横浜カントリークラブで開催されたPGAツアー「ベイカレント C レクサス」。日本人最高位の4位タイに入った金谷拓実の6日間を追った。
画像: 今季出場24試合中、予選通過が9試合だったが、5月のザ・CJカップバイロンネルソンの5位タイ、7月の3Мオープンの7位タイに続く3度目のトップ10(撮影/岡沢裕行)

今季出場24試合中、予選通過が9試合だったが、5月のザ・CJカップバイロンネルソンの5位タイ、7月の3Мオープンの7位タイに続く3度目のトップ10(撮影/岡沢裕行)

9月に日本ツアーのANAオープンで優勝した後すぐにアメリカに戻り、10月5日からの「サンダーソンファームス選手権」に出場した金谷。21位タイの結果で終え、ミシシッピ州にあるザ・カントリークラブ・オブ・ジャクソンからそのまま本大会出場のため帰国した。

火曜日の早朝に日本に着いた金谷。「アラスカで(燃料補給のため)降機するのは初めてだったので少しびっくりしました」と笑うも、その目は二重になっており、寝不足と疲れが見てとれた。しかし本人はきっぱり「大丈夫です」と言い、午後から10~18番と1、2番を練習ラウンド。それを見ていたプロゴルファーで解説者の佐藤信人は、「調子はよさそうです。振れていますしね。自分のスウィングと向き合うのではなく、コースを回っている、コースと向き合うという目線が感じられていいですね」と語っていた。

画像: パット巧者の金谷は“感覚派”。「トレーニングでも、繊細な感覚をなくさないよう、最終的には自分で選びます」(大坂氏)

パット巧者の金谷は“感覚派”。「トレーニングでも、繊細な感覚をなくさないよう、最終的には自分で選びます」(大坂氏)

水曜日は自身にプロアマ戦が入っていなかったので早朝からハーフラウンドし、いったん宿舎で寝て昼過ぎに再びコースで練習。その後の公式会見でも「日米を行き来するハードスケジュールで疲れていないか」と聞かれ、「自分が好きでやっていることなので関係ないと思いますし、今週は楽しみなので自分らしくがんばります」と答えていた。時差ぼけ対策を問われると「いろいろとやっています」と多くを語らない“金谷節”。ならばとトレーナーの大坂武史さんにこっそりアドバイスしたことを聞いてみると「経験が積み重なっているから時差ぼけはあまりないと思います。僕が話をしたことがあるのは、メジャーリーグの選手は、体を起こさないようにするため8時間のフライトでも食事を取らない、基本寝ている、ということ。拓実くんがやっているかどうかはわかりませんが(笑)」。スポーツ好きの金谷、実践しているかどうか……今度聞いてみよう。

さて大会初日の木曜日、公式発表で北の風6.3mの強風が吹くなか、68で回り4位タイスタート。

「強い風のなか、よいプレーができた。まだ初日が終わっただけなので、また明日よいプレーができるようにしっかりとよい準備をしたいと思います」

画像: ギャラリーの応援を肌で感じることができたと金谷。「とにかく自分らしいプレーを続けて、何とか一打でもよくなるようにプレーできました」(撮影/岡沢裕行)

ギャラリーの応援を肌で感じることができたと金谷。「とにかく自分らしいプレーを続けて、何とか一打でもよくなるようにプレーできました」(撮影/岡沢裕行)

そう、これが金谷拓実なのだ。風が吹こうが雨が降ろうが槍が飛んでこようが(!?)、「しっかりよい準備をして、自分らしいプレーをする」だけ。

2日目の金曜日は70、小雨が降り続けた3日目の土曜日は70でのラウンド。しかし、見た目もすることもまったく変わらないところが金谷拓実というプロゴルファーなのだ。

いつものルーティンを行いショットし、真っすぐ前を向いて歩き、水をひと口飲んで落ち着く。常に1打1打に集中する。

3日目のラウンド後、遅くまで練習グリーンでパッティングの確認をする金谷の姿があった。明日につながる準備は入念に行う。これも金谷の変わらぬ姿だ。

ずっと金谷のラウンドに付いて観戦していた大坂トレーナーは金谷について、「気持ちの切り替えが上手い。2日目が終わって少し(気持ちが)落ちているように見えたけれど、3日目にはもう何もなかったかのように自分で整えてきていました」。

