※「インクルーシブゴルフ」とは、「障がいの有無、国籍、年齢、性別などに関わらず、多様なバックグラウンドを持つすべての人が、互いの違いを認め合い、尊重し、すべての人が受け入れられ、参加し、共にゴルフをすること」を指す。
今年6回目を迎える“アツい地方オープン”、柏オープンで、「第1回柏障がい者ゴルフ選手権」が開催されます。
「柏オープン」とは、柏ゴルフフェスタ実行委員会が主催する千葉県柏市を中心としたローカルなオープン競技。今年は10月20日に藤ヶ谷CCで行われます。「オープン競技」ですから、予選会が開かれますが、今年はその一環として障害者ゴルフの大会を開催することとなったのです。日本障害者ゴルフ協会(DGA)と共催で、世界障害者ゴルフランキング「WR4GD」の対象試合となったことも画期的です。
柏ゴルフフェスタ実行委員会のゼネラルマネジャーを務める薬師寺輝(ひかる)さんにお話を聞きました。
「柏市在住でDGAの競技に参加されている方からのご提案もあり、2023年から柏オープンに障害者枠を設けました。その頃、障害者ゴルフのことをいろいろと調べて、ずっと頭の片隅にあったんです。その後、小山田(雅人)さんとラウンドでご一緒する機会があったり、DGAの石塚(義将)さんや松田(治子)さんとも知り合い、DGAと障害者ゴルフにまつわるいろいろな環境や世界観をうかがいました」
ゴルフの普及活動などへの関心も高かったという薬師寺さん。
「JGAさんとも一緒にお仕事する機会がありお話をうかがうなかで、障害者ゴルフの今の立ち位置なども知りました。それならば、柏という環境のなかで、できることを一歩先に進めてみましょうと、今まであった障害者枠を予選の1つの“通過枠”として設定する話になりました」

日本の障害者ゴルフを引っ張る吉田隼人、秋山卓哉両選手が大会HPの“顔”に。まだ参加枠はあるそうです。皆さんの挑戦を待つ!
小さな流れは大きな流れを作ります。柏オープンの“予選会”として、また障害者ゴルフの“選手権”として、9月28・29日の2日間で開催されることが決定しました。こだわったことは「WR4DG」の対象試合となること。
「DGAの選手、秋山(卓哉)さんや吉田(隼人)さんなどに聞いて、対象試合になることがモチベーションになるということを感じてましたし、私自身、アマチュアゴルファーの世界ランキングに関しても、日本での対象試合が少なすぎると思っていました。これだけゴルフが盛んでいろいろ取り組んでいる国なのに。ですから、DGAの世界ランキングの対象試合も増やしたくて、そこにはこだわりました」
もちろん、障害者ゴルフの大会を開催するためには、多くのハードルがあります。
「進めるなかで、難しい環境があることもよりわかってきました。しかし、通常の予選会をやっていくなかで、もう1つ同時に走らせれば、人員的にも予選的にもクリアできるだろうと、できる範囲のなかでとりあえずスタートした感じです」
こうして、紫CCあやめCで、予選会「D」と同日に開催することになったのです。コースにも障害者ゴルフの大会を開催した経験はありませんが、まずは“やってみる”。
「過去2年間、障害者ゴルファーが参加した実績があり、基本は同じことだという話をしながらコースにも理解を得られました。一方で、たとえば車椅子の方がプレーする環境はまだ整えられていなくて。今後の課題になると思います」
柏オープンのホームぺージにはこんな言葉が掲載されています。
――プロもアマも年齢も性別も関係なく誰もが挑戦できる選手権です。『柏オープン』は、挑戦が尊重、尊敬され、夢を描く競技者たちを街を上げて応援する参加型の選手権にしていきます――
この精神にのっとり、「柏障がい者ゴルフ選手権」も開催されるのです。
「柏オープンは、どんな方でも対象にし、さまざまな競技を増やしてきました。そのなかでも一番大きな取り組みの1つになったと思います。ただ私たちはその運営方法などは素人で、そこは正直、手探りの状況です。それでも、柏ゴルフフェスタ実行委員会というものの方向性を、より明確にするイベントになるという気がしています」

柏オープンの輝く優勝トロフィー。発起人で実行委員会の会長を務めるのは、柏市在住、皆さんもご存知のゴルフキャスターの薬師寺広さんです
過去2回、参戦した秋山卓哉さん(左大腿切断)はこう語ります。
「トッププロも出場されており、プロの試合の緊張感がありつつ、地域コミュニティのアットホームな雰囲気のあるとても楽しい大会だなと感じています。
柏オープンのような大きな地方オープンに、障害者の試合を組み込んでいただけたのは大きな意味があると思います。まず、たくさんの方に障害者ゴルフを知っていただけます。そして、大会運営される事務局の方にも、障害者の試合の運営ノウハウを知っていただけることは、今後の障害者ゴルフの未来にとっても大きなこと。世界ランキング対象試合なので、海外の障害者ゴルファーにも柏オープンを知っていただく機会にもなり、地方オープンと障害者ゴルフがウィン、ウィンのいい関係で、お互いに発展・成長していけるよい機会だなと思っています」
秋山さんは、今年ももちろん参戦。大きな舞台に立つことに意気込んでいます。

トッププロ、地元のプロ、予選会通過者が同じ舞台で戦う。昨年の優勝者は25歳の村上拓海プロ。この勢いでアジアンツアーの最終予選会をトップ通過(写真をクリックすると「第1回 柏障がい者ゴルフ選手権」のエントリーページにに移動します)
www.golfgenius.comまだ参加枠はあるそうです。
DGA代表の松田治子さんも、本大会に大きな希望を見出しています。
「プロもアマも年齢も性別も関係なく挑戦できる『柏オープン』は以前から注目していた試合です。そのなかに障害者ゴルファーも挑戦できる『柏障がい者ゴルフ選手権』が開設されるのは大変嬉しいことです。優勝すれば本戦にも出場できるのですから、障害者ゴルファーにとっては絶好の挑戦チャンスになります。この試合のように、一般のトーナメントのなかに障害者ゴルファーも出場できる試合がもっと増えてほしいと願っています」

自身の技術向上のため、障害者ゴルフ普及のため、日々研鑽中の秋山さん。「2年前の大会ではレジェンド倉本さん(倉本昌弘)とご一緒し、とても親切にしていただきました」
日本の“インクルーシブゴルフ”の発火点となる大会に成長していくことを期待したいと思います。
写真/柏ゴルフフェスタ実行委員会、増田保雄、中居中也