
「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」でツアー初優勝を飾った金澤志奈(撮影/岡沢裕行)
「ホントに、ホントにうれしいです」

地元茨城県のファンの声援に応えた(撮影/岡沢裕行)
地元ファンの熱狂が最高潮に達した。18番パー4を使用したプレーオフの1ホール目。金澤が50センチのウイニングパットを沈めた瞬間だ。グリーン周りの仮設スタンドに鈴なりになったファンから大きな拍手が沸き上がる。その真ん中で新たなメジャー女王は少し恥ずかしそうに手を振って感謝の気持ちを表した。グリーンサイドで見守った師と仰ぐ元世界ランク1位・申ジエから祝福の抱擁を受けたときには、こらえきれずに大粒の涙を流した。
優勝インタビューではしっかりとした口調で喜びを言葉にした。
「ホントに、ホントにうれしいです。地元ということもあって初日からたくさんのギャラリーの方に集まってもらって、みなさんの声援のおかげで73ホール回り切ることができました。ありがとうございます」

18番では左奥のラフからのアプローチがカップをかすめた(撮影/岡沢裕行)
この日は首位との1打差を追ってスタート。2番パー5で2メートルを沈めて首位を捕らえると、10番パー5では第3打を50センチにつけて単独首位に立った。だが、15番でつまずく。ティーショットを左に曲げ、4オン2パットでボギー。このホールでバーディを奪った桑木に追いつかれてしまった。18番では左奥のラフからのアプローチがカップをかすめたものの入らず、プレーオフにもつれこんだ。
プレーオフは勝利の女神を味方につけたかのようだった。ティーショットを右の林に打ち込んだが、幸運にも木に当たって前が開いているラフまで出てきた。残り204ヤードの第2打もグリーン奥のラフに消えたボールが、コロンとカラーに戻ってきた。これを得意の56度のウエッジを使ったアプローチで寄せ、そして感動のフィナーレへとつなげた。
「去年までは自分が優勝できるかどうかって思いだったんですけど、今年は優勝争いも何回かしましたし、どの試合でもいいからとにかく優勝したかった。たまたま地元のメジャーというのが重なってうれしく思います」
「ジエさんに続いてメジャーで優勝できてうれしい」

師と仰ぐ元世界ランク1位・申ジエから祝福を受ける(撮影/岡沢裕行)
1995年7月29日、茨城県笠間市出身。8歳からゴルフを始め、2017年プロテスト合格。同年ステップ・アップツアーの山陽新聞レディースでプロ初優勝を果たした。2020-21年シーズンに賞金ランク24位で初シードを獲得。今季は前週までトップ10入りが9回を数え、今季ここまでの各スタッツも平均ストローク9位、平均パット数(パーオンホール)11位、パーセーブ率5位、フェアウェイキープ率8位、リカバリー率4位など軒並み急上昇。いつ優勝しても不思議ではないところまできていた。
優勝を陰で支えた申ジエには心から感謝した。
「中学生のころからレッスンに通っていた金愛淑(キム・エイスク)プロの合宿にジエプロも参加していたときがあって、それが出会いです。この3年間はオーストラリアで一緒に合宿も組んでもらってという感じです」
申ジエは今季メジャー第1戦の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で優勝したが、そのときに金澤は自身の初優勝を強く意識したという。
「サロンパスのときは私も本当に感激して、自分も絶対勝ちたいと奮い立つものがありました。ジエさんに続いてメジャーで優勝できて本当にうれしいです」
悲願の初優勝をメジャーで果たしたことで、今後の目標も上方修正される。
「複数回優勝を今年中にできたらいいなと思っています」
初優勝までちょっぴり時間はかかっても、地道な努力と忍耐でゴルフを突き詰めた結果の初優勝で得た自信は何にも代え難い。女子ゴルフにビジュアルも人気の実力派が飛び出してきた。