジネスをやるつもりだったという生源寺の考えが変わったのは、同志社大学に入ってからだという。
「水巻善典プロがコーチに来てくれていて、初めて格好いいプロゴルファーに出会い、ゴルフもいいなと思いました」
スイッチが入ってからは着実に実力をつけていき4年生のときにQTを受けてプロ転向。3年後にはシード権獲得とステップアップしてきたが、自信もあったようだ。
「小さい頃からやっていたナショナルチームの人たちとの差は、環境の違いだと思っていたんです。そこはこれから埋められると思っていましたし、早く始めた人は伸び悩んだりするので、追い付けると(笑)。体格面でもフィジカル重視のスポーツだと難しいけど、ゴルフは14本ある道具を使えるから不得意な部分は補えるし、フィジカルで大きい人が毎試合勝っているわけでもないんで、チャンスはあると思っていました」
弱点を克服してレベルを上げてきた

JGTOのスタッツで作る十角形。生源寺が目指すのは大きく綺麗な十角形だ
スタッツを全部上げていきたいから、現在の優先順位はバンカーショットのレベルアップ。「水巻さんにも相談して、ウェッジのバウンスなどを見直しています。砂質の違いに合わせたウェッジと打ち方をパターン化できたらいいなと考えています」
楽して上手くなるなんて 自然の摂理に反している
今季のブレークにはとくにキッカケがあったわけではなく、自分の弱点をひとつずつ克服していった結果だと言う。
「下部ツアーのときに飛距離が足りないと思ってトレーニングをみっちりして、275ヤードから290ヤード以上に伸ばしました。昨年はいろんな環境での経験を積みたかったからアジアンツアーにも出場して、自分に何が足りないのか考えながら練習していました。それでショートゲームもパッティングも良くなったし、全体的に底上げされた感じです」
クセのないきれいなスウィングも、コーチをつけず自分で作り上げたものだという。
「飛距離では勝負はできないと思っていたので、再現性を重視して考えてきました。考えてやってみて、良ければ取り入れてダメなら次を考えてまたやってみて、それをずっと繰り返しています。練習だけだと意味がないから、試合中もやってみて、しっくりこなければ解決するまで考えるし、解決できたらレベルがひとつ上がるんです」
とにかく“考える”という言葉が良く出るところが、彼の強さの本質のようだ。

「体格に恵まれなかったから人と同じことをしても勝てないんです」
「考えることが好きなんです。だから息抜きとか必要ないし、オフも要りません。みんな2週間とか休むけど、僕は何していいかわからないんですよ(笑)」
考えることが楽しいから息抜きも必要なく、クラブを握っていなくてもずっとゴルフのことを考えている“ゴルフオタク”なのだ。彼と話していると野球のイチロー選手と重なるイメージがあり、目標としているPGAツアーでも活躍できそうだと思える。
「もしPGAツアーに行けたらレベルが上がるから、どこで差を出すかまた考えないといけないですけどね。自分でも面倒な性格だなと思いますよ(笑)。でも違和感があったら考えて解決しておかないと後で後悔するのはわかっているので。楽して上手くなることなんてないんです。それは自然の摂理から離れているんです。何か代償を払わないといい結果は得られませんから」
ここまで自分と向き合って深く考えている人はなかなかいないだろう。強い理由に納得だ。
構成/重富由美子
写真/有原裕晶、姉﨑正、大澤進二
協力/ザ・クラシックゴルフ倶楽部
※月刊ゴルフダイジェスト10月号「生源寺龍憲 “考える人”」より
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今回の記事では、生源寺プロの「考える」というゴルフ哲学の核心に迫った。後編では、なぜ彼はスウィング作りをコーチに頼らず、自身で作り上げたのか 。体格に恵まれなかった彼が、いかにして飛距離を伸ばしたのか 。さらに、スウィングの「遊び」をなくすための具体的なドリルや 、スコア100切りを目指すアマチュアへのアドバイスなど 、彼の独自の思考法をさらに深掘りしている。続きは月刊ゴルフダイジェスト10月号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!