コンタクトレンズ20年使用で192万円!?
眼鏡やコンタクトレンズの費用も侮れない問題だ。眼鏡は少なくとも3年ごとの交換が推奨されるが、20年分の費用を計算すると、①手元専用老眼鏡(2~3万円)なら、2~3万円×6回=12~18万円。②遠近両用メガネ(3~4万円)なら、3~4万円×6回=18~24万円。③遠近両用コンタクトレンズ(ハードレンズ、片眼約2~3万)なら2~3万×2眼×6回=24~36万。④遠近両用コンタクトレンズ(ソフトレンズ、使い捨て1日タイプ、片眼1カ月分30枚入り約4000円)なら、4000円×2眼×12カ月×20年=192万円、となる。「192万円!」と驚く人も多いだろう。また、コンタクトレンズは角膜に直接のせて使うものなので、角膜を傷つけるリスクが高いことを忘れないようにしたい。
①「角膜上皮障害」(角膜の外側表層が傷つく)②「細菌性・真菌性の角膜潰かいよう瘍」(角膜上皮の傷に細菌やカビが侵入し潰瘍が生じる)③「アカントアメーバ角膜炎」(汚れた水や土の中で生息する「アカントアメーバ」がレンズに付着して目に入ると、角膜上皮に傷があった場合、そこから侵入して感染する恐れ。失明につながることもある)④「巨大乳頭結膜炎」(レンズに付着したタンパク質などの汚れが原因でアレルギー反応を起こし、上まぶたの裏側にブツブツ=乳頭ができて炎症を起こす)は、一般社団法人日本コンタクトレンズ協会が公式サイトで挙げる「コンタクトレンズによる目の病気」だ。
また、日本眼科医会は、そのほか「眼瞼下垂」(目を開けているときもまぶたがたるんだように下がり、視野が狭まったせいでものが見えにくくなる病気)「ドライアイ」にも注意を促している。気軽に使用している人も多いコンタクトレンズだが、実は注意すべき点はとても多い。そこで、鈴木先生が提案するのが「多焦点眼内レンズ」を使った矯正だ。「『多焦点眼内レンズ』とは、白内障手術の際、濁った水晶体の代わりに目の中に入れる人工の眼内レンズのことで、文字通り、1枚のレンズで複数の場所にピントが合うようになっており、白内障の治療と同時に、老眼・近視・乱視も矯正できます。特に2019年に薬事承認を受けた新しいタイプのレンズは、従来品よりはるかに優れていて、これなら白内障手術のためだけでなく、『老眼・近視・乱視を治して裸眼生活を送るための方法』としておすすめできます」。
「目の中にレンズを入れる」と聞くと大手術を想像するが、「手術当日の院内滞在時間は2時間ほど。手術自体は小1時間程度」という。「点眼麻酔で感覚がなくなっていますし、照明が当てられているので物体の形などは見えなくなり、メスが見えるなどの恐ろしい思いはしません。そもそも当院ではレーザーによる手術なので、メスを使わないのです」とのこと。リスクに関しては「すべての手術に共通することですが、リスクが『ゼロ』とは言えません。しかし、国内で年間140万件以上も行われている白内障手術は、よく『外科手術のなかで最も安全な手術』と言われ、多焦点眼内レンズ手術もその白内障手術と何ら変わりません。100%とは言えないまでも、99.9%は安全と考えます」
術後のスポーツ再開は1カ月後が目安だが、「もう少し早くラウンドをしたという声は聞きますね。患者さんにはゴルフをされる方がとても多いです」。眼鏡やコンタクトをせずにゴルフができるのはもちろん、朝起きた瞬間から辺りが見える……しかも遠くも近くもという体験は、確実にQOL(生活の質)アップにつながる。日本は災害が多い国だが、被災した際に眼鏡がなくて困ったというニュースもたびたび伝えられた。眼鏡やコンタクトレンズのケアのわずらわしさから解放されるというのも、もちろんQOLアップだ。
眼鏡着用で“タイトル”を獲ったアスリートも
眼鏡がトレードマークの中嶋常幸はその後レーシック手術で眼鏡なしに。米ツアー賞金王の経歴を持つトム・カイト、女子のリディア・コーもかつては眼鏡を着用してプレーしていた。日本のスポーツ界で眼鏡といえば古田敦也(元ヤクルト)だ。

