
「193㎝と大柄ながら、ショートゲームの上手さが光る。昨年からは引退したブッチ・ハーモンに、自分の元に習いに来る条件で指導を受け、ブッチは『あなたのスウィングは素晴らしい。世界のトップになれる』と絶賛されています」と佐藤プロ(撮影/岩本芳弘)
今シーズン、ブレークした選手の一人が、ハリー・ホールではないでしょうか。今年でPGAツアー本格参戦3年目で昨年7月のISCO選手権で初優勝。こちらは全英オープンの前哨戦であるスコットランドオープンの〝裏〞で、優勝してもマスターズの出場権などを得られない試合でしたが、今季は初めてツアーチャンピオンシップに進出、選ばれはしなかったもののライダーカップの候補に名前が上がるまで頭角を現しました。
トレードマークはハンチング帽。イングランド人らしいハンチング帽に、胸にはアメリカを代表するレストラン「Hard Rock Cafe」のロゴ。落ち着いた雰囲気のベテランに見えますが、年齢はまだ28歳。これらのギャップがまた面白いところです。
彼が生まれ育ったのは、イングランド最西南端のコーンウォール半島。そこにウエストコーンウォールGCというリンクスコースがあります。1889年の開場、5869ヤードのパー69。セントアイブス湾を望む美しいコースです。
クラブのHPには、ここで育った3人のプロの名前が掲載されているのですが、その1人がジム・バーンズ。全米プロの第1回(1916)、第2回(1919)の優勝者で、後に全米オープン(1921)、全英オープン(1925)も制しました。当時はマスターズがありませんでしたから、すべてのメジャーに勝った英雄です。実はこのバーンズがハンチング帽をかぶっていました。ハリーの祖父がこのバーンズをとてもリスペクトしており、その影響でハリーも100年以上も前の同郷の英雄スタイルを貫いているのです。
ちなみにHPに掲載されている残る2人は、後にプロになるフィリップ・ローとハリー・ホール。名前の後の年代に関して、前者には(1999)、後者には(2019)とあり、これはそれぞれが、アマチュアの英米対抗戦であるウォーカーカップに出場した年を表しています。
ちなみにハリー・ホールは、アマチュア時代からすでにハンチング帽をかぶっていました。
6歳でゴルフを始めると、たちまちイギリスのトップジュニアに。13年、ブリティッシュジュニアでの活躍が目に留まり、ネバダ大ラスベガス校に進学。このとき、誘ったのが同大のアシスタントコーチをしていた前出のフィリップ・ローでした。さらに言えばジム・バーンズが単身渡米したのも18歳です。ロングジム・ビッグジムと呼ばれたように、その身長は193㎝。渡米時期、身長ともハリー・ホールはまったく同じなのです。
100年前の選手をリスペクトして同じスタイルで戦い、同じコースで育った先人たちに導かれるように同じ舞台で戦っている。育ったウエストコーンウォールGCには、ショートゲームの練習エリアしかないのですが、「ホームコースでアプローチ、パッティングに費やした時間が今の自分を作っている」。こんな言葉の端々に、またハンチング帽に、歴史の重み、故郷への愛着、先達へのリスペクトを感じるのです。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年10月14日号「さとうの目」より
全英オープンで"最多バーディ数"を獲得したハリー・ホール【DPワールドツアー公式X】
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