
「首位とは7打差で出た片岡尚之、原敏之による14年ぶりのプレーオフとなり、1ホール目で片岡の優勝が決まりました」(佐藤プロ)
90回目を数えた今年の日本オープン。まず現地で味わった感想は、ナショナルオープンの重みがさらに高まる大会になったということです。最大の理由が、今年から優勝者に与えられることになったマスターズの出場権でしょう。
JGAにとってもまさに青天のへきれきだったようで、大会でご一緒した山中博史専務執行役によれば、昨年のアジアアマのとき、日本オープンの歴史や歴代優勝者などについて立ち話で聞かれたことはあったけれど、まさかマスターズの1枠をもらえることは思いもよらなかったことだそうです。
今年の夏、マスターズ委員会から出場資格の見直しの連絡があったとか。イタズラ電話かと思い、その旨を文書で欲しいと依頼したそうです。90回という長い歴史、様々な国の人がチャンピオンになっていること、AONやバレステロス、松山英樹の名前も大きいはず。特に松山選手はアジアアマを2度勝ってアマチュアで出場し、その後チャンピオンにもなった。これは非常に大きいと思います。
さて、今年もまた日本オープンの重みを思い知らされる試合展開に。昨年まで過去10年で、3打以上の大量リードを抱えて単独首位が最終日を迎えた大会が半分の5回。そのうち19年の塩見好輝を除き、4人が優勝しています。しかし大量リードを守ったまま、まして独走した選手は皆無。そう簡単には優勝させてくれない。それが歴史と伝統の重みからくる重圧なのでしょう。
まずは4打差の単独首位で迎えた清水大成。普段は静かで温厚な選手なのですが、東海クラシックの18番で右の池に落とした後クラブを叩きつけ怒りをあらわにする彼の姿を目撃し、彼の海外への強い意欲を感じました。この試合は日本開催のPGAツアー、ベイカレントCレクサスへの出場のかかった最後の試合。結果的に出場できませんでしたが、いちるの望みを託しウェイティングのため横浜CCに現れた姿も目撃しました。今回はマスターズへの思いが強い選手ほど、特に最終日、思うゴルフができなかったと感じます。しかし自分の未熟さを反省する試合後のインタビュー、優勝した片岡に駆け寄り祝福したグッドルーザーぶりを見るにつけ、必ずや清水はこの体験を輝かしいゴルフ人生のきっかけに変えると信じます。
優勝した片岡は、21年の初優勝から2位が7回。涙と笑顔の優勝インタビューは、シルバーコレクターと呼ばれた選手の、ようやくできた2勝目の安堵と喜びを物語っていました。
予選会から這い上がってきた原敏之は、昨年下部ツアーで勝ち今年ようやくレギュラーツアーを戦う34歳。15位以内でほぼシードが確定する状況で、負けた悔しさもあるでしょうが初シードの喜びも大きかったはず。インスタで「今までのゴルフ人生で一番楽しめて、一番嬉しくて、一番悔しい試合でした」と投稿。原は香川出身で、ジュニア時代から同学年の松山英樹の好敵手で松山の著書にも登場します。彼のこの10年はとても興味があります。11年、単独首位で迎えながら優勝できなかったボクとしては、「勝ちたかったなぁ」との思いが現役時代よりも強くなり、改めて日本オープンの重みを感じました。
撮影/姉崎正
※週刊ゴルフダイジェスト2025年11月11日「さとうの目」より
