強いスピン性能で、低くコントロールした球が打ちやすい
すでに最新の『MG5』ウェッジを実戦投入している田中秀道プロは、前作からの進化をどう感じているのか。『MG5』ウェッジの特徴として挙げられているいくつかのポイントをぶつけてみた。

田中秀道プロ 1971年生まれ、1991年プロ入り。身長166センチながら力強いドローボールでファンを魅了し、人気プロに。大洗GCで行われた1998年日本オープンなど国内ツアー10勝。2002年~2006年までPGAツアーでシード権を保持。現在はシニアツアーに参戦しながら、トーナメントのコースセッティングや解説など幅広く活躍する
ノーメッキが軟鉄鍛造のソフトな打感を際立たせる
まずは“形状”。『MG5』ウェッジのヘッドシェイプは、コリン・モリカワのフィードバックにヒントを得て設計されているという。田中プロはどう感じたのか。
「基本的に『MG4』ウェッジの形状と似ているので、『MG5』ウェッジに持ち替えた時の違和感はまったくなく、スムーズにスイッチできました。スクエアで使うのはもちろん、今まで以上にフェースを開いて使いやすい形で気に入っています」
今回、『MG5』ウェッジの大きなトピックの一つは、“フォージド(軟鉄鍛造)”になったことだ。

フェース面はノーメッキで、いかにもスピンが効きそうな風合い
「繊細なショットが求められるウェッジにおいて、打感は軟らかいに越したことはありません。フォージドになったことで、その変化を感じられます。打感、打音がソフトになりました。またフェースがノーメッキ。この色ですよね。見た目にも軟らかく感じるので、いかにも食い付いてコントロールできそうな安心感につながります」

「食い付くソフトな打感、進化しています」(田中プロ)
スピン系の低いアプローチが打てると、硬いグリーンも攻略しやすい
そして、メーカー曰く「エグい」という“スピン性能”についてはどうか。

新開発されたグルーブ(溝)によってMG史上最高のスピン性能を発揮。グルーブの間にある一筆書きのようなレーザー加工には水はけ効果があり、雨天時等でもスピンを安定させる

「前作より、明らかにスピンが効きますね」(田中プロ)
「『MG4』ウェッジもスピン性能は高かったですが、確かにそれより一段上の感じがあります。スピンが入ることはやはり大事で、スピン性能の高いウェッジは低い弾道のアプローチが打ちやすいんです。低い球が打てるメリットは多く、まずは“距離感”を出しやすいこと。そして、低く出てキュッとブレーキがかかれば、間にあるアンジュレーションを多く考えずに、カップの近いところまで打っていけることです。それなら、高い球でピンの近くに落としてもいいのでは? と思うかもしれませんが、グリーンが硬く締まっている、あるいは傾斜しているところに落とさなければいけないようなときに、ボールがどう跳ねるのかの計算が難しい。低くスピンの効いた球ならそういった読みがシンプルになります。『MG5』ウェッジは、それを精度高く繰り出せる性能を持っていますね」
SC、SXが加わった全6タイプのグラインド
『MG5』ウェッジでは“グラインド”バリエーションが増え、6タイプになった。ちなみに、ウェッジに携わって45年のマスタークラフトマン、グレッグ・“シーザー”・シザリオが、歴代MGシリーズ同様にグラインドを監修。彼はPGAツアー参戦の経験もある腕利きのゴルファーでもある。

LBグラインド。シャローな入射角、またフェースを開いてテクニックを多用したいプレーヤーに。硬いライコンディションにもマッチ

SCグラインド。グリーンサイドでは多彩な技を使え、またフルショットでは安定感をもたらす寛容性も備える

SBグラインド。スタンダートなグラインドで、多くのスウィングタイプやライコンディションにマッチ。バンカーでも威力を発揮

SXグラインド。『MG5』ウェッジの中で最も幅の広いソール。様々なコンディションに対応し、バンカーでのお助け効果も高い

HBグラインド。ハイバウンスながら、ヒール、トウ側が大きく削られているユニークなグラインド。入射角が鋭角なプレーヤーや、ソフトなライコンディションにマッチ

TWグラインド。タイガー・ウッズの好みが集約されているソール形状
「グラインドやバウンスを自分に合わせる、これはウェッジ選びにおいて何より大切なこと。私は基本的にローバウンス系が好みなのですが、それでも米ツアーから帰ってきた当時(2007年)は、芝の違いに対応するために一時期ハイバウンスにしました。日本のコースに多いコーライ芝は、芝の上にボールが乗る形になるので、ローバウンスだと下を潜ってしまうリスクがあるからです」
ハイバウンスには、ダフリに寛容といったメリットもあるが、一方でフェースを開くことが多いプレーヤーには扱いにくい面も。
「フェースの開き加減を変えて、さまざまなアプローチを打ちたいので、時としてバウンスが当たりすぎてフェースが意図せず返ってしまう、ということもあるんです。トータルで考えると私にはローバウンスが合っていると思います」
アプローチの幅が広がる「LB」すごくいい!(田中秀道)