そして最終日の日曜日、前半で5つのバーディを積み重ねた金谷は、後半の難しいインコースでも“自分らしいプレー”を積み重ねた。

画像: 本大会、ドライバーショットが好調だった金谷。最終日にフェアウェイを外したのは17番、18番だけだった(撮影/岡沢裕行)

本大会、ドライバーショットが好調だった金谷。最終日にフェアウェイを外したのは17番、18番だけだった(撮影/岡沢裕行)

本大会、ティーショットが安定しており、フェアウェイキープ率はこの日86.67%(5位タイ)。4日間トータルでも85%(2位タイ)。また、セカンドショットでたとえグリーンを外しても、まったく焦りも見せず、寄せるか入れるかでパーを拾う。そして、バーディチャンスは逃さない。

難しい11番・パー4、2打目をグリーン左30ヤードに外すもピッチ&ランでピン1メートルに寄せパー。12番・パー4もピンが近い奥からの20ヤードのアプローチがカップを舐め2メートルオーバーするも返しをしっかり入れてパー。13番・パー4は70ヤードのバンカー越え2打目をスピンで止め、ピン50センチからバーディ。15番・パー4ではピン右5メートルから入れてバーディ。

「金谷~ガンバレ!」「拓実くん、がんばって!」。ラウンドが進むにつれ歓声も増え、金谷自身もどんどんノッてきたように見えた。

画像: もともとアプローチも上手い金谷。転がし、スピン、ロブ……さまざまな技を見せてくれた(撮影/岡沢裕行)

もともとアプローチも上手い金谷。転がし、スピン、ロブ……さまざまな技を見せてくれた(撮影/岡沢裕行)

試合前、上がり3ホールを「すごく難しくてチャレンジング」と語っていた金谷。最終日の16番・パー3はティーショットがあわやホールインワンか、と思わせるショット後、転がってピン奥3メートルにつけたバーディパットを沈める。17番・パー4はこの日初めてティーショットでフェアウェイを外しバンカーに入れるも、そこからピン3メートルに寄せてバーディ。そして最終18番・パー4もティーショットが左ラフに。そこからグリーン手前に置き、アプローチがピンの奥2.5メートルに行き下りの難しいパットが残るも、これを沈めてナイスパー! 上がってみれば、ボギーフリーの62で回り、全体の順位を4位タイで終えた。“金谷拓実らしさ”とは、プレーを見るものが感じるままのものなのである。

画像: 最終ホール、グリーン手前からのアプローチがピン奥2.5mに。下りの難しいパットをきっちり沈めてパー。思わずガッツポーズが出る(撮影/岡沢裕行)

最終ホール、グリーン手前からのアプローチがピン奥2.5mに。下りの難しいパットをきっちり沈めてパー。思わずガッツポーズが出る(撮影/岡沢裕行)

ラウンド後の会見では、いつも通りの“金谷節”だった。

「ずっと同じような気持ちでプレーしていました。それが今日はたくさんパッティングが入る結果に表れたのかなと思います。最後のパーパットもすごくいいパットだと思うし、積み重ねてきた結果が今日は出たと思う。次に向けてしっかりいい準備をして、まだ試合も続くので、いいプレーができるように頑張ります」

これでPGAツアーのフェデックスランキングは135位から113位にアップ。今シーズンから100位以内となったフルシード権獲得に向け、まだ“ここから”だ。

大会前、「シード権がかかっている試合の1つ。(僕にとっては)国内でプレーするのはチャンス。みんなシードを目指して必死でやっている」と語っていた金谷もまた、必死で戦った。

「(シードが決まる)最後までチャンスはあると思うから、とにかく自分らしいプレーを続けてがんばります。応援してもらえることはすごく力になるし、今週もそれがすごく身に染しみた。今週いいプレーができたのも、そういう応援の力があったから。すごく支えになったと思います」

今週は、日光CCで行われる日本オープンに出場。今年から優勝者にはマスターズ出場権が与えられる。その後再び舞台はアメリカへ。金谷にとって、今シーズンはまだ“ここから”。自分らしいプレーを重ねていくー―。

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