「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

「FWとUT」、「UTとアイアン」の境界線に異変あり!

GD 年齢50を過ぎるとクラブ探しのメインがドライバーよりもフェアウェイウッドになってきて、「もっと良いフェアウェイウッド、ユーティリティはないものか」と、興味がそっちに向いています。長谷部さんはいかがですか?

長谷部 私もそうです。新製品はすべて必ずチェックして、7番ウッドのラインナップを見ちゃいますね。店頭に行って「7番ウッドを見たいな」と思っても、実は店頭に在庫がない。中古ショップで探してもタマ数があまりないので、結構ネットで探すことが多く、7番ウッド難民になっています。

GD フェアウェイウッドは5番と7番の銘柄を揃えたいので、7番があるかどうかをまずチェックします。中古でも5番はいっぱいあるけど7番がないパターンがよくあるので、7番ウッドをゲットしてから5番ウッドを購入するパターンにしています。フェアウェイウッド、ユーティリティは、見るのと打つのでは大違いということがよくあるので、手の出しやすい中古で「当たり探し」をしています。

長谷部 そうなんですよ。自分は5番がほぼ固定できていてキャロウェイ『エピック スピード』を使っているんですけど、じゃあ7番は? って言われたら、7番も使ってみたんですけど何か違ったので、そこから迷路にハマってしまって。「7番を軸に探したい」と言うその考えよくわかります。

GD 女子プロは「3、5、7」だと思うんですけど、銘柄を揃えている人もいれば、実績重視で全部バラバラの人もいるじゃないですか。設計の観点からすれば「3、5、7」、または「5、7」は揃えたほうがいいんですかね?

長谷部 メーカーの開発者は一応それを想定して作っているんだと思うんですけど、プレーヤーが求める飛距離やコントロール性を同じメーカー、同じ銘柄のヘッドで揃えていくことは難しいんだろうなと思います。フェアウェイウッドではないのですが、ウッドとアイアンのつながりのクラブで、新人の女子プロ(六車日那乃プロ)が、ヘッドはキャロウェイの同じシリーズで揃えながら、シャフトでウッドからアイアンにフローさせていたんですよ。
 
4番UTにはウッド用のシャフト、5UTにはユーティリティ用のシャフト、6UTにはアイアン用のスチールシャフトを挿していて、面白いことをするなと思いましたね。

GD フェアウェイウッド、ユーティリティはクラブが長くなるから、自分で打ちながら研究するしかないんですかね。

長谷部 地面にある球を打つものなので、打ち込むのか、払い打ちができるのか、その分岐点がどこなのかってというのがひとつあると思います。自分はユーティリティでも打ち込みたいんですが、7番ウッドは打ち込まないで払い打ちをしたい。でもその時に上手くつながるシャフトとか、重さがいまだにわからない。
 
7番ウッドはグリップを余らせて短く持ちたいし、200ヤード前後をあらゆる弾道で打ちわけたい。それを実現できるシャフトはどんなものなのか、硬さ以外にも剛性分布や重さなど迷っています。

GD 昔は7番ウッドはあまり注目されていませんでしたけど、今7番ウッドは重要なクラブになってますよね。

長谷部 シェフラーがハイブリッドと使い分けたり、アマチュアでも僕の知り合いの中に7番ウッドに注目している人がけっこういます。「どんな7番ウッドがいいの?」と聞かれるんですけど、いつも答えが見つからなくて、「悩みますよね」っていう会話で終わっちゃうんですけどね。

GD メーカーはどうなんですか? 5番ウッドを中心に考えているのか、まだまだ「3、5」なのか?

長谷部 この間あるメーカーさんとも話したんですけど、主軸は「3、5」で考えているみたいで、もうちょっと市場を見てもらえたらいいなぁと思ったんですけどね。

GD 片山晋呉が使ってショートウッドブームがありました。あの時は9番ウッドまで普通に存在していて、11番ウッドもありましたよね。

長谷部 ありましたね。2000年の初期だったと思うんですけど、9番ウッド、11番ウッドがあった時代があったんですけど、結果としてその当時は在庫過多になってしまった。過去のデータ分析でいうと、特に7番のSフレックスなんかはラインナップしづらいんですよね。SRやRといった軟らかいシャフトのみに絞ってしまう。
 
過去の在庫過多の問題もあったりと最終的に売れていないスペックは削られてしまうので、カスタムになる。カスタム扱いになると店頭に並ばない。だからお客さんは店頭でなかなか見られない。これが未だに続いているのかなって気がしますけどね。

GD 9番ウッド、11番ウッドがユーティリティに替わったというのはありますか?

長谷部 それはあると思います。日本の市場には豊富にユーティリティがあるので、今となっては9番ウッド、11番ウッドは不要な番手になってしまったんだと思います。

GD 昔、ピン『i20』をセットで使っていたことがあるんですけど、そのセットは3番ウッド(15度)、5番ウッド(18度)、7番ウッドがなく、20度と23度のユーティリティの4本セットでした。当時は使い勝手が良かったんですけど、ちょっと時代が変わったなって感じます。今や20度のユーティリティはあんまり使わないし……。

長谷部 難しいですよね。

GD ユーティリティは一段下がって、22度、25度、28度のほうが使い勝手が良く、フェアウェイとユーティリティの感じ方が変わっています。『i20』は上級モデルでしたけど、ラインナップそのものの考え方が変わった感じがします。

長谷部 ラインナップが増えてきているのでありがたいんですけど、ユーティリティとショートウッドの境目が変わってきています。
 
アイアンとのユーティリティの境目も変わってきていて、どちらも徐々にハイロフト化しているのは間違いないでしょう。だから、もうちょっと5番ウッドを中心に据えて、7番ウッドに目を向けてほしいなと正直思いますね。

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