小祝さくらは、鉄人だ。それは7年連続優勝、日米228試合連続出場などのデータにも表れるし、実際、海外メジャーへの挑戦がある週以外はほぼ試合を欠場しなかった。本人に聞くと、「ゴルフを休んでも暇ですからねえ」と、ちょっと照れ隠し的な答えが返ってきたり。でも、自身の体が丈夫なことは感謝したいと話をしていた。

「私は、元気ですよ~」。この連載では引き続き、小祝さくらが日々感じていることや読者からの質問に答えたことを、のんびり伝えていきます
今季、ツアー12勝目を飾った7月の「明治安田レディス」の翌週の試合の2ラウンド目、左手首に痛みを感じてキャリアで初めて試合を棄権、そこから試合を欠場してきた。出場予定だった全英女子オープン、ここ数年目標としてきた国内メジャー優勝へのチャレンジもできなくなった。
そして、小祝さくらは、手首の手術という大きな決断をした。診断は「TFCC損傷」。手首(特に小指側)にある軟骨と靱帯の複合体である「三角線維軟骨複合体(TFCC)」が損傷した状態で、特にクラブを振るなどの回旋運動を行う際に痛みが伴う。ゴルファーはじめ手首を酷使するスポーツ選手にみられる症状だ。慎重に医師と検討を重ね、〝先につなげる〟ために今手術し、しっかり治すことこそ最重要だと、判断した。この潔い決断こそ、小祝さくららしい。
「大好きなゴルフをこれからも続けていくため、今は無理せず、治療に専念をして、また元気な姿で皆さまの前でプレーできるように努力していきます。これからも温かく見守っていただけると嬉しいです」
小祝さくらには、本人の自己評価をはるかに上回るファンがいる。皆すごく心配しているし、さくらのいないツアーはなんだか寂しく感じてもいる。でも、結局は、さくらを信じて温かい声援を送ってくれる方たちばかりだ。「ここまでゴルフをやらないことは初めてなので、どう過ごしていいかわからずショッピングなどしていましたが、それもすぐに飽きてしまい、今はNetflixを見たり、ジムに通ったりすることが増えました。手術後はリハビリやトレーニングを少しずつやりながら復帰を目指したいです」
以前対談したプロサーファーの五十嵐カノア選手から、エールが届いた。「アスリートの一日一日はすごく大切です。だから、本当に気持ちがよくわかって、小祝プロのケガのことを聞くだけでちょっと落ち込むし、何らかのサポートをしたい気にもなる。でも、特にゴルフみたいなスポーツはメンタルがすごく必要だから、今の状況の中で自分自身と対峙すればきっとメンタルも強くなれるし、実際、ゴルフしていなくてもイメージトレーニングもできるかもしれない。本当に頑張ってもらいたいです。アスリートの世界ではケガは付きものでもあるので、それはもうしょうがないこと、くらいに考えて、前を向いて頑張ってほしいです」。〝鉄人さくら〟の本領発揮はここからだ。きっと、柔らかな雰囲気に包んだ鉄の意志で、乗り越えてみせる。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年10月14日号〝ゴルフときどきタン塩〟より(Ph/Shinji Osawa)