田中秀道プロ 実使用の『MG5』ウェッジ。削ったり鉛を貼ったり、こだわりの調整が施されている
田中秀道プロは、『MG5』ウェッジの48度(SB)、54度(SB)、60度(TW)の3本をバッグに入れているが、さらに自分に合うように独自に削りを加えている。そんな田中プロに、改めて『MG5』ウェッジのグラインド違いを打ち比べてもらったところ、「コレ、すごくいいですね!」と絶賛したのがLBグラインドだ。

編集部が持参した市販のLBグラインドに、「あれッ、コレいいね!」
「一通り打ってTWグラインド(60度)に決めたんですけど、改めて打つとLBグラインド、いいですね。私は独自に削りを入れるので、結構ヘッド重量が軽くなるんです。その分、重さを足す必要があるんですけど、ネックに重りを入れると重心位置が微妙に動いて、フェースターンの挙動が変わりますし、バックフェースに重りを貼れば、後方が重くなる分、ロフトが増えて当たりやすくなる。でもLBグラインドなら、削りもしっくりきて開いて使いやすいし、重さの心配もないからこのまま試合で使えそう。なんなら調整した自分のウェッジよりいいかもしれない(笑)。いろんなバリエーションのアプローチを打ちたい人にはLBグラインド、いいと思います」

「ヒールもそうですが、トウの後ろ側のソールがしっかり落とされていることも重視します」(田中プロ)
ミスに強い?操作性?個性豊かな6つのグラインド
田中秀道プロのおメガネにかなう『MG5』ウェッジ。ここからは、熟練フィッターに協力してもらい、ショットデータも見ながら、『MG5』ウェッジの性能をより細かく探ってみよう。

平野義裕さん。東京の練習場、スイング碑文谷内のフィッティングスタジオ「COOL CLUBS(クールクラブス)」のカリスマフィッター。ウェッジフィッティングでは、よく使うロフト、ミスの傾向などのヒアリング、またトラックマンを使った実際のスウィングデータから、ジャストフィットするウェッジを提案する
クールクラブスのフィッター・平野さんがまず着目したのは、ソールとヘッド形状だ。

「トウ、ヒールの後ろ側が大きく削られている。あらゆるライで突っかからずスムーズに抜けるはずです」(平野さん)
「まずソールですが、6つのグラインド、すべてでトウ、ヒールの後ろ側が大きく削られています。ここがあまり削られていないと、傾斜地などでソールが突っかかってフェースが返りすぎることがある。ライへの対応力が高いかを見るポイントでもあります。そしてヘッド形状ですが、TWグラインド以外は少しオフセットがあるシェイプで、球を抑えて打っていけそう。個人的には好みです」
技が使えてミスにも強いSCグラインドに平野さん大絶賛!
【SBグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:31.5度 スピン量:9120rpm
【25Y】打ち出し角:28.8度 スピン量:5010rpm
※トラックマンを使用、データは5球以上打ち、ベスト3球の平均(以下同)
打感がめちゃくちゃ軟らかいですね。ウェッジにおいてソフトな打感はすごく大切と思っていて、硬いと、ボールが飛びすぎてしまいそうで、インパクトで緩みやすくなるんです。そういうクセのある人には、『MG5』ウェッジ、お勧めです。しっかりフェースに食い付く感じがあって、スピンも強烈! これならアプローチで積極的に攻めていけそうです。SB(スタンダード バウンス)グラインドは当たりも少なく、抜けがいいですね。これを基準に他も見てみましょう」

フェースに食い付く、乗る。いかにもスピンが効く感じはかなり強いです
【SCグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:28.7度 スピン量:10183rpm
【25Y】打ち出し角:28.8度 スピン量:5580rpm
ソール後方を大きく削ってあり、ソールの真ん中あたりが出っ張る“キャンバーソール”になっています。ソール幅自体はSBグラインドよりも広めですが、このソールは秀逸ですね。打ち込みにいっても抵抗なくスッと抜けてくれる。そうかと言って下を潜ってしまう感じもなく、しっかりボールがフェースに乗る。同じ感覚で打った時に、SBグラインドよりもちょっと飛ぶ感じがするので、アプローチがショートしやすい人にもいい。スピンはデータ的にSBグラインドよりもかかっていますね。さらに強烈です。技も使いたいけど、ミスにも強いウェッジが欲しい、そんな人にピッタリ。私のイチ押しはコレです。