メガネのプロたち
そして、「近年では目と認知症の関係がクローズアップされています。脳にクリアな視覚情報が送られることで脳の老化が遅らせられると、いくつもの論文が出ているんです。これは、多焦点眼内レンズだけに限らないのですが、白内障手術は早めに受けたほうが認知症になりにくいというのは明らかになっています」。
では、手術によるデメリットはあるか。「慣れるまで少し時間がかかるというのと、ドライアイになりやすいので目薬をまめにさす必要があること、あとは保険適用外になるので費用が高額というところでしょうか」。ちなみに、費用は数種類あるレンズなどにより異なるが、150~200万円程度。「高い」と思うだろうが、前述の20年間のコンタクトレンズ代(ソフトレンズ、使い捨て1日タイプ)が192万円だったことを考えると……。多焦点眼内レンズ手術を受ける年代としてもっとも多いのは50代で、仕事もバリバリの現役世代。医師や歯科医師、美容師などが多いという。
ちなみに鈴木眼科の場合、2024年度の水晶体再建術1789件のうち、1267件が多焦点レンズだった。
人生100年時代。ゴルフを楽しむのはもちろん、あらゆる生活シーンで“よく見える目”があれば、QOLが劇的に上がることは間違いない。
ゴルファーたちの目の老化エピソード②
ボールの行方が追えなくなった
ティーショットでのボールを追えなくなりました。逆光、曇り空の時にはほとんど見えません。高齢者の運転免許書き換えで動体視力の検査を受けましたが、暗闇から飛び出す赤い光をとらえることはできませんでした。しかし動体視力が減退すると、ゴルフではいいこともあるんですよ。打ったボールの行方を追えないのでスウィングに集中できるんです。怪我の功名のような感じでホールインワンも達成することができました。ヘッドアップせず振り切ることができるので、動体視力が減退するのも悪いことばかりじゃないと自分に言い聞かせています(笑)。(70代男性)

ボールの行方が分からない
トップでボールと眼鏡のフレームが重なる
50歳手前で遠近両用レンズの眼鏡をかけ始めました。それまでは近眼用のレンズだったので、遠くを見るときはレンズの上部、近くの時は下部というような視線の使い分けが難しく、慣れるまで何カ月もかかりました。それでも体調が悪いと、めまいや頭痛がします。ゴルフの時も眼鏡ですが、スウィング時のズレが気になります。あとはトップの時にボールを見る際、ボールと眼鏡のフレームが重なるのも嫌ですが、遠近両用コンタクトレンズは高価なので、今は眼鏡を選択しています。(50代男性)
レンズに付いた泥はなかなか落ちない
もともと近視で、ゴルフの時も日常生活でも眼鏡が手放せないのですが、これ自体がとても面倒。雨上がりのラウンドで、林からリカバリーしようと打ったところ、泥が跳ね、レンズにペシッと付きました。メガネに付いた泥は実は簡単に取れないんです。手持ちのハンカチで拭いてもきれいにならず、汚れたままのレンズでアプローチしたら大ダフリ。眼鏡のせいだけではないですが、イラッとしてしまいました。以降、ラウンドポーチにウェットタイプの眼鏡拭きを常備するようになりました。眼鏡のレンズはふとしたことで汚れるのでウェットタイプの眼鏡拭きは、普段から持ち歩いていますが、20枚で350円くらいで、ばかにならない出費です。海外旅行の際に忘れてしまい、コンビニで買うこともできないので難儀しました。(50代女性)

レンズが汚れる
視界がぼやけると活力がなくなる
もともと近眼で、40代からは老眼も。眼鏡もコンタクトレンズもわずらわしいので、今は裸眼です。遠くも近くもぼんやりとしか見えません。すると不思議なことが起こりました。視界がぼんやりすると共に、やる気や活力がなくなってきたような気がするのです。物欲がなくなり、無駄遣いをしなくなったのはいいのですが、「あれをしたい」「これをしたい」と思わなくなって、ちょっと不安になっています。(60 代男性)
ILLUST/Koki Hashimoto


