
【試打クラブスペック】7I ●ロフト角/34.0度 ●ライ角/62.0度 ●価格(税込)/15万1800円(#5〜9、PW)※すべてメーカー公表値
ミズノの新たな象徴となる一本
GD 今回はミズノ『ミズノプロ S-1アイアン』(以下、S-1)を分析していただきます。ミズノプロの新シリーズとなる「Sシリーズ」は、今年の3月に『S-3』が登場し、この連載でも分析しましたね。
松尾 はい。『S-3』は軟鉄鍛造でミズノ独自の打感や打音をより追求しながら、ハーフキャビティ構造のツアーモデルでした。小ぶりなヘッドで操作性が高いアイアンでした。一方の『S-1』はマッスルバックを採用しています。
写真左の『S-3』はハーフキャビティだったが、『S-1』はマッスルバックになっている
GD 『S-1』もツアーモデルの立ち位置で、プロが好む小ぶりなヘッドで操作性を重視しているのでしょうか?
松尾 そうですね。ヘッドの操作性を判断できるネック軸回りの慣性モーメントを見ても4600g・㎠となっています。“標準的”な範囲が5500〜5999g・㎠なので、非常に小さい値です。ヘッドコントロールがしやすく、場面に応じて自由自在にボールを打ち分けてスコアメイクするゴルファー向きのアイアンです。
GD コンセプト通りのモデルになっているわけですね。『S-1』は前作の『241』と比較すると、性能は進化しているのでしょうか?
松尾 やはりツアーモデルの立ち位置なので、大きな進化はありません。操作性の良さはしっかり継承されていますし、ロフト角も34度と変更なしです。マイナーチェンジですがバウンス角が『241』は5.2度でしたが、『S-1』では7.8度になりました。前作でも十分大きな値でしたが、今作ではより大きくなりました。またソールのリーディングエッジ側とトレーリングエッジ側が削られている(トリプルカットソール)ことも合わせると、ダウンブローで打ち込んだ時の抜けの良さを改良してきたのだと思います。
GD この連載でも様々なメーカーのツアーモデルを分析してきました。やはり今回と同様に「基本設計のコンセプトは変わらない」ことが多いですね。
松尾 性能はある程度決まってきます。変えるとしたら形くらいで、特にマッスルバックのようなシンプルなものだと落ち着いてくるものですね。
GD 今回もミズノは“打感の改良“をコンセプトのひとつになっています。一昔前は現在のように様々な素材を取り入れたアイアンは少なく、軟鉄鍛造しかなかった時代がありました。メーカーによって打感の違いはあったんでしょうか?
松尾 軟鉄鍛造のマッスルバックしかなかった時代の頃は、打感や打音による違いはあまりなかったですね。強いて言えば軟鉄の炭素量の多少で違いが出る程度です。例えばS25CとS20Cだと前者のほうが炭素量が多いので、わずかに打感が硬く感じるといったものです。
それから加工技術が進化して現代のように軟鉄以外の素材を組み込んだアイアンが当たり前になりました。飛び系アイアンなどで見られるフェース面を弾きの良い素材にして、その周りを別の素材で囲うといった方法も珍しくなくなりました。
写真左は前作に当たる『241』。『S-1』と同様に軟鉄鍛造のマッスルバックになっている。さらなる打感を追求した結果、今作はバックフェースの真ん中に溝を設けている
GD 軟鉄鍛造は打感の良さを売りにすることが多いですね。一方で複合アイアンは打感が物足りないという評価も多くありますよね?
松尾 フェースとボディが異素材なため、接着した時に「継ぎ目」が出てしまうんです。その結果、ほんのわずかにヘッドの振動に影響が出て打感や打音が独特な感覚に繋がるんです。
ですからツアープロが軟鉄鍛造モノを愛用しているのには理由があって、操作性だけでなく音や打感によるフィードバックを大切にしたいことから愛用者がいるわけです。
GD なるほど。上級者は音や打感の心地良さもパフォーマンスの判断基準として持っていると。だからミズノは細部までこだわりを見せているんですね。『S-1アイアン』はどんなゴルファーにおおすめですか?
松尾 小ぶりなヘッドで操作性が抜群。そして大きなロフト角でボールが上げやすく、軟鉄鍛造で打感やスピンの安定感があります。一方でミスに強いヘッド性能ではありません。またバウンス角も大きな設定なので、上からダウンブローに打ち込みながら安定してミートできるゴルファー向きのアイアンです。