ソールに明確な頂点があるSCグラインド
【SXグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:28.5度 スピン量:10830rpm
【25Y】打ち出し角:25.6度 スピン量:6023rpm
SXグラインドもワイドソール系で、SCグラインドに比べると極端に削りを入れていなくて、バウンス効果は高そうです。バウンスが強いとインパクトでフェースが起きる(ディロフトする)といわれますが、その感覚はたしかにあって、出球がやや低く、フェースに乗ってくる感じが強いです。80ヤードのショットでバックスピンが1万回転/分超え! 25ヤードでも6000オーバーとは……。データ的にはこのグラインドが一番スピンがかかりました。基本的にスピン性能の高い『MG5』ウェッジですが、より激スピンを求めるなら、SXグラインドいいですね。

データ的にはSXグラインドが最大のスピン量を記録
【LBグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:29.3度 スピン量:9685rpm
【25Y】打ち出し角:29.5度 スピン量:4925rpm
ローバウンスなので、リーディングエッジの浮きが極めて少なく、フェースを開いても構えやすいです。わざとフェースをボールの下に潜らせるようなアプローチも打ちやすい。一方で、私のようにダウンブローが強いと、リーディングエッジが刺さりそうなイメージが出るかもしれません。そういう場合はちょっとアッパーめに振るとうまく扱える。基本的には、シャロー(緩やか)な入射角のプレーヤーと相性がいい。基本的にフェースを開いて使う人にもってこいです。

ソールの後方を大胆に削っているLBグラインド
【HBグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:25.8度 スピン量:9820rpm
【25Y】打ち出し角:28.9度 スピン量:5739rpm
これはバウンスの強さを感じます。自ずと「ダウンブローに入れても大丈夫」、という安心感がありますね。少しトップ気味の軌道で入っても、バウンスが当たることでロフトを起こしてくれて、ミスを防ぐ感じがあります。お助け効果が高いですが、きちんとボールをコントロールできる操作性も兼ね備えています。入射角が鋭角な人、砂の多いバンカーが苦手な人にもマッチします。

ダウンブローが強いプレーヤーとの相性がいい
【TWグラインドをテスト】

【80Y】打ち出し角:32.4度 スピン量:9972rpm
【25Y】打ち出し角:32.1度 スピン量:4450rpm
(※TWグラインドはロフト56度)
TWグラインドはリーディングエッジが直線的で、他のグラインドとは異なるシェイプ。ソールの削りも大胆で、いろんなアプローチをしたくなります。オフセットが弱く刃が出ている感じなので、入射角が緩やかで正面から見てシャフトが地面と直角になるようなインパクトをイメージすると、うまく球が拾えますね。いずれにしても、テクニシャン向きのグラインドです。

リーディングエッジが出ているので、シャフトが地面と直角になるイメージだとうまく球を拾える
『MG5』ウェッジは、もともと『MGプロト』ウェッジとして、今年PGAツアーでマキロイやフリートウッドが、早くから実戦で使用していたモデルそのもので、従来以上に彼らの評価も高かった。

ソールに刻まれた溝がミルドグラインドの象徴でもある
軟鉄鍛造ならではの軟らかな打感と、強烈なスピン性能、そして6種類のグラインドが生む抜群の操作性。『MG5』ウェッジは、プロの感性に応える完成度で、我々のショートゲームの精度も一段と引き上げてくれるに違いない。
【田中秀道プチLESSON】
近いピンでも柔らかい球で寄せる打ち方、お教えします

「この部分を使うイメージがいいです」(田中プロ)
「特殊な打ち方をしなくても、ソールを上手く使えるように構えれば、それだけでアプローチのバリエーションが増えますよ」という田中プロ。使い勝手がいいという、ショートサイドからでも寄せられるアプローチ術を聞いた。

田中プロの通常のピッチ&ランのアドレス

ソフトな球になるピッチ&ラン。通常に比べて腕とシャフトの角度がより鈍角になり、その分ボールに近く立つ
基本のピッチ&ランの構えから、少しアレンジするだけで柔らかく、かつスピンも入ったアプローチが打てます。フェースを開いた状態でグリップ。そして前腕とシャフトの角度が少なくなるように少し手元を上げて構えます。基本的にやることはこれだけ。あとはその分ボールに近く立って、いつものようにピッチ&ランの打ち方をしてください。球がゆっくり飛んで、それでいてスピンも効いたアプローチになります。ソールのトウ側後方を滑らせることが必要なので、この部分がしっかりグラインドされているウェッジを選ぶといいでしょう(田中プロ)

フェースを開いて、手元の位置を高くする

トウ側のソール後方を滑らせるイメージで打つ
PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/福岡シニアオープンゴルフトーナメント、COOL CLUBS

